6話 6月15日土曜日
ミカンせいのターン!
目を覚ますとさっそく夢ノートに今日の夢について書く。
自分たちが小学生くらいだった。
そのには彩音や翔也、そして僕がいた。
なぜか、国家試験を受けることになって僕だけが落ちた。
そのあとは橋本が出てきて、、、
その後僕は書くことをやめた。
これくらい書くと夢の記憶は曖昧になってきて自分の先入観とかも入ってきてしまうからだ。
「さてと、今日は橋本と映画に行くんだったな」
顔を洗い遅めの朝ごはんを食べ、僕は家を出た。
すでに太陽は南へと昇っていて、初夏とは感じられないほど暑かった。
日差しが照りつける。
半袖で露わになっている両腕がオーブンに入れられたように痛い。
「さて、急がなきゃな」
シャツが汗で濡れることも気にしないで祐音は映画館へと走り出した。
※ ※ ※
「おい、遅いぞ。祐音」
「ごめん、寝坊した」
「遅刻なんて、許されることじゃ無いんだからな、全く」
橋本は意地悪そうに言った。
いつも学校では、逆の立場である。僕が早くて、橋本は遅れてくる。そのことを僕は何度か注意していた。「ギリギリに来てもいいけど、遅刻だけはするなよ」と。
橋本は僕の言ったことを揚げ足にとって僕を茶化しているんだ、違いない。
僕は反論するのも時間の無駄、いや、ただめんどくさいと思った。
「で、今日見る映画って『I love you 〜101回目の恋〜』だよな。橋本ってこういうのが好きなんだ」
「うん、そうなんだよね。なんてね、わかんないかな、俺の目当ては主演の木村くんだよ!やっぱかっこいいよね!あれでもう40過ぎてるとはおもえないくらいのかっこよさだよね!俺が女だったら絶対恋してるわ」
橋本は最初少し寂しような表情をしたが、よっぽど主演の人のことが好きなようだ。
それからは淡々と時間が進んでいった。
僕がちょっと遅れたことで席が前の方だった。
橋本は少し機嫌が悪そうだったがこの回を逃すと18時以降になってしまうので、渋々了承した。
映画までは少し時間があったので、二人でポップコーンを買いに行った。僕は塩味とグレープ味の炭酸にした。橋本はキャラメル味となぜかジンジャエールだった。
橋本に「ジンジャエールなんて美味しいの?」と尋ねたら、「子供にはまだわかんないよ」と返された。ちょっとムカついた。
しばらくすると、入場時間になり劇場へと足を運んだ。
いつ観ても退屈な映画の予告、視聴マナーについての映像。
そんな映像を十数分観ていると、映画の本編が始まった。
映画の感想?そんなの決まっている、とても素晴らしかった。
予告を観る感じではどこにでもあるような恋愛ものだと思ってた。
でも、違った。
最初いきなり武士が出てきて、「すまぬ。約束を果たせそうにない」と言って、切腹した。その時ある女性が叫んだ。
時は変わって現代、普通のサラリーマンが新しく入ってきた後輩に恋をした。そこから、お付き合いをし、最後は子供や孫に見守れながら一生を終える。
「やっぱ、最後花瓶に刺されていた花、あれが最初の武士の奥さんが育てていた花と一緒だったっていうのが趣があるよね」
映画が終わり、橋本と二人で近くのハンバーガー屋さんに来ていた。
「でしょ!やっぱ、お前を誘ってよかったわ。絶対、祐音ならこの作品気に入ってくれると思ってた」
橋本はポテトを片手に嬉しそうに話した。
「あと、主演の人もかっこよかった。役にぴったり合ってた」
「でしょ!やっぱ、木村くんはかっこいいでしょ。俺、実はライブとか行ったことあるんだけど、木村くん、歌も上手くてMCとかも面白いんだよ。今度機会があったら行こうぜ」
僕はこの話は長くなるなと思い、途中から聞き流していた。
それと同時に橋本には夢の話をしてもいいんじゃないかとも思い始めていた。
先日は笑われると思っていたが、今日は何故だか真剣に聞いてくれるような気がした。
「ふう、好きなことについて話すってやっぱ楽しいよな」
橋本は話し終えて、ハンバーガーを食べだした。
僕はすかさず、夢を話をしようとした。
「あのさ」
少し手が汗ばんできた。
「今から話す話、ちゃんと聞いてね」
笑われたらどうしよう。
「この間、朝会の時、倒れたじゃん」
頭おかしいやつだと思われるかな。
「その時、ある夢を見たんだ」
友達じゃなくなっちゃうかな。
そこからはひたすら夢の説明をした。
あの時見た夢、ちょっと慌てて説明不足の点はあったけど、橋本は真面目に聞いていた。
「てな訳なんだよ」
話終わった。すると橋本は
「クスッ」
笑っていた。しかし、
「その話、面白いな。でも、お前が嘘つくわけないもんな、その話、俺は信じたぜ!なんか、あったら俺に言えよ、力になれるかわからんけど、相談には乗ってやる」
「ありがと」
橋本も力強い返事に僕は少し泣きそうだった。
「じゃあさ、今度は俺の悩み相談をしてくれよ」
「いいよ」
僕はなんの迷いもなく引き受ける。
「俺さ、実はさ。好きな子がいるんだよね」
「えー、まじ」
一本取られた。ここで、恋愛相談をしてくるとは思わなかった。
「で、どんなやつ?あ、わかった姫野さんだ」
「違うよ、同じ部活の子」
「部活の子か、どんな子なの?」
質問してみる。すると、橋本は少し照れたように答える。
「いつも明るくて、誰とも仲良くして、朝練もちゃんとやってるらしい」
そういえば、橋本の部活ってなんだっけ?
橋本は続ける。
「さらに、彼女が奏でる音色がまた美しいんだよ」
音色?音色ってことはつまり
「わかった。お前さては軽音部だな」
「不正解、吹奏楽部だよ。言ってなかったっけ?」
またしても一本取られた。この顔、この性格で吹奏楽とか似合わねーという感想を口に出さないようにグッとこらえた。
「吹部ってことは候補が多すぎてわかんねー、だって女子結構いるだろ」
「約30人くらいかな」
僕があれこれ模索していると、橋本はある提案をしてきた。
「じゃあ、ゲームしようよ。Yes.Noクイズ、祐音が俺にYes Noで答えられる質問をする、俺はそれにYes Noで答える、簡単なゲームだろ。ただし、3回までな」
「いいよ、やろ」
僕も楽しそうと思い、参加した。
「じゃあ、行くよ。その子は同級生である」
「Yes」
「その子は同じクラスの子である」
「No」
ちなみにこの時点で6人ほどに絞れた。なら、
「その子の名前の最初の文字が『あ』から『と』である」
「そんなこと聞いてわかるのか、Yesだよ」
「ふふん、これで情報は出揃った。ま、今はわかんないんだけどね」
「今はってどういうことだよ」
僕はちょっと自慢げに答えた。
「実は、吹部には幼馴染がいるんだよね」
「それは、ずるいわ」
僕は勝ち誇ったかのようにジュースを飲む。
「はあ、じゃあ隠してても仕方ないか。絶対誰にも言うなよ。俺の好きなのは、鈴木彩音って子」
僕は飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。またしても、橋本に一本取られた。
ラブ要素でも入れとけば後々楽しいかなと思ったから入れといた。
ちょっと早かったかな