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砂漠のムジカ


「ヴィラン、新世界も広いのよ? このまま当てもなく飛んでてもしょうがないと思うのよね」


 シャムはレギが持っていた古い地図を手にして、俺に目的地を打診していた。

 レギの地図は遺跡に描かれているような壁画調で、信用性がなく。


 だが、地図に描かれていたオオダコの絵から北西だけは避けようと思った。

 俺には触手プレイの趣味はないもので。


 今俺達は飛竜の背に乗り、山脈から続く広大な砂漠を通っていた。

 水分の補給は軍の野営地においてあった水の魔石で摂っているが。


 もうこれで二日目になる。

 酷暑の砂漠を飛んでいる竜達にも疲労の色が見られた。


「隊長! シルヴィアが死にそうだと言っています」

「ならお前達ご自慢の鼻で人里がないか探せと言ってくれ」


 レギに伝言を頼むとシルヴィアはクルクルと鳴き、何かを訴える。


「隊長! 死ね! だそうです」

「はぁ」

「頑張ってシルヴィア、貴方達が頼りなの」


 シャムは竜達を甘やかすように声援を送る。

 竜に対し飴と鞭は利かないと思うが、やらせておこう。


「あ、ヴィラン! あそこにキャラバンっぽいのがいるわよ」

「丁度いい、キャラバンに道を尋ねると一緒に休憩しよう。レギ、降りるよう指示してくれ」


 レギに言わなくとも、シルヴィアはキャラバン目がけて滑空した。

 だがキャラバンは俺達から逃げるようにしているのは気のせいか?


「待ってくれそこの隊商! 道を訊きたいんだ」

「……道? を?」

「ああ、俺の名はヴィラン。女神の奴隷をやっている」

「し、しかしあんた、あんたが連れてるのは竜じゃないか」

「竜が何か?」


 思えば、俺は失念していた。

 俺達が所属していたエルドラード帝国でも、竜は脅威の対象だったことを。


「何かって、竜と言えば災厄の象徴として有名じゃないか」

「それもそうだな、けどこいつらは俺に従順なんだ」


 丁度貴方が従えている……何て言う生き物だ?

 隊商を牽引していた生き物はラクダにも見えるし、アルパカにも見える。


「貴方の家畜と同じだよ」

「ほぉ、そうなのか」


 と言えば、シルヴィアが俺達に向けて吹雪の吐息を吐いた。


「うほほおお! 止めてくれ、命だけは取らないでくれ」

「安心して欲しい、家畜呼ばわりされて怒ってるんだよ」


 竜は賢い生き物だからな。


 ◇


 そして、夜の帳が砂漠を飲み込んだ。


 道中、偶然見つけた隊商と意気投合し、キャンプを張って、新世界の情報を訊きだした。


「ほう、手っ取り早く強くなる方法?」

「そうなの、ないかしら?」


 シャムは隊商の主であるムジカにおべっかを使っている。

 彼女がどうして強くなりたいのか、その理由を知っているから特に止めない。


「そうだな、であれば、お主らのクラスが何かにもよるんじゃないか?」

「「クラス?」」


 クラスとは何だ。


「クラスって何かしらおじ様」

「……クラスを持ってないのに、竜を従えるか。世界は広いものだ」


 ムジカは天を仰ぎそう言うと、おもむろに立ち上がる。

 彼が砂漠を歩く姿は慣れた様子だった。


「クラスと言うのは、天賦の才、みたいなものなんだが。私どもの国では皆クラスを与えられ、そのクラスの適性を見極めてそれぞれの職に就く」


 ……なるほど。

 クラスとは、地球で言う所の資格のようなものか?


 クラスがどういった仕組みなのか、詳細はムジカも覚えてないらしく。


「クラスか……それって例えばどんなのがあるの、おじ様」

「ソードマスター、マジックナイト、ワイズマン、プリースト、なんかだな」

「ふーん、その与えられたクラスによって、特有の力が付くのね?」

「その通りだよお嬢ちゃん」


 なるほど。


「ムジカさん、そのクラスってグレードアップさせることとか可能なんですか?」

「可能だよ、だがクラスを上げるにはそれ相応の時間が必要になってくる」


 それに、クラスを与えられるには結構な金が掛かるぞ?

 と彼は言う。恐らくギオス金貨で支払えばいいのだろうが。


 俺達の所持金のギオス金貨はおよそ一万枚だしな。

 これが無くなったら、この先の補給もできなくなる恐れがある。


 竜達の食費が一番気に掛かる所だ。


「マミー、グレッグがお腹を空かせているようです」

「だから私はマミーじゃないっつうの、グレッグはどこ?」


 グレッグとはシャムが預かった竜の稚児のことだ。

 竜の稚児がどんな食事を摂るのかちょっと気に掛かった。


「所でヴィラン殿、貴方達が私の母国に来るにしても、少し準備した方がいいだろう」

「それは、どういう意味です?」


 ムジカは仁王立ちし、俺を睥睨しているようだった。

 白いターバンと隊商マントがよく似合い、箔がある。


「貴方達が連れているのは災厄の象徴、竜だ。もしも私を見つけた時と同じ形で国を訪れれば警備隊の標的にされる、双方にとって要らぬ被害が及ぶんじゃないか?」


「……それもそうですね、でしたらどうしたらいいと思います?」

「私が先行して国に戻り、貴方達のことを国王様にお伝えしましょう」

「それは願ってもない、是非そうして頂けますか」


 ムジカの申し出に賛同すると、やはり彼は俺を鋭い目つきで見ている。

 その目付きには、剣闘士をやっていた頃から覚えがあって。


 どうやら俺は人間性を試されているようだと悟った。


「……嗚呼、是非そうさせて貰おう」

「ありがとう御座います。察するにムジカさんは母国でもかなりの地位にお就きになられているのでしょうね」


「分かるか?」

「えぇ、露骨なまでに」


 そう言うと、彼は口を大きく開き、砂漠の夜空に哄笑を轟かせるのだ。


 それから三日三晩、俺達はその場で待機した。

 竜達が猛烈な暑さにやられ、呪詛のように俺に死ね死ねと繰り返した頃。


「ヴィラン! ムジカさんが戻って来たわ!」

「ようやくお出でか」


 ムジカが、俺達との約束を果たすように帰還するのだった。

 


今、本作と並行してフリーゲーム作ってます。

フリーゲームの方は来冬頃にリリース出来ればと言うスケジュールなので。

リリース時には、是非とも遊んで下さいね(乙女向け)。


益荒男然とした本作を書いておきながら、乙女ゲーを作るとは……。

恐らく焼きが回ったんでしょうねw

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