4話 6月12日水曜日 夜
ミカンせいのターン。
なんか不思議な設定が加わったので、伏線貼っといた
あのあと今朝の出来事がまるでなかったかのように授業を一通り終えた。
橋下が「帰ろうぜ」と言ってきたので、僕は何もかんがえずに「うん」と答えた。
帰り道、僕は赤く染まった夕焼けをバックに橋本と一緒に帰っていた。
「今日、大丈夫だったか?お前、急に倒れるから心配したんだぞ」
「大丈夫だって朝から何度も言ってるだろ。ただの貧血みたいなもんだって」
そう言ってみるものの、橋本には今日見た夢みたいなもののことは言ってない。
だって、話したら絶対笑われるような気がする。
ただ単純に橋本のことが信じられないんじゃないかと言わんばかりに風が木を揺らした。
僕はそうじゃないと思いながら俯いた。
「だよな、祐音。祐音?おーい、聞いてるか?」
「ん、なんか言ったか?」
「いや、今日の授業もダルかったなーって。てか、本当に大丈夫か、朝からずっとそうな感じだけど、倒れたとき変な夢でも見たか?」
一瞬心を読まれたかと思ってビクッとしたが、橋本の顔を見たらすぐに冗談だとわかった。
すぐにでも、一人になりたい気分だった。
「ほ、ほんとに大丈夫だって。あ、そういえば親におつかいを頼まれてるんだった。じゃあ、僕もう行くね」
苦し紛れの嘘だった。
「あ、うん。気をつけて、じゃあ、また明日」
「また明日」
橋本は心配そうにこちらを見ていたが、なんとか一人になれた。
橋本と別れてからは一人になれてよかったと思っていたが、しばらくして寂しさが襲ってきた。
寂しさを紛らわせようとあれこれ考えてると、ふと夢についての出来事を思い出していた。
「自分だけの、色、か」
紫の男の人は色はなんだと聞いてきた。その時、ぱっとは浮かばなかったが今じっくり考えてみてもやはり思い浮かばなかった。
赤?青?黄?どれもしっくりこない。
金などの神々しい色も僕には似合わない。
虹とかの多色って感じでもない。
その時、近くからピアノの綺麗な音が聴こえてきた。
「綺麗な音色だな」
僕はふと思った。
「音色も色だ!ってなわけないか」
自分の考えを否定している時にまた風が木を揺らした。
帰ってきて早速、夢ノートに今朝の出来事を書き殴った。
小さな時に見た夢。またその夢の場所に行った。
紫、赤、黄、緑の人。
夢喰いの存在。
自分の武器がなんであるか。
気づけばいつも半ページくらいしか埋まらない夢ノートが見開き1ページ埋まっていた。
「書き始めてから今までこんなにも埋まったことなんて初めてだな」
自分でもたくさん書いたことに驚いていると、ふと過去のノートに何かヒントがあるのではないかと思った。
昔仕舞ったであろう押入れの中を探してみる。
「確かこの辺に」
あった、昔に書いたノートだ。
No.5って書いてある。
もっと昔に遡って、
No.4、No.3、No.2、No.1、あったこのノートだ。
見つけたノートをめくってみる。そのには自分で書いたとは思えないほど可愛らしい字と絵が書いてあった。
ヒーローになって世界を救う夢。逆に魔王になって世界征服する夢。電車や飛行機を運転した夢。
どれも子供らしい夢がそこには書いてあった。
懐かしいなと思いながらもお目当てのページを探した。
No.1の最初のページにはこう書いてあった。
このノートに僕の今日見た夢について書きます!たまに忘れちゃうこともあるかもしれないけど、毎日書きます!いつか、このノートを見て懐かしい、そしてあの不思議な夢をずっと忘れないようにするために書き続けます!
自分でも書いたことを忘れていた。
書いた通りちゃんと今でも有言実行しているあたり僕は意識高いんじゃないかと思う。
そんなことはさておいて、つぎのページをめくってみる。そこにはあの時の夢が書いてあったスーパーの屋上の駐車場。服やおもちゃが置いてあるところ。
車や商品はあるが人がいる気がしない。
何かを探してる、何かはわからない。
最後には決まって何かから逃げている。
そんな夢。
そのように毎ページのように書いてある。そして隔ページ、数ページごとになってちょうどNo.1の夢ノートが終わる頃には消えていた。
今思えば、僕は夢喰いから逃げていて、あの灰色世界は今朝見た夢世界ではないのか。
色々な考察をしていると、母が、「ご飯だよ」と呼びにきた。
考えたいことは山ほどあったが、母を心配させたくはなかったので、僕はそっと夢ノートを閉じた。
キラーパス(笑)