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裏切るよう


「ふーん、私達は宝石の一種だと思ってたけどね」

「そうだな、俺は覇石一つと取り換えに、その秘術を教わる気だが」

「だが?」


 俺は……勉強アレルギーだ。

 そう言うとグレッグを抱えていたシャムはこける。


「じゃあ、ヴィラン以外の、信用のおける人に学ばせたら?」

「ああ、そうしようと思っている」

「ミラなんかどう?」


 ミラか、シャムとは幼馴染で、今はウィッチの修行を積んでいる。

 修行と言うよりも、勉強だな。


「候補の一人として考えておく」

「候補は他にもいるわよ、私の方で選抜しておくから」

「別に、それはいい」

「どうして! どうしてなの?」


 シャムへの信頼はこの世で一、二を争うくらいだけど。

 しかし、信頼と信用は違う。

 シャムはここぞという場面でヘマをしそうだから。


 そう言うとシャムは無言で物を投げつけるのだ。


「とにかく、覇石はそういった類の価値があるってことだ」

「OKヴィラン、覇石の管理は私に任せて」

「くれぐれも盗まれるなよ?」


「元盗賊団である私達が財宝を盗まれるなんて何の冗談かしら」


 今の冗談が本当にならなければいいんだけどな。


 事の発端は、仮面舞踏会の後すぐに起きた。


 その日も俺達は一様に半年間に及ぶ各クラスの授業を受けていた。

 俺であれば、熱血教官との呼び声高いマスカルの指南を仰いで。


「ヴィラン、ちょっといいか」

「何でしょうかマスカル」

「……何故お前は私を呼び捨てにするんだ?」


 それは彼女と出逢った当初より慣れ親しんだ呼び方のはずだった。


 何故? と訊かれても、返答に困る。


「お前はもうすでにクラスを取得する資格は得ている。だからもう練習しなくていい」

「……ですが」

「ヴィラン、私は、この国の厚意を踏みにじったお前を赦しはしない。以上だ」


 明日からはもう来なくていいぞ、とマスカルは俺を冷遇し始めた。

 何もそれは俺ばかりに言えたことじゃないようで。


「聞いてヴィラン! 酷い、酷いのよ!」

「分かってるよシャム、俺もやられた」


 俺達は皆一様に、この国の連中から除け者扱いされるようになったんだ。

 国の連中の気持ちも判らなくもない。


 何故なら彼らは俺達に生活の安寧を揺るがされていると言っても過言じゃない。

 彼らの代弁を即興でするのならこうだ。


 ――今まで優しくしてやっていれば、図に乗りやがって。


「ヴィラン!! 俺は今ほどお前に殺意を抱いた例はないぞッッ!!」

「貴方が怒鳴るといつも耳がキーンとするんですよニードル」


 だから黙れ。


「……これからどうするみんな? みんなの意見も聞いておきたい」


 すると仲間達はざわめくように針路を相談し出した。


 ――俺達が何をしたって言うんだろうな。

 ――去るにしても、この国に一泡吹かせてからにしないか?

 ――いや、ここはヴィランをぬっ殺さないか?


「俺を殺すとかほざいた奴はここに置き去りにするからな」

「宜しいかヴィラン殿、入るぞ」

「これは、ムジカ様ではないですか。俺達に何か御用で?」


 その時都合よく、俺達をこの国に招いたムジカが現れる。

 今日のムジカは無精ひげを剃り、勇敢な顔立ちが覗えた。


「何やら一部の者が、其方達を糾弾し始めたと聞いてな」


 だが許せ。


「彼らだとて、この国の未来を思ってのこと」

「……まぁいいです、事情は把握しました。ですがムジカ」


 ――俺はこの国が大嫌いになりました。


「延いては俺達は、この国が嫌いです。ですから貴方達との交渉は決裂ですね」

「何をへそを曲げておる、見損なったぞヴィラン」

「おじ様、一応までにお聞きしても?」


「何だろうかシャム」

「……クラス付与のために、この国に支払ったおよそ一千六百枚の金貨はどうなるの?」

「申し訳ないが、あれはクラスのための試験料として、返金されることはない」


 との返事を受けると、その場は急に殺気立った。

 するとムジカの背後から二名の護衛が現れる。


「者ども! 控えよ!」

「お主たちの気持ちも理解するが、怒りを鎮めろ」


 と、向こうは仰っている以上、事を荒立てることもない。


「ムジカ様、貴方が仰る一部の連中に伝えておいてください」

「何だ、これ以上の鬱積は耳にしたくないのだが」

「お前らは揃いも揃ってお為ごかしの国の血肉となったクソ野郎だった」


 こういう国のことを確か、資本主義と言うんだったか。

 勉強不足の俺は、ない頭で皮肉を考えるのに必死だった。


「俺達は今日明日中にでもこの国を去ります」

「待て!! 新世界のことを何も知らないお前らが、この国とたもとを別つのは無謀だ」


「ムジカの言う通りだなヴィラン、新世界はお前の想像に及ばない化け物揃いだぞ?」


 冷静さを失い、気を立たせていると主が出て来た。

 主は俺とムジカの間に割って入ると。


「ムジカ、どうやら太陰(たいいん)軍の一部が防衛網を突破し、この国に侵入したみたいだぞ」

「――皆の者、陛下をお守りしろ!!」


 と叫ぶよう命令するムジカを――ッ!


「な!? ぁ……」


 護衛として就いていた二人は、ムジカの首を刀で断ち切った。

 すると護衛だった二人の姿は見るからに変貌して。


「……聞いて欲しい、ヴィラン殿」

「貴方達を、太陰軍に招き入れたい」


 俺にこの国を裏切るように、打診して来たのだ。



今回は『裏切り』がキーワードですが。

皆さんは誰かに裏切られた経験って存外あったりするんじゃないでしょうか。


例えば、いつも社員食堂で昼食を一緒にしていた人が。

唐突に他の方と外食に行って。

独りでぽつねんと、ガラス張りの社員食堂で食事を頂き。

外食に出かけ帰って来た相方と、ガラス越しに視線が合う。


そんなけ……経験ってぇえええぇえぇぇ(阿鼻。

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