俺
趣味は?と聞かれたら「人間観察」としか答えようがない。
ファミレスなんかで、近くの席の人達を観察して、面白そうならアフレコとかしてる。痴話喧嘩してみたり、商談中のおじさん達に愛のささやきさせたり…
まぁ、自分でもキモいと思うよ。こんなことを趣味とか言って。でもさ、似たような事をテレビでイケメン若手俳優が言うと
「それが演技に役立ってる」
って話しになるじゃん。逆にそれをキモいとかMCの芸人が言うと、ネットで叩くわけでしょ?
理不尽だと思わない?
そもそもネットで叩いてる奴らって、何なんだろうね?どいつもこいつも評論家気取りで。悪いものを悪いって言うのは簡単だよ。上っ面だけで勝手に言うだけだから。そこに至るまでに何があったのか、根元の部分を知りもしないのにさ、正義感ぶって叩くのおかしくない?
法律にだって、情状酌量ってのがあるんだよ。お前らに人を裁く権利はない。どうせ叩いてる奴らって、自分の意見に共感して欲しいだけなんだよな。だから否定されると矛先変えてまた叩く。リアルな世界で、なんの権限も影響力も無いから、ネットの世界で偉そうにしたいだけなんでしょ?クレーマーと一緒じゃんよ。
てか、なんでみんなそんなに他人に興味あるの?俺が人間観察するのって、風景見てる感覚と変わらないんだけど…あ、むしろそっちか。俺と同じ感覚だな。
観光地に行って、世界遺産とか見て、普通の人たちは「へー、凄いなぁ!」って見てる。俺もそのタイプ。ネットで叩く連中は、名前とか彫ったり、落書きしたり、精神的にはそっちのタイプだな。周りに知り合い居なかったら、自分がやったとバレなかったら「やってやったぜ!」くらいの勢いで落書きするタイプだろう。
あぁ、自分の妄想に腹立ってきた…楽しくない妄想はダメだな。でも…妄想は趣味じゃないしな…どちらかと言うとクセみたいなもんだし。しゃあないなぁ。
ある日、魔女さんがまた声をかけてくる。
顔を赤らめ、何か言いづらそうだ。
「あ、あの、このマンガ、好きですか?」
「あぁ、これ、以前アニメ化されたヤツですよね。結構好きですよ。」
「良かった…あの、コミケとかって、行かれたことありますか?」
「えぇ。友達に誘われて、何度か。」
「実は、手伝って貰いたいんです。急にこんなこと言って、ご迷惑なのは分かってます。でも、イメージに合う人がなかなか居なくて…」
(なんだ?告白とは違うみたいだけど…)
「バイトが休みの日なら…でも内容によりますが?」
「今度の土曜日なんですけど…」
「土曜日…あ、休みですね。」
「じゃ、じゃあ、お願いです!私のコスプレの相方をしてくださいっ!」
「はぁ?」
(ホントに魔女さん、コスプレしてるのか!)
「あの、このマンガのヒロインのコスプレするんですけど、執事の彼の役をやって欲しいんです。横に立ってるだけでいいので…お願いします!」
(圧がすごいな…まぁ、どうせ暇だけど…)
「ホントに立ってるだけでいいの?」
「はい!写真とか、撮られるかも知れませんけど…」
「まぁ、それくらいなら…」
「ありがとうございます!じゃあ、朝8時頃、ここ出ますんで、一緒に来てください!」
「は、はい。」