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悪逆ヴィラン


 異世界ギオスの伝承によれば、竜は時折人里にやって来て人を攫う。

 攫われた人の末路はどうなると思う? 答えは奴隷だよ。

 竜の身体では出来ないことを人間にやらせるのだそうだ。


 竜から見ても人類は賢い種族で、その有能さは認める所らしい。


 俺の足元で一緒に竜を見上げる中、レギはそう口にする。


「その話は本当か?」

「えぇ、太古の昔より確認されています」

「ハァーハッハッハッハ! 見ろヴィラン、人間がゴミのようじゃないか!」


 主は本当に人間が嫌いだな。


 主が爆笑するのもそのはずで、一翼で混乱していた戦場には六翼もの立派な体格を誇る竜が空を舞っている。彼らが織りなす群舞のような美しい戦術的侵攻に、主と共に目を惹かれていた。


「いいぞ! そこだ! 焼き払え! ハハハァ!」

「主、嘲弄が過ぎると貴方の美相が崩れますよ」

「……すまんなヴィラン、だが嗤わずには居られないんだよ」


 ――私は元より、人類滅亡主義の女神だからな。


「お前もよく知ってるだろ?」

「隊長の主様は居丈高なんですねー」

「五月蠅いんだよ奴隷風情が、いいからさっさと竜を殺して来い」


 さて、どうするか。

 竜達は戦場の奴隷達を翻弄(ほんろう)し、帝国そのものには気が行ってない。

 そこは不幸中の幸いだが、以前の失態もあるし俺が出向くか、竜の許へ――


「ッ!?」

「以前討ち取った奴にも言ったんだがな、竜は人間の言葉が判るらしいな」


 以前戦った時と同じく、地上に近づいた竜に飛び乗る。


「……」

「大人しく降伏するのなら、殺したりしない。降伏する気があるのなら地上に降りろ」

「――」


 すると俺に背を取られていた竜は静かに地上へと降り立った。

 ……まさか、本当に降伏したのか?


「ヴィラァアアアアアアン!! そこを退け、こいつは俺が殺る!」

「待ってくださいニードルさん、みんなも待ってくれ」

「どうしてだッ! 貴様まさか竜に情けを掛けるつもりじゃあるま――ォフン」


 貴方はいつも喧しんだよニードル。

 ニードルを手短に気絶させ、俺は兵達に説明した。

 この竜は俺達に投降する意向をみせていることを。


「……なんだその顔は」


 みんな「本当かよ」と言いたげに半信半疑な表情をしている。

 どうやら竜が人に降伏するのは前代未聞のことらしいな。


「さすがは我らがヴィラン隊長!」


 その時、虎の姿になったレギが吼えるよう俺を讃える。

 レギの熱賛にお調子者の兵達は表情を緩ませ、両手を天高く上げ。


「ヴィラン隊長はやっぱすげぇや!」

「俺、一生あんたについて行くぜ!」

「ヴィ・ラ・ン! 「「ヴィ・ラ・ン!!」」」


 その日、その戦場で起きた出来事はアビーによって帝国に報告される。

 さしもの帝国も信じられなかったようで、使者を遣わして従えた竜を見に来た。


「ほー、これが件の竜共か」

「えぇ、知能も大変高く、戦力としてはこれ以上ないかと」

「ふむ、ならヴィラン殿、試しに何か命令してみてくれないか」

「畏まりました……シルヴィア、お得意の吹雪をやって見せてくれ」


 六翼の竜はシャムが勝手に命名してしまった。


 シルヴィアは銀世界を思わせるような鱗を持っている銀竜で。

 性別は一応雌だったか、まぁそれはいいとして。

 吹雪の吐息を吐いてくれと命令すると、彼女はそっと息を吹きかけた。


「おぉぉ、もういいもういい、寒くて適わん」

「他にご用件はおありでしょうか?」

「いや、うむ、今一信用できないが、皇帝陛下には報告しておこう」

「……陛下に謁見することは可能かどうかも、報告してくれるとありがたい」


 しかし使者は俺の話に一切応じなかった。

 遣いの者は羊皮紙に筆を走らせ、竜の造形を描写している。

 彼の仕事の邪魔をするわけにもいかないし、ここはレギに任せて引こう。


「レギ、彼らの対応は任せた。何かあれば俺を呼べ」

「了解です」


 レギは虎の手で敬礼をしてみせた、器用な奴だ。

 きっとレギは器用貧乏なのだろう、家事はそつなくこなせるし。


 そしてそう言う奴が大抵昇進できないと言われるんだよな。

 器用貧乏が昇進できない理由・詳細は知らないが、これが一般論だ。


「ヴィラン、あの子達平気よね?」

「帝国に徴用されないか心配だって?」


 シャムは隣に並び立ち、使者から離れた場所で竜を傍観している。

 従わせた竜を『あの子達』と呼ぶ辺りはマミーだな。


 給水場に置いてあったコップを手に取り、水分補給しつつ。


「俺も若干心配だ、帝国がどういう態度に打って出るか判らない」


 シャムに同調するよう私感を述べる。


「……もしもあの子達を盗られるのなら、革命起こすよ」

「どうやって?」

「それは貴方の仕事でしょ」


 彼女の直ぐに人任せにする他力本願な性格はどうにかして欲しい。

 夫として切にそう思っていれば、シャムは腕にくっついた。


「大丈夫だよね? 今度こそ」

「何を不安がっているかは知らないけど、何とかなるよ」

「……そうだといいけど」


「お熱くしてる所御免よ、二人とも」


 一時によるシャムとの新婚らしい様相を取っていると、アビーが乱入した。

 今日のアビーは出逢った頃の極楽とんぼ然とした彼女で。


「ヴィラン、大事な話があるんだ」

「何か遭ったの?」


 シャムの不安を煽るような情報を俺の耳に届けるのだった。

 その情報と言うのは、帝国による俺への今後の処遇である。


 ――悪逆ヴィランは皇帝に仇なすものとして近日公開処刑する。



今回は主人公のヴィランが公開処刑の憂き目に遭いそうになっています。


安心して欲しい、私もお前と一緒に公開処刑されようぞ!!


(´∀`(⊃*⊂)


さあ!! 殺せぇぇえええええええ!!


(´∀`(⊃*⊂)


さあ!! 吸い込んでくれぇえええ!!


(´∀`(⊃*⊂)


さあ!!

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