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世界

金髪の兵士の名前はセニア。セニアは、どうやら私に命を救ってもらったお礼に、私が知りたい情報を教えてくれるようだ。私は頭を整理する。


「……まず、だ。君はどこの国の所属だ?」

「私はマルクス王国所属の兵だわ」

「……君のポジションは兵士なのか?」

「その辺もあとで説明するわ」


マルクス王国は、記憶が正しければ、この大陸の領土の半分近くを占める大国である。そして私が結果的に侵略し落としかけた国だ。


「大国であることには変わらないけど、こちらも南の方が独立したのよ。まあ、今は関係ないかな?」


マルクス王国の南。私は地理を頭に思い浮かべるが、南は山岳地帯だったはず。そしてそこは私の記憶では王の命令も届かず、健やかに少数民族が暮らしていた場所だ。国として独立、よりも「地方自治を認めている」方が表現として正しいだろう。


「で、ここは不作の4国の中央にある洞窟よ」

「待て、1000年経った今でもそうなのか?」

「いいえ。4国はマルクスよりも発達しているわ。ただ、マルクスのみんなはそう呼んでいるの」


そうか、とホッとする。


「で、私たちは、今その4国と戦争中なのよ。原因はこれ」


セニアは近くにあった私の魔力結晶を砕いて取る。私は正体こそ知っているが


「そいつは?」


と尋ねる。セニアは少し不思議そうな顔をして


「あなたのじゃないの?」


と聞いてきた。私はその水晶をまじまじと見る。美しいコバルトブルーのそれは、まさに宝石。ただ、そこからは、巨大なエネルギーが発生していた。これは私の魔力。私はこれを生み出したがために、長い眠りについたのだ。


「さあ」


と言うと、彼女は頭をかく。


「これは結晶よ。不毛の4国はこれをエネルギーにして様々なものを作り上げたわ」

「君たちの持っていた魔剣は違うのか?」

「魔剣……ああ、私たちのは、科学で作り出したものよ。動力はこれじゃないけど」

「ほう……で、これがどうして問題に?」

「まずは、この塊を隠していたことね。同じ大陸なんだから分け与えることをしようとしなかったの。そして何よりこれは、禁呪でできたものとされているわ。そうなれば、あなたの復活を目論んでいるに違いない……私たちはそう判断してるの。こんな魔法、あなたぐらいでしょ?」


セニアはそう言う。間違えてはいない。確かにこの魔法が使える奴は私ともう一人程度だ。私はぶつぶつと言うと、思案する。どうやらマルクスは敵のようだ。もし、ここで全くの知らぬ、存ぜぬであるならば、その後が問題だ。だから、ここは疑惑の芽を息吹かせるしかない。


「うーむ、私は知らないなあ」

「何をよ?」

「その禁呪をだよ。そもそもこいつの力は何なんだい?魔力っぽいけど」

「ええ、それは魔力の塊よ」

「でも、歪な。そうだな。これが私から出たって?ありえないな……あ、あの時か」

「あの時?」

「私が封印された時、やつらは禁呪を使ったんだ。反魔力という魔法なんだが、奴らは私の魔力を奪い地面に流したんだ。そして私は最期の力を使って抵抗したんだ。そうしたらクリスタルの中に閉じ込められて……」

「待って、そしたらこれは偶然の産物なの?でも不毛の国々が発展したのは1000年前からよ?」

「……待てよ、私の敵にサタンという男がいた。マルクス国の魔法使いだった男だ。君も魔法使いならば時間を操る魔法使いの名を聞いたことはないか?」

「え……?」

「そいつなら、この結晶を有効的に使用する算段がわかるかもしれない」


チラッと彼女を見ると、彼女は顔面が真っ青になっていた。私は彼女を見ると


「サタン……かつてあなたと戦い、あなたを破った英雄よ。その功績が讃えられ、今のマルクス王国はサタン一族のものよ」


私には、サタンという親友がいる。共に修行し魔力を極め、果てには私とサタンの模擬戦は互いに本気となり、地形を変えてしまった。その後私たちは王国に仕えたが、私は辞めてしまった。それなりの地位にはついたが、辞めてしまった。それから彼は幾度となく私に立ちはだかる。本当に強い男だった。友よ、今はお前の名声を使わせてもらうぞ。


「きっと彼が伝えたんじゃないか?……ん?ということは王国側はこいつのこと、知っていたんじゃないか?」

「いや、それは……なら何で……」


心の中でクスクスと笑う。


「なら、私たちは1000年間騙されていたの!?」


彼女の叫びにますます笑いがこみあげる。それをぐっと飲み込み、


「歴史は常に勝者が正しいんだよ」


と返した。これは……いけるな。洗脳魔法で服従させようかとも思ったが、その必要もなさそうだ。完全にボードは私が握る。


「そう、私は王国に復讐をするために、目覚めを待っていたのだ。君も魔法使いなら、私についてくるがいい!」

「……あなたのお陰で魔法使いたちは激減したとされていた。でも、魔法使いたちはエルムに行って国を作ったとされたわ」

「うん?では、君の力は?」

「私はマルクスでの魔法使いの生き残りよ。先代はあなたのことが嫌いだったらしいわ。今、私のこの力は忌むべき力よ」


その言葉にピクリと反応する。「忌むべき力」は、魔法使いたる我々を侮辱する言葉だ。全てを察した。だからこそ、彼女は一般兵なのだろう。


「ならば来い。私が見せてやる。夢と希望と自由の象徴たる魔法を」

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