いつまでも
こうして、新世界への道は開けた。
竜の巣窟に帰ると、アビーはいつもの天真爛漫な笑顔で喜んでいる。
それに引き換えシャムは一向に口を利いてくれなかった。
レギから聞いた話によると、心配の余りぶち切れているらしい。
それはさておき、ここからが重要な内容で。
山脈に残された竜達だが、レギの話によると――
「隊長、竜族は貴方に従うと言っています」
「……俺がモルドレッドの魂を宿したからか?」
「えぇ、ですからみんなで一緒に新世界へ向かいましょう」
ざっくばらんにだが、竜の数は四十はいる。
中には子連れの竜までいた。
「マミー、彼女が貴方にこの子の面倒を見て欲しいそうですよ」
「っ誰が引き受けるか」
「そんなこと仰らないでください、マミーが大好きな赤ちゃんですよ?」
「……確かに可愛いけど、私はマミーじゃないんだってば!」
レギはシャムのご機嫌取りをしていた。
「レギ! ちょっといいか?」
「何でしょうか隊長」
虎の姿のレギは四足で駆け寄る。
「この巣窟内に点在している、覇石の原石は持って行っていいのか?」
「……いいんじゃないでしょうか? あれは長い年月を掛けて生成されるそうですし」
一際大きなものだけ取って、残った小粒な物は置いときましょう。
と言うので、俺は覇石の原石を五つ入手し、荷台に乗せた。
新世界がどんな所か知らないが、この日のために色々と準備は進めて来たつもりだ。
例えば軍内で起きていた盗難被害、あれは俺の指示によるものだし。この先何か起きるかわからないから、使えそうな物は片っ端から盗れと盗賊達に言っておいたのだ。
新世界に向かう前に、俺はみんなを呼び集めた――
「みんな、先ずはお礼を。よくぞ俺達にここまでついて来てくれた」
と言うと、シャムの奴隷達や、軍に所属していた兵士達は歓声を上げる。
「これからお前らと一緒に新世界と呼ばれる場所に向かうが」
「お前じゃ無駄足に終わるぞヴィラーン、俺と一緒に保安部に向かった方が賢明だ」
「だから貴方は何でそこにいるニードル」
この際だし、ニードルにもついて来て貰おう。
あのバカは悪運だけは強そうだしな。
「ここにいるメンバーには、出来るだけ偉くなって貰いたい。何せ、――これからが俺達の伝説の始まりなんだから」
「「「……」」」
集っていたメンバーは口を噤んでしまった。
台詞の割には声が頼りなさそうだったかなと、若干後悔していると。
「ヴィラン隊長、自分は必ずや隊長のお役に立ちます!! ですから隊長が築き上げる伝説の一ページに自分の名前を載せてください! ヴィラン隊長、延いては我らの門出に祝福があらんことを!」
するとレギが虎の姿で勝鬨を促し、皆は大層喜んでいた。
「やった! 俺達とうとう奴隷から解放されるんだってよ!」
「これも何もかもヴィラン隊長のおかげだぜ! ありがとう隊長!」
「……信じてついて来る部下を、見殺しにしても空しいだけだしな」
俺は奴隷兵士達に囲まれ、そのまま宴を開いた。
突然開催された宴の最中、俺は重要人物に声を掛けて行った。
例えばあの男も気になる。
「ようラシェット、その後はどうだ?」
先日シャムを平手打ちした鷲鼻の男、ラシェットに近づき杯を交わす。
「……正直、お前は凄ぇよ。シャムにお前はもったいない」
「シャムの心遣いに時たま救われるし、彼女は可愛いしな」
「……俺と、ミラと、シャムは幼馴染だったんだ」
亡国でお姫様をやっていた頃のシャムは、三つ離れたラシェットとミラとよく遊んでいたそうだ。三人は国が亡くなる寸前、周囲の大人たちに逃されことなきことを得たらしいが。
結果的にシャムは国と両親を失ってしまった。
その時シャムは父親ファジールの墓前で「世界一の国をつくるから」と誓ったらしい。
何を以てして世界一の国と称するのかは定かではないが、俺には何となく見える。シャムから頼まれるように俺達は建国して、そこには多種多様な種族が国道を行き交う光景が見えるのだ。
まさか、未来視? いやそんな馬鹿な。
モルドレッドに未来視の力があったら、この結末は回避していただろうし。
「シャムはどうやら怒ってるようなんだ、そんな時はどうすればいいんだ?」
「時間が経てば気が冷めるよ。あいつは沸騰し易く、冷めやすい女だからな」
まるで猫のようだろ?
ラシェットが皮肉るように笑うと、シャムが蹴りを入れていた。
「ヴィランに変なこと吹き込まないで」
「クソアマが、お前はこいつの妻気取ってるだけの張りぼてだろうが」
「張りぼてなんかじゃない! 私は本気でヴィランを愛して……もういい」
シャムは不貞腐れるように踵を返し、竜の許へ向かった。
「行ってやれよヴィラン、シャムを気に掛けてるのなら、行くべきだ」
「……分かった。ラシェット、また今度話そう」
そう言い残し、シャムの後を小走りで追った。
「ついて来ないで」
「どうしてそこまで怒ってるんだ」
「貴方が私の意見に全く耳を貸さなかったからでしょ」
「主から命令された以上、そうする他ない時もある」
「……じゃあヴィラン、もしもあの女神から」
主から? 何か嫌なことを命令されたらどうするのか?
嫌というか、許容できない内容の命令をされたら、俺はどうする?
「主から? その続きは何だ」
「もういいの、言おうとしたこと忘れちゃったし」
「……心配かけたことを、今ここで謝る。悪かった」
素直に謝ると、シャムは俺の胸に飛び込むように抱きついた。
「まったくもってその通りじゃないの! どんだけ心配しようとも」
――どんだけ心配しようと、私は無力で。
「ヴィランの隣で一緒に戦えないのはもう嫌だから、これを機に強くなる」
「手っ取り早く強くなる方法があるぞ」
「私も女神の奴隷になれって言いたいんでしょ?」
よく分かったなって言えば、シャムは分かり易い男と言い、諧謔的な笑みを見せる。
今回の一件で彼女を怒らせたかったわけじゃないけど。
結果的に彼女は傷心し、酷く憤るように俺を嫌悪した。
けど、一時の嫌悪で壊れるような関係じゃないから。
俺達は互いに歩み寄るように、抱きしめ合って。
華奢な彼女の痩躯を愛しむように、感じていた。
いつまでも……彼女の温もりを感じていたいものだ。
最近も不景気ですねー。
だよねー、ここだけの話、私FXで数千万融かしちゃってwww
笑ってる場合とちゃうからな?
・・・
皆様、こんにちは。
ここで緊急速報です、FXは止しなさい!
FXの板を覗くだけにしなさい! 以上!




