竜の奴隷
「隊長! マミーと仲睦まじくしている所大変恐縮ですが」
「何だレギ? 今さら止めろと言ってももう止められないぞ」
同じ竜の背中に乗っていたレギが彼女とのキスを中断させる。
「……レギ、何か不安なことでもあるの?」
シャムは唇を指先でなぞり、感慨に耽るように尋ねた。
「何も山脈を越えるルートを取らなくても、新世界へは行けますよ」
「新世界って何だ?」
「そんなことも知らずにこの様な真似したのですか? さすがに引きますよ」
「拗ねるなよレギ、何が遭ったか知らないが」
「自分は拗ねてなどおりません……本当に竜の巣へ行くおつもりですか?」
どうやらレギは一行の目指す場所がお気に召さないようだ。
不安、絶望、憂鬱と言った感じにレギは俺達を引き留めようとする。
軍隊から大脱走したばかりで、それも飛行する竜の背の上で言うんだ。
とてもじゃないが、レギの制止は現実的じゃない。今さらというものだ。
「自分は竜を連れ、山脈を迂回するルートを提案します」
すると、俺達を乗せていた銀竜のシルヴィアがクルクルと甲高い鳴き声を上げ。
シャムがどうしたのかと尋ねていた。
「ヴィラン、シルヴィアが何を言ってるかわかる?」
「さぁ」
「マミー、彼女はこう言っているのですよ」
――人間とは全く以て愚かな生き物だ。
「シルヴィアがそう言っているの?」
「と言うよりレギ、お前は竜の言葉がわかるのか?」
尋ねるが、俺には強い確信があった。
レギは以前、俺に話してくれたことがあった。
竜は時折人里に降りて、人を攫う。
そして攫われた人はどうなると思う?
答えは、奴隷だよ。
竜も手足のように使役する奴隷を持ち、そして――
俺達を乗せた六翼の竜はそのまま山脈へと向かった。
ハラハラとしているのか、レギには落ち着きがない。
「寒い……」
「暖かくしておけよシャム」
「うん」
吹き下ろす『山おろし』が俺達の体温を急激に奪っていくようだった。
俺は女神の加護に守られているから、急激な気温の変化にも耐えられる。
六翼の竜達は山脈の中腹にぽっかりと空いていた洞穴に飛び込んだ。
「……」
俺達を背に乗せ洞窟の中を滑翔する竜達の光景に、息を飲む。
いつかゲームで見た、壮大な物語のプロローグと似ていたから。
ゴツゴツとした岩肌の雄々しい光景が、絶景に移り変わったのは一瞬だ。
視界が開けると同時に、虹色の光が飛び込んで来て、意識が奪われた。四方八方に視界を振ると、見渡す限り『覇石』と呼ばれる例の宝石が散りばめられていた。
六翼の竜は開けた空間にあった一つの湖の前に降り立ち。
「隊長、シルヴィア達が降りろと言っています」
「え? 何? 私達をここに連れて来てどうしろって言うの?」
シャムが困惑している。
彼女はまだ十五歳で、圧倒的に人生経験が足りてないからだろう。
「……――洗礼ですよ、シルヴィア達はモルドレッド様の洗礼を受けろと言いたいのです」
モルドレッド? その名は帝国から言い付かって聞いていた。
竜族の長であり、帝国に仇なすものとして長年戦争して来た相手だと。
「帰ったのか、レギ」
すると、湖の対岸に居た巨大な竜が人間の言葉を発した。
その竜が現れると、後方から数十に昇る竜達が悠然と続く。
竜に名前を呼ばれたレギは、地にひれ伏す。
「長らくの間不在していたことを切にお詫び申し上げます……我が主、モルドレッド様」
では、この巨大な竜がそうなのか。
全長七十メートルはあるだろうか、ずんぐりとした白い胴体は他の流線形の竜に比べて所々、傷があったり、鱗が剥がれている。肉厚の立派な四肢は虎威を示すよう鋭利で、頑丈そうだ。
今は畳んでいる両翼を広げれば恐らく視界一面を覆い尽くすほど立派で、この竜が帝国から畏怖されている謂われは一見にして判るほど圧倒的な存在感だった。
「ヴィラン、と言ったな」
「……ご指名頂きありがとう御座いますモルドレッド様」
それで。
「折り入って俺に何か用事がおありでしょうか?」
「女神の加護を受けている人間は希少。であれば、お主の力を試したい」
「果たして、それが双方にとってどんな意味があると言うのだろうか」
少なくとも俺はこの竜と争うメリットを見いだせない。
例え倒したとしても、今ここに居る連中に武勇を見せびらかすだけだ。
ここに居る連中はどいつも超人的な俺の力に討ち取られた連中だし、無意味だ。
「ヴィラン、貴様何を臆している。さっさとこの巨竜とやりあって共倒れにでも遭えばいいんだ」
「だから、何故お前がそこにいるんだニードル」
ニードルがうざったくてしょうがない。
「闘いに意味を持たせても、空しいだけだが……貴様も私も、武力以外に誇れるものが何もないのだから。ならば互いの誇りを懸け、雌雄を決しておこうではないか。どの道、私に敗れるようでは新世界に行っても無駄死にするだけだ」
「だがモルドレッド、俺達が闘えば周囲に被害が出る。俺の仲間も、貴方の配下も無事じゃすまないぞ」
「貴様が勝てば、私の配下を幾匹か与えてやるぞ」
モルドレッドは駆け引きのように先ずは餌をちらつかせた。ならばもし、俺が負ければ? とここで言うのは野暮だと思えた。モルドレッドの視線は俺の背後にあった一万枚ものギオス金貨に注がれていたから。
「もしかして、貴方の望みはギオス金貨か?」
「貴様らを嬲り殺してでも、頂くぞ」
古来より、竜は人里に降りて人の子を攫うという。
そして攫った人間を自分達の奴隷にして、使役するのだが。
異世界ギオスには奴隷の四大原則が存在する。
その中に『奴隷への命令にはギオス金貨一枚の代価が伴う』というのがある。
見受けた所、モルドレッドはレギを始めとして、幾百の奴隷を抱えている。
ならば彼らにとって一万枚のギオス金貨は、垂涎の代物だったらしい。
凍てつく雨と、蒸発を繰り返す砂漠。
その両者が激突し合う時、貴方は本当の意味での板挟みを(略
どうもこんにちは、方向性が迷子のサカイヌツクです。
迷子になって早三日、未だ抜け出す方法は見いだせておりませんが。
でも、私は前へ前へ進むのみです。
(´∀`(⊃*⊂)いざ・す・す・め・や・なろう、パ・ン・粉・を・なろうしてぇ~。
(´∀`(⊃*⊂)あがれーば、小説だーよ(更新はどうしたぁ~)。




