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デザートケーキ


「貴様らぁ!! 今すぐ私達を解放しろ!」


「それはなりませんよマスカル、貴方達を連れて来いとの命令なので」

「誰からの命令だ!」

「我が主ですよ……」


 主はそのようなことを言った覚えはないけど。

 ムジカが太陰軍のトカゲ共に抹殺されたからには、仕方ない。


 この時俺は閃いたのだ、今の方便は今後とも多用しようと。

 俺の理不尽な言動は、主の命令ということにしておけばいい。


 理不尽というか、理屈に適ってない言動は。


 砂漠を西方へ進行していれば、次第に両軍の最前線が見え始めた。

 王国が砂漠に敷いた防衛網のキャンプ地の上を通った時――


「誰か私達を受け止めろ!!」

「お願い誰か、助けてぇええええ!!」


 マスカルがキャシーを連れて竜の背から飛び降りた。

 しかし、二人を受け止めたのは後続に続いていた竜だった。


小癪(こしゃく)な真似をするなゴミ人間」

「……くそ!」

「今の誰が喋ったの? もしかして私達を乗せてる竜?」

「竜族が人語を発して何が悪い」


 二人を受け止めたのは竜族の中でも特に知能が高いアルゴだった。

 アルゴは率いる竜の中でも特に人間嫌いを自負している。


 主はそんな彼を気に入っている様子だった。


「ありがとうアルゴ」

「例を言われる筋合いはない、特に貴様にはな、ヴィラン」

「マスカル、彼は人間が嫌いなんです。移動しましょう」


 と言えば、マスカルは下唇を歯噛みしていた。

 このまま舌を噛みきられたら厄介だし、また眠っていてもらおうか――


「ぐ!」

「ちょっと! 乱暴しないで!」

「マスカルのことだから、舌を噛みきって自害しそうだろ?」


 それよりも移動しよう、人間アレルギーのアルゴに無理させない方がいい。


 ◇


 王宮から脱出し、太陰軍の街を目指したが、一日じゃ辿り着けなかった。

 群竜の飛行速度は時速七十キロは出ていると思うが、それでも辿り着けなかった。


「ディゴ、一つ訊きたい」

「何でしょうかヴィラン」


 ディゴは俺達を案内している太陰軍の一人、男性の方のトカゲ頭だ。


 彼は砂漠に敷いた焚火の前で、食料を焼いている。


「先ず、君達は自分達の種族を何と呼んでいる?」

「人によって様々、敬称は神の使い、蔑称はトカゲ頭」


 おっと、ついうっかり口に零す所だった、それで。


「普通は何と呼ぶんだ?」

「リザードマンと呼ばれている」

「ふーん、覚えておくよ。ありがとう」


 ディゴは妹のエッザと違って、尋ねれば答えてくれる。

 二人のリザードマンは種族の中でも稀有な存在らしい。


 とすると、リザードマンの民度(みんど)――種族全体の性質が気に掛かる。

 アルゴのように極端に人間嫌いなら、行きたくないし。


「リザードマンは人間をどう思っているんだ?」

「協力的な者と、敵対する者とで扱いが違います」

「総じて人間はカス」


 妹のエッザは敢えて言う。

 ディゴの持つ大きな曲刀と、エッザが持つ大太刀は切れ味が良さそうだ。


「リザードマンは協力的な者についてどう思っていました?」


 そこに意を決したクラナがやって来る。

 見ると、彼女はキャシーやミランダを引き連れていた。


「……協力的な者については、友として慕っている」


 ディゴはクラナの問い掛けに嫌々答えると言った様子だ。


「そう、でしたら貴方達が今日殺した男については?」

「あいつは敵だ」


 エッザが断じると、クラナは手にしていた砂を二人にぶつけた。


「ムジカは、リザードマンとの和睦を本気で考えていた良識人の一人でした。貴方達の犯行は唯一の平和の道を閉ざしたのと同義。私は彼の娘として、貴方達を赦しはしない」


「娘だったのか。なら言わせて貰う」


 ディゴは立ち上がり、その巨躯でクラナの前に赴く。

 クラナは彼らの威圧に怯えることなく、立ち向かった。


「かつて、この戦争が始まる前、人間たちがリザードマンにしてきた悪行を教えてやろう」

「人間はリザードマンを長きに亘り迫害し続けた、私達の父の両親も人間の手に掛かった」

「人間は、自分達とは姿形が違う、ただそれだけの理由で驕ったのだ」

「人間の傲慢は、神の怒りに触れた」


 その神の名前が、月読(つくよみ)と言うのか……。


 主が向こうの暗闇で俺を手招いているのが見えた。


「レギ、ここは任せていいか?」

「えぇ!? 隊長でなければ務まらない場面だと思いますが」

「お前だったら大丈夫だ、たぶんな」


 昼は人間の姿に、夜の今は虎の姿になるレギならこの場を鎮められるだろう。


「何か用でしょうか主」

「お前は月読についてどう推察する?」

「主のお知り合いなのでは?」


 と言えば、主は嘲弄するように、そんな馬鹿なことがあるかと口にした。


「異世界ギオスで神格を持っている奴の中に、月読なんて言う名前はない」

「じゃあ、何者なんです?」

「それを私の口から教えていいのかヨモギダちゃん」

「事前に知っておいた方が対処し易いですよ」


 すると主は砂漠の月光の瞬きと共に消えていた。


「月読の正体は人間だ」


 ……彼の神の正体は――人間。

 主はそれだけを告げに、わざわざ現れたのか。


「あ、隊長お帰りなさい」

「レギ、何がどうなってお前は」


 その後、焚火の前に戻るとレギは砂漠の中に埋められていた。

 どういう仲裁をしたら、こんな悪戯的な光景になるんだ。


「ヴィラン、ちょっと話がある」

「何でしょうマスカル、貴方の拘束は解けませんよ」

「ならいつ私を自由にするのだ、こんな面倒な真似するくらいなら」


 次に現れたのはマスカルだった。

 彼女は砂漠に胴体を埋められていたレギの頭を椅子にしていた。


「あの、自分は」

「ムジカ様を殺めた罪、それは一生を懸けて償ってもらうぞ」

「不可抗力ですよ、殺ったのは俺じゃない」

「私はお前が殺したと聞かされたが?」

「誰からです」


 ひょっとしなくてもニードルなんじゃないか。


「誰だっていいだろ、どうやらお前の配下にはお前を怨んでいる奴もいるな」


 じゃあニードルだ、もしくは奴だ。

 しかし、今は噂の主を探している場合じゃない。


「……王国に戻らないか、私が直々にお前の減刑を申し出てやる」

「貴方は信用ならないんだよ、こうなる前に俺達に取った態度を覚えてないのか」

「それもそうだ、しかしならば何故私を連れて来た」


「いざと言う時のための予備ですよ。例えば今から向かう国のトップに、忠誠を示せと言われたら貴方を始末してみせてもいいんじゃないか? 言わば貴方は俺の奴隷だ」


 男勝りのマスカルを、挑発的に罵った。

 すると彼女は自力で手縄を解いて、立ち上がってみせる。


「……今から私を抱いてみないか?」

「何故? このタイミングでそう申し出るのです」


 何故も何も、そういう気分だからだよ。

 マスカルの誘惑に脳髄が痺れた。


 彼女の策謀的で、情熱的なお誘いは俺を懐柔し。

 その晩の俺は、彼女との情交に浸るだけだった。


読者の皆さんごめんなさい。

今日の更新時間をいつもよりも大幅に遅れてしまいました。

某所で談話してたら、ファファファフ状態でした。


ファアアアアwwwww

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