8話 6月18日火曜日
ミカンせいです。
姫野もいいけど、やっぱ彩音派です
ーーどうしてこうなった?
僕は今の現状を把握するのに、5秒、いや、10秒考えた。
まず今は、放課後でなぜか僕は音楽室にいる。そして、隣には橋本、目の前には彩音、、、。
ぶっちゃけ、修羅場である。
どうしてこうなったのか、それは時を遡ること数時間前、、、
※ ※ ※
今朝は不思議な夢をみた。
それはあるファンタジーみたいなお話。
登場人物は僕、翔也、そして彩音だ。
まず、僕と翔也には役職(ファンタジー設定)がない。
ある時彩音にスキルポイントmax(ファンタジー設定)にしてあるツリーを登ってと言われる。
最初は3人で登ろうと言ったが、僕はちょっと遅れてやってくる。
翔也と彩音二人で先に登っていた
そのツリーを登るにつれて翔也はどんどんスキルをふやしていった。
そしてなぜか翔也に嫉妬した僕は翔也を攻撃しようとした。
その時の怒りの力でスキルが発動した。
その後、彩音に「わざと僕を怒らせて僕のスキルを出したんでしょ」と聞いた
そしたら、彩音に「さぁ、なんのことでしょう」と返された。
そこでこの夢は終わっていた。
何度読んでもストーリーめちゃくちゃだし、設定も訳がわからない。でも、夢で見た以上はこのノートに書くしかないと思っている。
また、あの夢を見た時にちゃんと覚えていられるように。
7時30分、東から太陽が昇り始めて窓から日差しが入ってくる。暑い。
夢ノートを書き終えた僕は、いつ誰かがこの部屋に来てもいいようにノートを机の中にしまった。
「昨日のことが無いようにしなきゃね」
昨日、姫野、いや、ひなたさんにノートを見られ、彼女が帰った後も恥ずかしさが僕の心を蝕んでいた。
秘密を知られた以上、これ以上恥ずかしい思いをすることはない、そう思いながら朝の準備をした。
7時50分、いつもと同じくらいの時間に玄関を飛び出した。部屋に入ってきた日差しは雲に遮られてて少し涼しかった。
歩きながら、今日の時間割を確認した。
「今日は午後に現国と数Ⅱ入ってるし、朝っぱらから体育あんじゃん、だるいな」
「そんなこと言えてるなら、まだまだ元気だな、おはよう、祐」
いつもの時間なだけあって、翔也とあった。
いつもなら世間話に花を咲かせるのだが、今日は昨日のことを思い出していた。
ひなたさんは昨日、思い出したくないが、僕の夢ノートを見たときに翔也と部活が一緒で知っていると言っていた。つまり、翔也もひなたさんについて知っているということだ。
そのこともあり、翔也にひなたさんについてちょっと聞いてみたかった。
「おはよう、翔也。そういえばさ、部活にさ、ひなたさんっているでしょ、どんな子?」
「ひなたって、姫野さん?姫野さんかぁ、まあ一言で表すと、熱い子、だよね。あの子の描く絵って、なんか情熱的っていうか、ほんとにこの子が描いてるのかよって思う」
「熱い、子?」
知らなかった。僕は教室でのひなたさんは知っている。隣の席だし、何度も話したことだってある。でも、僕は一言で表すと、おとなしい子、だった。表裏一体という言葉があるように僕の見てきた彼女と翔也が見てきた彼女、どちらもひなたさんなのである。
さっきまで雲に隠れていたはずの太陽が顔を出した。そよ風が木々を揺らす。そんな風がまるで自分の無知さをあざ笑っているようにも感じた。
「だからさ、好きなんだよね」
、、、え?ちょっとまって、橋本に続いて、翔也まで?
