BadHabit 4
実際に、アビーが男と寝ている現場を目撃したことはないが。
彼女は闘技場にいる剣闘士の何人かと寝た。という情報は耳に入っていた。
「……奥さん」
「王子さん」
まるで昼ドラネタをちょっと捻ったようなシーンを二人は醸し出す。
「嬉しいお申し出感謝する、しかし、私は今大事な時期でしてね。お遊び気分で不祥事を招く訳にはいかないのですよ。そこを理解して貰えるとありがたい」
し! 王子の冷静な判断に思わずガッツポーズしてしまう。
「どうしても駄目ですか?」
「えぇ」
「僕のテクニックは国で一番って評判ですよ」
「ほう、どのようなテクニックをお持ちなのかな?」
これは杞憂だといいけど、王子って案外俗気深いよな。
「僕は国で一番の暗殺者だよ?」
「「は?」」
アビーが王子に向かって国一番の暗殺者を謳うと、事件が起こった。
「退けヴィラン、面白そうだから出てきたぞ」
人間嫌いの女神である主が、面白そうだからという理由で現れたのだ。
「はは、何の冗談かな?」
「冗談だと思う? なんなら、王子にとって邪魔な奴の暗殺を引き受けるよ」
「ほう、ヴィラン殿、君の奥方は中々に大きなことを言うんだね」
王子が俺達の方を振り向けば、主が「だろ」と返していた。
「ねぇ王子、いいだろ? 暗殺してあげる代わりに、僕と寝てくださいよ」
「……では、私の弟で、第二王子のラリーを暗殺して貰いたい」
……王子、こんな衆目の前で暗殺を企てて、平気なのですか?
忠言しようとすれば、主が手で俺を制止したので、状況を静観せざるを得ない。
「分かった、見返りに王子は僕と寝てくれるんだね?」
「えぇ、実は王位継承のために弟のラリーは邪魔なのですよ。出来れば奥方の手で可及的速やかに首を掻いて頂きたい……何て、冗談です。ははは、みんな私の迫真の演技に騙されないで欲しい」
「えー、冗談だったのー、王子ってば酷い男」
「冗談でなければ、私は王子の座を失脚してしまう。ご無礼をお許しください奥方」
そこで俺はアビーを支配人室から連れ出した。
王子の傍には主がいることだし、万が一の事態はないだろう。
「アビー、お前は今すぐ闘技場から失せろ」
「怒っちゃった? さすがは八歳児、癇癪起こすのが早いね」
「あれはお前みたいな尻軽と肌を重ねないための嘘だよ」
「ああ、やっぱそうだったんだ」
のほほんとした様相で彼女はうだうだと与太話を広げているが。
アビーのせいで危うく王子の機嫌を損ねるとこだった。
そこから俺はこの女を危険人物と判断した――ッ!
「失せろと言ってるだろ、闘技場やこの街に二度と来るな」
強行的に彼女に退場願おうと、闘技場の壁に拳で穴を開けてみせた。
「……はぁ、わかった。君を怒らせたことは謝る、私はもう二度とここには来ない」
「やけに聞き分けがいいじゃないか、それに口調もいつもとは違うし」
「君なら知っていると思うが、世の中知らない方が幸せなこともある」
ああ、そうだな。
「じゃあねヴィラン、バイバイ」
アビーは大きく手を振り、駆け足でこの場を去った。
彼女から執拗に誘惑され、断り続けたけど。
それは彼女の態度が俺のタイプじゃなかった影響も大きい。
けど、今さっき一瞬だけ見せた彼女の本当の顔は、結構そそるものがあって。
やはり彼女は、危険な存在だったようだ。
◇
それから数日後。
王子も観戦した決闘大会の興行は大成功と言っても過言ではない。
闘技場はもちろん満員だったし。
闘技場の周辺には王子を一目見ようと民衆が大挙として押し寄せた。
だが生憎、俺の奴隷からの成り上がりを、王子に取り付く島がなかった。
支配人室で次なる一手に頭を抱えていた、正にその時だった。
「大罪人ヴィラン!! 今度こそ貴様の息の根を止めてやるぞ!」
「……まるで悪役みたいな台詞を言いますね、保安部のニードルさん」
俺に自白強要を迫り続けた保安部が、以上の怒声と共に訪れた。
今度は一体どんな容疑なんだ、言い掛かりならもう止してくれ。
すると保安部の基地の一つを任されている部長のウィスクは真摯な眼差しを向け。
「ヴィラン、お前をラリー第二王子暗殺の容疑で連行する。これが王室からの逮捕状だ」
「第二王子……暗殺? そもそも俺は」
反論しようとすれば、拷問好きのニードルが俺を殴りつける。
「今度こそ貴様を死刑台に送ってやる、覚悟しておけよヴィラン」
ニードルから酷い蔑視を受けた俺は、またかと嘆息を吐くと共に。同室で寝ていた一向に起きる気配がないシャムに、どんな神経してるんだと、懐疑の眼差しを向けるのだった。
論題:ブラバという行為について
著:サカイヌツク
おのれ……おのれぇえぇえぇぇぇ~!
ブラバだと!? ならばよし、各人速やかに牛乳を口に含め!
準備出来たか……? 貴様の快楽神経をおが屑にしてみせようぞ!
では参る!!
(´∀`(⊃*⊂)
どうだ!? あ、どうだぁあああああ!?




