BadHabit 7
王都は闘技場の街、シプスから直線距離にして約五十キロ。
ゆったりとした馬車の速度で向かえば半日は掛かる距離だった。
俺達が王都に辿り着いた頃には世界は夜のヴェールに包まれている。
「旦那、王都に着いたぜ」
御者から王都に着いたことを知らされ、約束の金貨十枚を渡す。
「これで娘さんといい思い出の一つでも作ってくれ、ありがとう」
「こちらこそ、金払いのいい旦那に一つ教えておくとな」
何だろう?
「王都は今、厳戒態勢なんだ。街の人も迂闊に外に出れないほど警備の目が厳しい。何でも隣国の動向が不穏だって王室から通達があってさ。王都を守る警備兵も普段以上に神経尖らせてるよ」
だから旦那達も派手な真似は控えた方がいい、と。
御者の忠告を耳し、再度お礼をいい別れた。
さてと、王都の門戸にやって来たはいいが、どうやって中に入ろう。
見受けた所王都は十メートルはある城壁によって守られている。
俺であれば脚力で飛び越えられるが、シャム達はそうもいかないだろう。
「わ!!」
「っ!?」
その時、俺は幼稚なイタズラを受ける。危険と隣り合わせの重要なタイミングで、こんなことを仕出かす図太い奴に心当たりがなかったが、彼女の顔を見て妙に納得したというか。
「アビーか、驚かさないでくれ」
「どうしてヴィラン達がここにいるの?」
「それは私達の台詞よアビー、その格好は何?」
シャムは貴族の風貌をしたアビーを問いただしていた。
「この衣装は僕の家から支給された、ただのそれだけだよ」
「アビーはもしかして貴族だったのか?」
「一応そうとも言えるね」
シャムは煮え切らない返事をする彼女に猜疑心を振りかざすよう顰め面している。
「ヴィラン達は王都に何か用? 何なら手を貸そうか?」
と言うアビー。
彼女の後ろには貴族が所持していそうな豪奢な馬車が控えていた。
俺達はアビーの馬車に乗り換え、馬車はゆっくりとした足並みで城門へと向かう。
「待たれよ、其方たちはどこの貴族だ、先ずは名と身分を証明できるものを」
「ご苦労様、僕の名はアビゲイル、この国の第一王女アビゲイル」
……。
「「いやな予感がする」」
馬車の外から聴こえてきた声に、シャムと台詞をかぶせた。
「だから言ったじゃん、アビーみたいなのを信用しないでって」
シャムは小声を繰って、尚も顰め面で俺を叱責していた。
「いざとなったら守衛達をのめして逃げるぞ、お前らも準備しておけよ」
「そんな物騒なことをしなくても平気ですよ」
と言い、同馬車に乗り合わせていた修道女がアビーの許へと向かう。
俺は彼女達が心配で、シャムと一緒に堪らず馬車を降りた。
「本当だって!」
「怪しいにもほどがあるぞ貴様! この国には二人の王子しかおられない」
「だから、僕は深い理由があって存在を隠匿されてたんだ」
「喧しい! 貴様みたいな不審者を城内に入れれば俺達の首が刎ねられる!」
「皆さん、込み入っている所大変申し訳ないのですが」
先ほどの修道女が喧噪を仲裁するよう割って入ると、守衛たちの顔つきが一転する。
「貴方は、聖堂教会の司祭アルテナ様……」
「えぇ、私の名はアルテナで合っていますよ」
アルテナと呼ばれた彼女は普通の修道女が着るような黒い修道服ではなく、高級感溢れる白いものをお召しになられていた。突然なる彼女の来訪に、守衛達は慌てた様子で王室に連絡していた。
「これは、アルテナ様。戴冠式のためにお越しになられたのでしょうか?」
すると城からヴォルフ第一王子が直々にやって来た。
アルテナという人はそれほどの高い地位にいるらしい。
「えぇ、そうですよヴォルフ様」
「様などと畏まった呼び方はお辞めください、自分のことは以前のようにヴォルフと呼び捨てて構いませんよ」
「……貴方はこれから国王になるお人で在られれば、もうその呼び方は出来ませんね」
「もったいないお言葉、光栄です……所で」
「はい、何でしょう?」
「こちらにいるアビゲイルという女が、我が父の息女と偽ったという報告を受けたのですが?」
王子から視線をやられたアビーは破顔して手を振っている。
実にアビーらしい図々しさだと思えた。
「良かったね王子、僕と寝なくて。危うく近親相姦になる所だったね」
