夢の中の黒獅子
こんにちは皆さん。
今回から新章が始まることを予告し忘れていましたので、前書きにて失礼します。
本章の舞台は新世界、それも砂漠の外れにある亜熱帯の国です。
――俺と共に来ないか?
「っ……」
今のは夢?
夢の中の彼は黒いシャツと黒いスラックスを身に着けていた。
毛髪も黒かったし、けど、彼の相貌には華があった。
勝手ながら、夢の中の彼のことを私は『黒獅子』と呼称した。
獅子と讃えるほどに、彼の炯眼は鋭かったし。
何より彼から感じる圧倒的な……力。
彼はどんな経歴で、あのような存在感を得たのだろうか。
羨望の対象であると同時に、絶対敵に回したくない相手だと思えた。
「お早う」
「お早うキャシー」
支度を終え、学院に向けて出立するとキャシーに呼び止められた。
彼女は数少ない私の同期であり、貴重な友人だ。
彼女と一緒に乗り越えた苦楽を、心の支えとしてこの先も生きる。
そんなことばかり言っているからか、彼女は。
「はは、相変わらず重たい人生観してるね」
私の人生観を重たいと揶揄する。
「もう、しっかりしてよ。私達の職業は踊り子なんだから、そんな――」
私の背を叩いていると、キャシーは余所見していてある男性とぶつかった。
「……痛ってぇな」
「ごめんなさい、こちらの不注意でした」
「……ああ」
「あの? きゃ!」
するとその男性はキャシーの手を引っ張って、強引に羽交い絞めにして。
「俺も偶にはいい思いしたいんだよ」
「ちょっと! 警備隊呼ぶよあんた!」
通り掛かった主婦の人が、警備隊を呼ぶようその男性に説得をしてくれた。
普通なら、警備隊の名を出した瞬間相手は尻込みするのだけど。
キャシーを羽交い絞めにした男は胡乱な目で――っ、するりと刃を抜いた。
「おいお前、正気か?」
「ごちゃごちゃ五月蠅ぇんだよ!! 俺が一体何をしたって言うんだ! この国にくればこれまでの人生がひっくり返るはずじゃなかったのかよ! なんだよこの国は! 毟りとるだけ毟りとりやがって!」
キャシーを捕えている男は周囲の制止も聞かず、鬱憤を吐いて。
彼女の首元に刃をあてがい。
「脱げよ、俺と一緒に死にたくないだろ? なら最期に、いい思いさせてくれよ」
彼は俺から全財産むしり取った責任を取って欲しいとキャシーに迫った。
無茶苦茶な言い分に、私は指をくわえて見ている。
酷く怖い。
酷く、死ぬのが怖い。
彼が見せた死の権化のような切っ先に、震えるしかなくて。
「おい! 空を見てみろ! 竜だ――!!」
周囲にいた人集りから、そんな叫び声が上がる。
すると街の人たちは一斉に逃げ始めた。
「誰か、誰か、助けて……お願い」
「っ」
狂気に駆られた男がキャシーの首筋に吸い付く、正にその瞬間だった。
私達の上空に巨大な何かが通り、黒い影を落とした。
「騒々しいな、何かお困りですか?」
「テメエは? テメエ今、もしかしなくても空からやって来なかったか?」
「とりあえずお前の事情を聞かせてくれないか、さっき全財産がどうとかって」
その時、私は夢の中の彼と出逢いました。
黒獅子は私に背を向けて、その顔貌を覗わせることなく。
キャシーを捕えていた悪漢に歩み寄っていました。
「お願い、助けて」
「……事情を聞かせてくれないか」
「簡単な話しだ、俺はこの国のイカサマに遭って、全財産毟り取られて自我を保つのが馬鹿らしくなった。テメエもいずれ同じ運命辿ると思うぜ」
「なら、ギオス金貨十枚でどうだ?」
「? 言ってる意味がわかんねぇな」
「お前に金貨十枚やる代わりに、腹の虫をおさめろ。見た所お前も奴隷なんだろ?」
「……お前も奴隷なのか? その割には随分と」
――チャリンチャリン。
黒獅子は本当にギオス金貨十枚を、男に寄越し。
男はキャシーを捕えていた手を離しました。
「本当にいいのか? 返せって言われても、当てなんかないぞ」
「俺は主から奴隷を、俺と同じ奴隷を救えと言われてるだけだ、それよりも早くここから去った方がいいんじゃないか? 向こうからこの国の保安官がやって来たみたいだぞ?」
「すまねぇ、この恩は、一生忘れない。お前の名前は?」
「ヴィラン、早く行け」
「私達も逃げないと、竜は警備隊に任せて早く」
「……あの」
「竜が来てるの! 呆けっとしないで!」
キャシーは私の手を握り、必死に学院まで連れ立った。
「もう、しっかりしてよ。さっきは運が良かっただけ」
「うん……」
学院に逃げ込んだ私達は、恩師であるマスカル先生に状況を伺う。
「この国始まって以来の大惨事になるかも知れないな、何しろ私達には何もできない」
「そうですか」
でも、彼であれば?
先ほどキャシーを助け出し、あまつさえは悪漢さえも救った彼であれば。
恐らく、あの竜を退治してくれるかもしれない。
けど何故だろう、この時の私には、そのイメージは浮かばなかった。
圧倒的な力と存在感を放つ彼が、竜を手懐けているイメージが見えるばかりだった。
左下腹痛を抱えながら、更新失礼します、イタタタ。
私は妙な腹痛を所持しています。
きっと作業中の姿勢が悪いからなんでしょうが、それにしてもイタタタ。
豆知識として、便秘の痛みは主に左下腹部に来るものなんだそうです。
S字になっている大腸の丁度曲がり角らしいので、イタタタ。
イタタ、イタタ、イータタタタタタタタァッ!!
お前はもう、すでに(略




