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慢心と本気


「ッ! オゴ……あれ? 隊長、自分なんだか頭と、身体が」

「ヒイイ! 竜の肉なんて食べるから!」

「変、だな。それはだって! ベガ皇帝も……ガっ!」


 ――ガアァアアアアアアアアアッッ!!


 悲鳴のようなレギの叫喚は、野営テントの間を駆け巡った。


 すぐさま他の兵士達が駆け付け、何が起きたのか俺に訊く。


「どうしたんです隊長!」

「今レギ副隊長の叫び声が聞こえたのですが」

「……虎?」


 レギ、猫目の軍師だった俺の新しい部下は、虎に化けてしまった。


「……隊長、自分は一体」


 ――虎が喋ったぞ!


「落ち着いて聞いてくれみんな、実はレギはここで竜の肉を食べてこうなった。だから竜の肉は即刻処分するがいいな?」


「……それはいいのですが隊長」

「実は俺達も昨日竜の肉を」

「食べました」


 この部隊には頭がおかしい連中ばかり揃っているようで。

 竜の肉を食べてしまった兵士達は皆一様に人間以外の生物に化ける。


 正直な話、俺は剣と魔法の世界を完全に舐めていた。


 この時の様子をアビーは帝国に確と報告したようで。

 帝国から代わりの奴隷兵士達が寄越されることになったらしい。


「ふぅ」

「ヌハハハハ! 愚かなヴィランめ、貴様は世の中を舐めすぎ――フゥン」

「少し黙れニードル」


 ニードルの煽情を受けるまでもなく、俺は気を揉んでいた。


 ……この部隊に居た、およそ二百人の部下を、喋るほにゃららにしてしまった。

 これってどのくらいの罪に妥当するのだろうか。


 竜の首を獲った成果が帳消しになるほどの失態だと思う。


「ヴィラン、少し話があるんだけど、今いい?」

「どうぞ」


 食堂用の大テントは鞣革(なめしがわ)で作られている。

 陽光を受けた革作りのテントの中は味わい深い情緒に溢れていた。


 シャムは俯いている俺の隣にやって来て、何やら話があるようだ。


「……大変な目に遭ったわね、私、ヴィランからお礼を聞いてない」

「ありがとうシャム、お前のおかげで人間辞めなくて済んだ」

「どうしたの? 熱でもあるの?」


 せっかく人が素直にお礼を言ったのに、シャムは普段俺をどんな目で見ているんだ。


「話って?」


 尋ねると、シャムは遠方を見詰めながら瞳を爛々と輝かせている。


「レギ達がああなった以上、大道芸の道を目指すのもありじゃない?」

「ない」

「どうして? レギ達のような優秀な……そう、使い魔がいれば」


 使い魔? ねぇ……レギ達、人間を辞めてしまった兵士達は今後どうなるのだろう。

 彼らの進路が気になった俺は食堂テントを出て、レギを探した。


「レギ! 居たら返事しろ!」

「レギー、貴方の大好きな竜の肉ならあるわよー」

「止せシャム、他人様のトラウマをえぐるな」


「自分ならここに居ます隊長」


 と、テントの隙間から四つ足でのっそりと出てくるレギ。

 以前にはなかった迫力がある。何て言ったって虎だしな。


「レギ、率直に訊くが、お前はこれからどうする?」

「? 妙なことを訊きますね、自分は隊長と共にこのまま作戦に参加しますよ」


 お、おう。


「しかし、レギの主な仕事は物資の補給や後方連絡線の確保と言った兵站(へいたん)だろ?」


 虎となったお前にその任務を全う出来るのか?

 懐疑的に尋ねると、レギは低く唸る。


「隊長、自分はどうすれば」

「心配しないでレギ」

「マミー」

「誰がマミーだ、レギは心配しないで私達についてくればいい」


 シャムがそう言うと、レギは自分の頭を彼女に擦り付けていた。

 シャムは虎のモフモフに触れ、微笑んでいる。


「ありがとう御座いますマミー」

「マミーは止して、私のことは今日からマスターと呼んで」


 と言う美談的な一件があったのはいいんだが。


 ◇


 その後、戦力補給の一環で寄越された兵士からの報告によると。


「今回被害に遭った奴隷達は総員国に送還せよとの御命令です」

「……」

「ですからヴィラン隊長、部下の引き渡しのためにサインをください」

「ああ……どうして連中を送還しないと駄目なんだ?」


 すると、報告に来た兵士は俺に耳打ちした。


「どうやら、報告を耳にした一部の貴族が面白がって、連中を欲しがってるらしいんですよ。恐らくですがペットとして飼うつもりなのでしょう」


「ペットにするには口が立って、可愛くないぞ」


 動物になってしまった兵士達の末路を皮肉った所で。

 俺はレギの許へ向かった。


 レギは首に鉄の錠を付けられ、送還用の馬車に乗せられようとしていた。


「待ってくれ、そいつは送還しなくていいんだ」

「隊長!」

「レギだけは俺の監視下に置くよう皇帝より命じられてる、だからその手を離せ」


 と言えば、俺の言葉を鵜呑みにした兵士はレギを解放する。

 レギは颯爽と俺の足元により、馬車に乗っていた同胞を一緒に見送る。


「きったねぇぞ副隊長! 自分だけ助かりやがって!」

「隊長と副隊長の仲は以前から良すぎると思ってましたが、まさかそんな関係だったとは」

「……うらぎり、もの」


「みんな、本国に帰っても達者で暮らすんだよ。自分は隊長と一緒に竜との熾烈な戦いに打ち勝って見せるから。その暁にはみんなを救い出すからさー」


 軽い調子の口調でレギがそう言うと、鳥獣達が喧しい。

 俺は手で追い払うように「行ってくれ」と命令した。


 動物となった兵士達を乗せた馬車が陽炎に包まれるまで見送った。


「愛とは素晴らしいな、ヴィラン、今度は男色に手を染め始めたか」

「まさか、レギはシャムのお気に入りだったので手元に置いただけです」


 すると神出鬼没の主が現れ、冗談めいていた。


「主であれば、レギ達を元の姿に戻せるのではないですか?」

「誰がそんな余計な真似するか」


 主は徹底して人間が嫌いだ。

 そこは今も昔も変わってない主の人格であって、厄介な一端だ。


 しかし、虎となったレギに対しての彼女の眼差しは慈しみが混じっているようで。

 俺の足元で尻尾を振るレギを、絨毯にしてやろうかなどとの嫉妬を覚えるんだ。


「隊長!! 竜です! 新しい竜が出ました!」

「……どんな竜だ?」


 そして、俺達と竜族との戦争はここからが本番だったようで。


「確認されているだけでも、六(よく)は居ります!!」



わーたーしにかえりなぁさぁい……きおくとともに……。


タマシイの投稿ォオオオオオオオオ!!


この曲、エヴァのパチンコでよく聴きました(シミジミ)。


もしも自分が商業デビュー出来たらの話ですが、パチンコ部つくりたく思います<m(__)m>

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