ゴミ人間
太陰軍の国にやって来てから数日が経った。
国王の月読は面会した後、俺達を遠ざけるように動いた。
彼の娘であるマスカルも同様の扱いを受けている。
暇になって街に繰り出すと、街中の至る所にリザードマンがいる。
ここはリザードマンを主体とした国であれば、当たり前のことだ。
そして中には――
「見てヴィラン、二足歩行のウサギさんがいる」
「物珍しそうな目で見るな、失礼だろシャム」
中には人や、リザードマン以外の種族も見受けられる。
「でも、匂うのよね」
「……金の匂いがするって意味か?」
「私の鼻は確かよ、だとすれば、声掛けて見ましょうか」
あ、おい。
シャムは止める暇もなく、金の匂いに食いついた。
「あの、貴方ちょっといい?」
「……御機嫌よう、お嬢さん」
「初めまして、私の名前はシャム。貴方のお名前を聞いてもいい?」
「私はホルジュと申します」
シャムを追いかける形で隣に並び立つと、そのウサギは俺を見詰めている?
もしかして、俺の背景を気取ったのか?
「……お二人のご関係は何かな?」
「私達? これでも夫婦をやってるわ」
と言っても、彼ってば奥手で困ってるの。
シャムは他人には聞かれたくないことをずけずけとそのウサギに話していた。
「ヴィランさん、奥さんを大事になさるといいですよ」
「ホルジュ、貴方はどうしてこの国にやって来たの?」
「私は自国の大使として遣わされたのです」
新世界にも、国と国の繋がりはあるようだ。
シャムは彼を拉致するように強引に近くの飲食店に入った。
「いらっしゃい」
「お茶とお茶請けを三つ頂戴、お代は彼が払うから」
「はいよ」
喫茶店の中では屈強なリザードマンが朗らかに接客している。
何でも彼はマスカルの同期らしいが、同期って何のだ?
「ねぇ、ホルジュ。貴方の国の名前を聞いてもいい?」
「ネバーランドと言って、貴方が持ち合わせる雰囲気のように幻想的な国ですよシャム」
「口が上手いわね」
「ネバーランドの特徴はどんな物になるんですか?」
シャムじゃなくとも、彼の国に興味を覚えた。
ネバーランドは聴こえからして、ファンタジーの塊な気がしてならない。
「ネバーランドは豊かな大地に育まれた巨樹が特徴的ですね。私どもはその樹を神樹と呼び、何よりも大切にしています」
その時、気のせいか、シャムの耳がピクっと動いた。
「いつか行ってみたいわ、この地図で言えばどの辺りにあるの」
そこでシャムはモルドレッドが持っていた古地図を取り出す。
その古地図を見て、驚愕した奴がいた。
「お嬢さん! その地図をどこで手、手に入れたんだ」
それはリザードマン、マスカルと同期と噂の彼だ。
「どこって? 竜族が住む山脈でよ」
――竜族が住む山脈だと?
――じゃあ彼らがそうなのか。
――二人に触れたら、ご利益ありそうだな。
「シャム、ホルジュを連れて立ち去ろう。周囲が殺気立って来た」
「私ならお構いなく、狙われてるのはお二人ですから」
速やかにお茶代を支払い、店を出た後はシャムを抱きかかえて宿泊先へと帰る。
「……ヴィラン、どうして邪魔するのよ」
「シャムだって感じただろ、連中の異常な気迫を」
あの熱気は、地球の祭事などで見受けられる異常さだった。
地球の祭事は負傷者が当たり前のようにでるから。
「俺の故郷では、ああ言った時は必ずと言っていいほど負傷者を出す」
「私がそんなウスノロに見える?」
「シャムじゃなくても、他の客が怪我してたかもしれない」
「はいはい、いいから降ろしてよ」
シャムと俺は、所謂お姫様抱っこの格好をしていた。
「……」
女性に対し、このような格好を持つ機会は生涯二度とないと思った俺は。
「もうちょっとこのままで居させてくれ」
「別に、いいけど……ヴィランはいつまで経ってもあの頃のまま」
「あの頃って?」
「リチャード三世の豪邸の舞踏会で、出逢った頃のこと」
ああ、あの時の俺は……酷く、緊張していた。
踊り子のクラスを受けたのだって、あの頃の思い出が背中を押したからだ。
今では何もかもが懐かしいよ、そう言うとシャムは同意するよう笑う。
「本当よね、ハハハ……ねぇヴィラン、今日はこのまま私と」
「ゴミ人間よ、俺の前で発情しないでくれるか」
もしかしたら、今のはシャムの折角の申し出だったかもしれない。
なのにアルゴとか言うKYな竜は二人の気分を冷ますように小言を告げる。
ゴミ人間が発情? 逆にそそられるワードだ。
その日、俺は皆の目に隠れて久しぶりに自慰をするのだった。
私「ううう……ここは?」
目が覚め、辺りを見回すとそこは知らない部屋だった。
私「どうもこんにちは、サカイヌツクです」
私「私が常々思うのは、ホラーって閉鎖的な空間の方が怖いってことで」
私「ホラー作品と銘打たれて、閉鎖的な空間が出て来たら喉をごくりと鳴らします」
私「さて、この密室空間からどうやって脱出したものか……」
次第に待っていると、誰かの足音が聞こえた。
その足音はゆっくりと、こちらに向かっている。
母親「ご飯」
私「あ、はい」
完。




