カメコさん
午後はイベントがあるらしい。
会場で撮った写真を イベントのSNSに投稿し、「いいね」の数でグランプリを決める。その写真を撮ったカメコさんと、モデルになったレイヤーさんには、賞金も出る。俺達はイベントブースに見に来ていた。
「それでは、第二位の発表です!エントリーナンバー274番!」
やっぱり肌の露出が多い女の子の写真が人気なんだな。エロ目線で「いいね」を押すキモヲタ共が目に浮かぶぜ…撮る方も撮られる方も、わかってやってるな…露出狂なんかな…まぁどうでもいい、あんまり好みのタイプじゃないし…
「お待たせしました。第一位の発表です!エントリーナンバー165番!」
スクリーンに映し出される写真。それは、俺とひろこさんが、階段でホットドックを食べている写真だった!いつの間に撮られたんだろう…もはや盗撮じゃないかよ!すると、一人の男が話しかけてくる。
「ごめんなさい。あまりにも仲良さそうだったんで、つい撮ってしまいました。世界観もぴったりだったし…終わったらご飯奢るんで、許してください!」
どうやらこの男が撮った写真らしい。俺はひろこさんを見る。ひろこさんは、俺を見て頷くと、写真を撮った男に何やら耳打ちしている。
「それではステージへどうぞ!」
司会の人に促され、三人でステージに上がる。俺は緊張でガチガチだ。そんな俺を見て、ひろこさんが手を握る。
「もう一回、なりきりましょう。ね?」
俺は目をつぶって、もう一度頭で反芻する。これは現実じゃない、俺はキャラクターなんだ…ひろこさんの手を握り返し、目を開けて一つ頷く。
「大丈夫ですよ、お嬢様。」
「うん。」
表彰式で金一封を受け取り、優雅に一礼する。ステージを降りた瞬間俺は、足が震えだした。
「やべぇ…今頃緊張が…」
そのままヘタリ込み、卑屈に笑った。
イベントも終わり、俺達は着替えを済ませ、元の日常に戻る。ひろこさんはメイクを落とし、眼鏡をかけている。何故だろう、最初に見た姿なのに、今日は可愛く見える。
「お待たせしました。行きましょうか。」
会場の外に、カメコさんが待っていた。メイクも衣装も無いけど、俺達に気付いたようだ。
「この辺り、ファミレスしかないですけど、いいですか?」
「私はいいですけど、たかしさん、大丈夫ですか?」
「あ、はい。それで。」
女の子に名前を呼ばれたの、いつぶりだろう?あ、親父の相方は勿論数には入れない。そうなると…中学か…いつもは苗字呼びだからな。なんか、こう、ザワっ!てするな。悪い意味じゃなくて。
四人がけのテーブル。俺とひろこさんが、隣同士で、対面にカメコさん。今日は朝昼パンだったから、ご飯ものがいいな…
「ひろこさん、何にします?」
二人で一つのメニューを見る。ひろこさんは、パスタを頼んだ。俺は生姜焼き定食にする。
「あ、それ、迷ったんですよね。美味しそうですよね!」
「じゃあ、少し食べます?」
「いいんですか?」
「構いませんよ。」
「じゃあ、パスタも、少し食べてください。」
二人のやり取りを見て、カメコさんはニヤニヤしていた。
「へぇ、普段から仲がいいんですね。羨ましいです!お二人は、付き合ってどれくらいなんですか?」
「「え?」」
「え?」