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秘跡への扉


「ヴィラン、竜達を代表して言わせて貰いたいのだが」


 俺に話しかけて来たのは竜の中で唯一人語を話せるアルゴだ。

 アルゴの黒い鋼の鱗は焚火に照らされて下から淡く光っていた。


「何だよアルゴ、竜達は何を言おうとしているんだ?」

「この森に、俺達の鼻を特に刺激する奴がいるようだ」

「その正体は?」


 こうして、濃淡のある竜の風景を見るに、奴らがどれだけ神聖視されているのかが如実にわかる。強さの象徴、その代表格のような竜が、付近にいる存在に目を張っているようなんだ。


「……モルドレッド様から聞かされたことがある、なんでもこの森には噂に違わぬ妖精王が住んでいるらしいと。だからなゴミ人間、俺達竜に妖精王を差し出せ」


 妖精王? 妖精は知っているけど、その王様ってことか?


 初めて聞いた存在に、意識を微睡(びすい)させていた。


 もう夜も深いし、夜の警備は担当の者に任して寝たい。


 だからか、その晩、俺は悪夢を見た――


「っ!?」

「きゃぅ!」


 悪夢にうなされ、意識を覚醒させ勢いよく身体を起こすと。

 目の前にシャムがいて、俺ともろに頭をぶつけ合った。


「大丈夫か?」

「……痛い。それよりもヴィラン!」


 シャムは痛みに耐えながら俺の名を呼んだ。


 彼女の悪癖と言えばいいのか、こういう場合のシャムは大抵何かしら要求してくる。


「今度は何を要求するつもりだ」

「凄いものをラシェットが発見したのよ! 見せてあげるけど、来る?」

「凄い」


 もの? 一体何だろうと思い、密林に入っていったシャムの後について行く。

 密林には幾ばくかの死骸が転がっていた、見るからに人間のものじゃない。


 これは内の部隊が狩ったモンスターの骸だろうか。

 それとも、モンスターは別の何者かに殺されたのだろうか。


「シャム、ここらへんに強力なモンスターがいるようだな」

「ヴィランの方が凶悪だから平気よ」

「まぁ、並大抵のモンスターであれば勝てる自信はあるけどさ」

「……それとも」


 そこでシャムは振り返り、目を期待で満ちらせていた。


「ヴィランにも苦手なものってあるの? 妻として知っておきたい」

「俺の苦手なものは、人間のヒステリーだ」

「他には?」


 ……強いて言えば、俺は蜘蛛が苦手なんだ。

 特に足が長くて立派な体格をした奴。


「あれは駄目だ、蜘蛛だけは正直敬遠したい」


 今朝も夢の中で無数の蜘蛛が身体を這う感覚に襲われたことだしな。


 俺は全般的に虫が苦手なんだよ、蓬田塔矢の時分から。


「ああ、私も蜘蛛は苦手。気色悪いわよね」


 シャムに蜘蛛が苦手だと伝えると、彼女は賛同していた。

 次第にシャムの足取りがこなれてくると、目的の場所が見えてきたみたいだ。


「あそこよヴィラン、あそこに遺跡の入り口があるのよ」


 シャムが差した方向には、深緑に包まれた石造りの遺跡がある。


 王国にあったクラスを付与するための神殿と同じオベリスクが円形に立ち並び。

 中心には地下へと向かう階段が見受けられる。


 遺跡にはアルゴやシルヴィアと言った竜も見学しに来ていて。


「ヴィラン、俺が昨日言った匂いはこの先からするようだ」

「ありがとうアルゴ、それで俺にどうしろと?」

「遺跡の中を調べろ」


 アルゴの命令口調に気分をじゃっかん害したが、おおむね了解だ。

 であれば……。


「今から言うメンバーは俺と共に遺跡の中を探索するぞ。他は周囲の哨戒と警護にあたってくれ」

「どんなお宝があるのかしらねぇ……楽しみだわ」


 向いてそうな奴を招集し、ひとまず名前も知らないこの遺跡を調べることにした。


 ◇


「お帰りなさいませ隊長、やけに早かったですね」

「レギ、どうやら俺達はしばらくの間ここに滞在することになりそうだ」


 地下へと続く階段を一層分だけ降りて判明したのだが。


 この遺跡周辺の地下には、とてつもない広さの地下迷宮がある。


 遺跡の中は妙な異臭がしていた。


 それに何より、遺跡の中に覇石の存在が確認された。


「ミランダ、確か君は覇石の鑑定が出来たよな?」

「え、えぇ……ヴィランが持ってるのは本物の覇石かと思いますよ」

「ほう、これは中々にいいものだ。いくらで売ってくれる?」


 グプタが冗談交じりに交渉して来る。


 彼は喫茶店のマスターであると同時に、骨董品を取り扱う何でも屋だったらしい。骨董品を愛するあまり、シャムがちらつかせた古地図が気になり俺達についてきたのだ。


「でもヴィラン?」


 ミランダは不思議そうな様子で俺に何かを訪ねようとしていた。小麦色した彼女の水弾きの良さそうな肌から窺わせる魅力は見ていて心地がいい。


「貴方は毎回のように、覇石をどうやって見つけるのです?」

「俺にも判らないけど、たぶん愛されてるんだよ」


 と言えば、ミランダは愛想を振りまきながら「誰から?」と問う。


 それはもちろん、我が主であり、この世界を管理する女神からだよ。


「愚問だろ」


 愚問……そんなこと言われたとて、私は真面目に聞いています。


 例えその質問が相手にとって、愚問だと思ってしまう事柄だとしても。


 だから、だから誰か優しく受けとめてトキメキマイハート!!


私「じゃあ質問します」

貴方「はい」

私「私の未来をお教えください」


 トキマキマイハート!

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