「ちょっとまって、翔也ってひなたさんのこと好きなの」
「うん。好きだよ」
まじか、こいつまで僕のライバルになるのか。
真っ赤な日差しがギンギラギンと照りつけた。
三角関係は僕、彩音、橋本の一つだけだと思っていたのに、まさか僕、翔也、ひなたさんの三角関係も存在していたなんて。
だが、翔也はそんな僕の姿を見て、間違いを訂正するかのように言った。
「あ、違うよ。たしかに姫野さんは可愛いとは思うけど、僕が好きなのは姫野さんの絵の方ね。うん、絵が好きなんだよ」
「なんだ、そうだったのか。てっきり、翔也まで僕のライバルになるんじゃないかって思ってハラハラしたよ」
「ん?ライバルって?」
「う、ううん、なんでも、ない」
僕はホッとした勢いで余計なことまで口走ってしまった。
正直僕は、今彩音が好きなのか、ひなたさんが好きなのか、はたまたこの感情は恋愛感情ですらないのかは分かっていない。だけれども、二人に彼氏ができていることは想像できないし、したくもなかった。
つまり、そういうことである。
ここは話題を戻そう。
「そういう、翔也は好きな人っているのかよ」
質問してみて、思った。これは聞いてはいけない質問だったのではと。
翔也の表情が変わった。
「いるよ」
少し間を置いてから翔也は険しそうな表情をして答えた。でも、すぐにいつもの笑顔に戻った。
「でも、祐には教えないよー」
「そうかよ」
僕はそういうしかなかった。とても翔也の好きな人については、
だって、翔也から感じたあのオーラは、、、
あれから何を話したかは覚えていない。
教室に入った僕はまず、ひなたさんと「おはよう」と挨拶を交わし、そのあとチャイムギリギリに入ってきた橋本と「ういっす」と挨拶を交わした。
時間は瞬く間に過ぎ、午前の体育も終わって昼休みに入っていた。
いつものように橋本と二人で(たまにひなたさんを巻き込んで)ご飯を食べた。毎週のように、現国と数Ⅱだるいなーと会話をした、はずだ。
正直言って、覚えていない。今朝の一件もあり、それどころではなかったから。
気づくと放課後になっており、僕は橋本と一緒に音楽室に向かっていた。
橋本と適当に会話しながら、音楽室に着いた。
「そういえば、お前の幼馴染ってどいつだ?」
さっきまで適当に返事をしていた僕の思考は完全に停止していた。
「幼馴染だろ、そら、あいつだよ」
何も考えもせずに僕は彩音のことを指差していた。
それに気づいた彩音がこちらに近づいてきた。
「あれ、橋本。なんでそんなとこいるの、早く入ってきなよ。って、なんで祐くんまでいるの?」
そこで僕の思考は正常に戻った。
そして、冒頭に戻る。
つまり、全部僕が悪いんだった!
「おい、祐音!ちょっとこっちに来い」
橋本が少し怒りながら、僕の手を引っ張っていった。
音楽室からちょうど死角の位置に連れていかれた。
「祐音、まず、お前の幼馴染って彩音でいいんだよな」
「いや、なんて言いますか、それはそうですね、、、はい、そうです」
「なんでいってくれなかったんだよ」
橋本は怒りとがっかりが混じったような顔をしていた。
「ごめん、あの時は言うタイミングを逃しちゃって、その、ごめん」
僕は必死に謝った。僕の視線はずっと地面ばっかで、橋本の顔が見えなかった。少したったあと、橋本の顔を見てみた。すると、
橋本は笑っていた。
「なんで、そんなにも謝ってるんだよ。言えなかった雰囲気作ったの俺だぜ。過ぎた話しはもういいんだって」
僕はホッとした。ちょっとくらい殴られる覚悟もしていたがそれも無駄だったようだ。
「でさ、祐音。相談なんだけど、、、」
「あ、橋本いた。今日の定例会そろそろ始まるよ。教室戻って」
あれから何分経ったのか知らないが、彩音が橋本を呼びにきた。
結局最後に橋本が言ってた相談って何だろう。
「あ、祐音。定例会終わるまでちょっと待っててよ。30分かからないからさ」
そう言うと、橋本は僕の返事も聞かずに行ってしまった。
これで橋本を待つルート決定だ。
「祐くんも大変だね、橋本なんかに目つけられちゃって、ま、頑張ってね、じゃあ」
僕は「じゃあ」と一言返して、彩音の後ろ姿を見ていた。やはり、いつ見ても魅力的だと思う。
40分が経過して、橋本が昇降口に現れた。
「すまんな、定例会が長引いちゃって。大会近いからさ、許して」
別に怒っているわけではないので、「いいよ」と一言返した。
「で、相談って?」
やはり、話の趣旨はそこだ。いつもみたいにどうでもいい前置きを聞いてたら、日が暮れる。
まぁ、とっくに陽は落ちてるんだけど。
「あ、わり。じゃあ、お前に相談。前言ったように、俺は彩音が好きだ。だから、協力して欲しい」
僕はここまできたらなんでも来いと身構えた。
「彩音に好きな人がいるのか聞いて欲しい」
やはり、橋本には勝てないなと改めて思った。
恋のトライアングル編へと続く。
トライアングルが何個もできるんだよね