「もう黙れ、王子が難色を示している」
「それに弟を暗殺した容疑が掛かっている大罪人まで一緒か」
っ!? 王子がどいうつもりで言ったかは知らないが。
もう、彼を利用して奴隷から成り上るのは諦めた方が賢明みたいだ。
「これはどういうことでしょうかアルテナ様」
「ヴォルフ様、貴方が幼少の頃、今は亡き弟君であるラリー様とよく喧嘩していましたね」
「それとこれと何の関係がおありなので?」
「喧嘩した原因は貴方がラリー様のブローチを欲しがり、隠して、嘘を吐いたことが発端でした……真実から目を背け、心を曇らせては駄目と、私はその時教えたはずです」
「つまり、この娼婦の顔つきをした女は父の隠し子だったと仰りたいのですね?」
「ええ、彼女は今まで国王の言いつけで私共の手で幽閉されておりました。不憫に思った私はヴォルフ様の戴冠式を機に、彼女の存在を国に公表してみてはいかがと思い。今回一緒に連れて参りました」
ヴォルフ王子は腕を組み、手を顎に当てて逡巡しているようだった。
その時俺は趣旨返しの一環で、王子に向かってこう吠えたてた。
「王子、寛容な精神をお持ちの貴方が、実の妹にこれ以上の辛苦を味わわせる御つもりじゃないですよね?」
「ヴィラン殿、君の気持ちは察するが、今はそれ所ではない。軽口は謹んで頂きたい」
そんな俺の脇腹にシャムが肘を入れていた。
中々にいい攻撃だったとはいえ、俺には効かない。
「いいでしょう、貴方達を城へ案内する。ですがアルテナ様、以後、このようなことはないようお願い致しますよ。やって来られる際は必ず私に報告してからにして欲しい」
「ありがとう御座いますヴォルフ様、この度はおめでとう御座います」
◇
城内は殺気立っていた。
なんでもヴォルフ王子が国王の座に就くことが確定的なり、ラリー王子の後援者達がこう糾弾しているらしい――国王の座欲しさに弟を手に掛けた悪党が神聖なる王城に居座るな、と。
陰謀が陰謀を呼び、その余波は国の外れにある闘技場の支配人を勤める俺にまで及んだ。
以上が、今回の事件の顛末。
強かで慎重な性格のヴォルフ王子が、ついに強行策に打って出たらしい。
「無論、王子が弟を暗殺した証拠なんか残ってないだろう」
「……そしたら次はお前の命も危ういんじゃないかアビー?」
「私を殺害すれば、いよいよヴォルフ王子は終わりだ」
アビーは部屋に備わっていた酒を味わい、生き心地に就いたような顔をしている。
彼女の表情は、シェリーが俺に見せてくれたものに近かった。
俺はヴォルフ王子から与えられた部屋でアビーと二人きりになっていた。今この部屋は聖堂教会の司祭、アルテナの魔法によって傍聴の類は出来ないんだそうだ。魔法ってつくづく便利だな。
「俺が王子であれば、女とは言え、王位継承権がある君のことを放っておかないな」
「私を放っておかないか、どう放っておかないんだ?」
と言い、アビーはベッドに腰かけている俺に白ワインを持ってきた。
彼女からは普段の極楽とんぼ然とした雰囲気を一切感じられない。
「……どうして今まで身分を隠してたんだ」
「馬鹿な質問するなよ、馬鹿じゃあるまいし」
日本で言うところの水戸黄門として有名な徳川光圀のようなものなのか?
身分を隠し、悪を裁き、排除する。
そんなことを考えていると、アビーは俺の手を取った。
「ヴィラン、奴隷から成り上りたいんだってな。なら私につかないか?」
「……君にならそれが出来るのか?」
女神の奴隷である俺を、この世で一番の権力者に押し上げてくれるのか。
そう問えば、彼女は少し微笑んだ。
「馬鹿な質問……するなよ――」
そして俺は権力をかさに着た彼女から強引に誘われ、そのまま交わる。
彼女は俺を奴隷から解放してくれると、曖昧な約束をしてくれたのだが。
情交の最中、彼女の口から洩れていた快楽への讃美歌を聞いていると。
彼女が本当に約束を果たしてくれる気が、まるでしなかった。
私は一匹狼の洋楽ハンター。
狙った洋楽は絶対に外さない!!
が。
最近洋楽達の動きが妙なのよね……まさかとは思うけど。
あいつ(邦楽)が洋楽を殺しに掛かってるのかしら?
まさか……ね。
と言ってる間にも一曲の洋楽発見!!
即座に視聴する! では是にて!




