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砂漠の国での好機


「ヨモギダ、お前はどうして熟れた女ばかり抱くんだ?」

「……俺にもわかりませんよ」


 踊り子のクラスの授業中、壁ぎわに座ってみんなの練習風景を眺めていると主が現れた。


 主の顔はニヤ付いている。


 それは俺が不幸に遭う兆候であって、つい嘆息を零してしまう。


「所でお前は、一夫多妻制についてどう思う?」

「ゲームじゃないんだし、その制度のせいで泣く連中のことを考えて欲しいですね」

「愛とは素晴らしいな、人間に涙することを教えてくれるのだから」


「今回はそんな世迷言を言いにわざわざ出て来たのですか?」

「最近のお前は特に立場をわかってないようだな」

「俺の目的は奴隷から成り上がることですから」


 とすると、俺は図らずも主の死を願っているのか?

 それは困る、主は俺の憧れの女性なのだから。


 主に亡くなられたら、マスカルのように心を喪失しそうだ。


「ヴィランヴィランヴィラン!! 堂々とサボるな!」


 サボってた訳じゃないが、マスカルは怒声をあげ、稽古場に俺を呼び寄せる。

 教室のみんなに主の姿は見えてない様だ。


「ヨモギダ、奇遇なことに、この中にお前の伴侶の一人がいるぞ」

「マスカルですか?」

「かも知れないし、違うかもな。まぁ予め言っておくと、キャシーは違う」


 キャシーは違うか。

 だから何だ? 俺にはもうシャムと言う立派な……。


「ヴィラン!! 貴様の耳は死んでるのか!? それは踊り子として致命的だな」

「聴こえてますよマスカル」

「ならさっさと私の指示に従え、他の連中も気を抜くな」


 マスカルの熱の入った指導は普段からこんなに激しいのか?

 隣に居たクラナにこっそりと訊く。


「マスカル先生の熱血指導は有名ですよ、彼女あってこその踊り子のクラスとも言われています」


 マスカルは名物教師らしい、お似合い過ぎて笑える。


「マスカル殿、ちょっと宜しいか」

「ん? これはムジカ様。みんな、ちょっと自習しててくれ」


 踊りを練習していると、ムジカが尋ねた。


「ヴィランの様子はどうだ」


「あの子はここ一週間で飛躍的に成長しました、信じられない程飲み込みが早いです。あの子であればクラスの恩恵に必ずや授かれるでしょう。用件はヴィランに付いてですか?」


「……実は、国王がヴィランとの謁見を所望しておられる」

「陛下が?」


 無精ひげを蓄えたムジカは、俺を気にしている?

 その光景を覗っていたキャシーは近寄って。


「ねぇ、何かやっちゃったの?」

「何もやってない」


 俺にはその覚えはなく。

 ムジカはああやって人を品定めするのが好きな傾向にある。

 ならば今回もそうなのでは?


「……」

 クラナはムジカをじっと見詰めていた。


 俺に熟女を好む嗜好があるように、彼女は熟年の殿方が好きなのだろうか。

 ムジカはクラナに手を振り、クラナも手を振り返した。


 この二人、知らない間に出来ているのか。


「説明しておくと、ムジカ様はクラナの父親だから」

「誤解してた?」


 とキャシーが説明してくれるまで、正直誤解していた。

 今の誤解が誰かに伝播すれば、赤っ恥になる所だった。


 そんな風に当惑する俺を、ミランダは遠巻きに見詰め笑っている。


「こほん、ちょっといいかみんな、集合してくれ」


 ムジカとの話が終わったのか、マスカルは生徒達を招集した。


「実は、今度王宮にて、急遽(きゅうきょ)、仮面舞踏会が開かれることになった」


 マスカルの言葉に生徒達はざわつく。

 仮面舞踏会って何だ? と先程笑っていたミランダに尋ねた。


「この国の伝統行事で、普通は祭日にしか行われません」

「じゃあ今回は異例開催なんだな」

「えぇ」


「その仮面舞踏会にて、私達が前座を務めることに決まった」


 マスカルの独断とも言える決定事項を伝えられ、生徒達はどよめく。


 ――俺達が栄えある舞台の前座に?

 ――マジかよ。

 ――ヴィランの赤っ恥姿が見られるいい機会だ。


 この中に奴がいる。

 踊り子のクラスに就いたのは俺ばかりではなく、奴もいたのか。


「だから今から気合いを入れて練習するぞ、いいな!!」


 マスカルの発破に、生徒達は雄々しい返事を残すのだった。


 ◇


「結局、今日の授業を最後まで見学なさってましたね」

「ふ、俺の娘が普段どのようなことをしているのか興味あってな」

「……クラナは父親のこと好きか?」


 ムジカの隣に並び立つ、精緻な褐色の肌合いをした彼女に尋ねると。

 彼女は黄金色の双眸を静かに瞬かせていた。


「止めてくれるかヴィラン殿、親子の絆にヒビを入れおってからに」

「大丈夫、父さんのことは好きだから」


 じゃあ。


「じゃあ、そんな風に、好きな人に先立たれたらどうなると思う?」

「一々余計なことを訊くな、それよりもヴィラン殿にも用がある」

「何で御座いましょうか?」


 改まってへりくだると、ムジカは「ふん」と鼻を鳴らす。

 どうやらクラナへの恣意的な質問にちょっと機嫌を損ねたようだ。


「ヴィラン殿、其方達一行が……覇石を所持していると風の噂で聞いたのだが」

「覇石がどうかしましたか?」

「質問には素直に答えよ、持ってるのか、それとも――」


「持ってますよ」


 言葉を遮るように口にした返答に、彼は口を噤む。

 そして何事かを考え始めるのだ。


「是非とも、その覇石を譲ってくれないか」

「交換条件なら引き受けますが、普通の金銭での交渉には応じませんよ?」


 向こうが覇石を欲しがっている情景を見詰めながら、脳裏で回想していた。


 クラスの選択を迫られた神殿に、無数の覇石が散りばめられていたことを。


「では、国王陛下に会ってくれないか」


 これは……千載一遇の機会じゃないか?

 俺の目標は奴隷から大君に成り上がること。

 つまりは国のトップの地位に就くことだ。


「……えぇ、喜んで」


 国王陛下への謁見、しかも交渉卓という対等な場を用意されたんだ。

 このチャンスを、決して逃しはしない。



 人脈王サカイヌツク、今日も今日とて人脈鉱山をトレジャーす。

 ――ざっしゅ、ざっしゅ、ざっしゅ。


弟子「親方ぁ、ここはもう駄目だ。ここにはもう人脈は残されてねぇ」

私「諦めるな! 匂うんだよ」

弟子「匂うって?」

私「ここには……出版社によく出入りする敏腕編集のマブダチの匂いが、する!」

弟子「あ、俺のことっすか?」

私「お前なのか!?」

弟子「あれ? 俺また何かや(略」

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