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BadHabit 6


「おお、ヴィラン様、よくぞ御無事で」

「ただいまミハエル。シャムは?」

「奥様でしたら支配人室に居ります」


 聞いた話によると、シャムは祝賀会を開くほど、俺の不在を悦んだそうだ。


 そのことにちょっとした傷心を覚える。


 ……よし、例の誤認識の魔法をテストしてみるか。主からそそのかされて覚えた魔法を、使いこなせるようになりたい。と言うのは建前で、俺が不在の間、シャムがどんな騒ぎ方をしてるのか見たかった。


「……失礼します」

「ああ、ミハエルぅ、どこ行ってたのぉ?」


 支配人室にはシャム御付きの女奴隷達が揃い踏みしていて。


 どうやら今はファッションショーのような催し物を肴にして飲んでいるようだ。


 女達はシャムを筆頭に下着姿で、目の毒であり眼福だった。


「奥様、このような所をヴィラン様がお知りになられれば」

「ヴィランのことは言わないでぇ……死んじゃった奴のことをいつまでも引きずる訳には行かないから」


 ……情報が錯そうしてるな。


 俺は死んでないが、関係者には死んだことになっているのか?


「それよりもミハエルぅ、紳士な貴方を見込んで、私達の下着を男目線で選んでみせて」


「そう申されましても」


 俺は今にでも冷静さが消え失せそうだ。


 病的に細いシャムの肢体は、色白く、健康的な肌艶をしていて。

 身に着けている生地面積の少ない白の下着はシルクなのかな、光沢がある。


 シャムよりも成熟した奴隷達は、俗に言う我がままバディをしていた。


 思わず網膜が焼き付きそうなほど、目に意識を集中させているとそこに。


「失礼します、おや?」

「……ミハエルぅ? ミハエルが二人になった」

「これは何の御冗談でしょうか、ヴィラン様」

「え? 貴方まさかヴィランなの?」


 と言われると、他の奴隷達も一斉に気付いたようだ。


 どうやら誤認識の魔法は一度気付かれると、正常な認識に戻るらしい。


 原理は錯覚のようなものなのか?


 シャムは咄嗟的に腕で胸を隠した、が構うまい。


「ちょっと! どこへ連れてつもり! 離してよ離して!」


 シャムを連れて廊下に出る。


「ピィウ、シャム、これから旦那とお楽しみかよ?」

「こいつらこのあと滅茶苦茶セックスした!」

「はは、何だよその台詞。俺も今後使おうかな」


 すると数人の男の奴隷と出くわし、俺達は好奇の眼差しにさらされた。


「バカ!! お前ら後で覚えてろよ!! 笑ってないで助けろ!!」


 嘲弄する奴隷共を尻目に、俺達は寝室へと向かう。


「……何よ、あいつらが言ってたように本当にやるつもり?」

「否定的じゃないさ、けど、その前に教えて欲しいんだ」

「何?」


 寝室に辿り着き、気に掛かったことを訪ねようとすれば、シャムは寒がるようにベッドの中に潜りこんだ。彼女は毛布で身体を隠しつつ、頬を紅潮させた顔を出し、円らな瞳で俺を見ている。


「どうして俺が死んだことになってるんだ?」

「それは、ある人からそう教えて貰ったの。もちろんその人が誰かは言えないけど」

「何がもちろんなんだ? 意味がわからないぞ」


「だって考えてみて? その噂を広めた人物を知ったら、ヴィランどうするの?」

「……俺はそこまで鬼じゃないぞ、俺は優しい心根をしてる」

「嘘ばっかりー」


 シャムにそう言われ、少し考えた。


 悪評とも言える『デタラメな噂』を流している人物に心当たりはないか。


 ……あのバカか? いやまさか。


「ヴィラン、ここだけの話、ラリー第二王子を暗殺しちゃったの?」

「どうやってだよ、俺はずっとシャムの目の届く所に居ただろ」

「さっきの幻覚魔法使ったとか、方法はあるんじゃない?」


 魔法って言うのは厄介だな。


 魔法は、事件に重要な確たる証拠を作り上げることも出来れば。

 魔法は、事件に重要な確たる証拠をもみ消すことも可能らしい。


「とにかく俺じゃない、信じてくれ」

「ウンワカッター」

「……俺がいない間、他の男にそそのかされなかったか?」


 例えばシャムに迫っていた盗賊がいたはずだ。


 シャムは一応までに俺の嫁だし、あいつは闘技場(ここ)から遠ざけた。


「大丈夫だよ、私はこれでもヴィラン一筋だから……あの舞踏会でヴィランに声掛けたのは、一目惚れしたからだし」


「そうか、ならその手は何だ?」

「え? お金頂戴って意味に決まってるでしょ」


 聞けばシャムは俺がいない間に王子が来訪した決闘大会の興行収入を溶かしていた。


 俺はいいが、ミハエルの身になってみろ。


「服を着ろ、それで信頼出来る数人を集めて出立するぞ」

「いいけど、どこに?」

「デートだよ、いいから言われたとおりにしてくれ」


 シャムは俺に後ろを向いてて、と言いいつもの軽装に着替えた。

 その後支配人室にいた奴隷達に声を掛けて身支度を済ませる。


 俺は彼女達を連れて、街の外へと赴いた。


「デートじゃないの? どこに行くつもり?」

「ピクニックだよ」


 その時、割としっかりとした一台の馬車が通る。

 馬車を制止して、御者に行先を訪ね、俺達も乗せて貰うよう交渉した。


「ねぇヴィラン、デートって言ったじゃん。どこに向かうつもり?」


 馬車の日傘の陰に入りながら、シャムは再度そう尋ねた。


「ヴォルフ第一王子の国王就任式でも見学しに行く」

「はあ? ヴィランが今王都に行ったら完璧に捕まるでしょ」

「俺は誤認識の魔法で姿を隠す」


 それでも捕まったら、その時はその時だ。


 贖罪のつもりなのか、シャムは一度逡巡すると諦めたように肩を落とした。


「はぁ、ヴィランは一人でも行くみたいだし、誰かがヴィランを見張ってないと何をしでかすか判ったものじゃないし、ついて行くよ。でもねヴィラン、こういう大事なことは包み隠さず言ってくれないと」


 でないと私達もヴィランを信用できないじゃん。

 と、御託を並べるシャムに人差し指を立て、俺はこう言い放った。


「――敵を騙すには先ず味方から、って言うだろ?」

「趣味ワルッ」



 パイロキネシス!!


 どうも皆さん、こんにちは、サカイヌツクです。

 もしも自分が何かしらの超能力を所持できるのだとすれば。

 その時私が欲しい能力は念動力発火能力です。


 念じるだけで、お前のハートを焦がしてやる。

 では、参る!!


 ( ゜Д゜)パイロキネシス!!


 ……燃えただろ?

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