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初めての別れ

スラム街を出ると僕たちは血まみれだし、ひとりの男の子はおしっこまみれなので僕たちが泊まってる宿屋へ人目を避けながらやって来た。

「おかえりーって、血まみれじゃないか、どうしたのさ、早く入りな。」

ママがみんなを迎え入れてくれる。

「ハリムの母ちゃん、綺麗だな。」

ジンが僕の耳元で囁く。当たり前。ママは綺麗で強いんだ。

僕たちの姿を見たロズベルトが水の入った桶とタオルを用意してくれた。

「ラビアちゃんだっけ。あなたはこっち。」

「は、はい。」

ママがラビアを見えないところに引っ張って行った。僕たちは服を脱いでタオルで身体を拭く。ロズベルトはその間に服をどこかに持って行った。きっと洗濯してくれるんだ。

身体を拭き終わって下着だけ着けたころ、ラビアはママと奥から戻ってきた。会ったころと同じままで。ママ、どんな魔法を使ったんだ?洗濯を終えたロズベルトも戻ってきた。

「さて、ハリム。事情を聞こうか。」

「うん。スラム街に紛れ込んじゃってね…」

僕はママにあったこと全てを話す。怒られるかな?


話終わるとママの平手が僕の頬を打った。

「あの…ハリムは悪くないの。わたしが…」

「ラビアちゃんは黙ってて。これはうちの家庭の問題だから。」

「はい…」

「この国の法律が分からないから、ちょっと冒険者ギルドへ行ってくるよ。」

「ああ、頼む。」

ロズベルトは部屋を出ていった。

「ハリム、なんで殴られたか分かるか?」

「うん。ママとの約束を破って人を殺したから。」

「ああ、そうだ。スラムにも一般の人間もいる。そいつらが混ざっていると厄介だ。そのスラムの住人らはハリムが剣を抜かないといけないくらい強かったのかい?」

「ううん。弱っちかった。」

「じゃあ、そんな奴ら拳でなんとかしな。殺人の狂喜に取り付かれちまうよ。」

「うん。」

冷静に考えるとそうだ。男の子たちを助けたときまではたぶん冷静だった。僕に向かってくるのが見えたとき、殺すことしか考えれなくなっていた。

「約束通り、ラビアちゃんを守ったのは偉かったよ。おいで。」

「うん。」

ママの元へ行くとママが強く抱き締めてくれた。

「同年代の友人が出来ることはいいことだ。1週間後にはここを出るからな。それまではいっぱい遊びな。」

「うん。」

1週間か…

「え?そんなに早く行っちゃうの?」

ラビアだ。泣きそうな顔をしている。

「ああ、あたしらは流浪人だからね。それまではハリムと仲良くしてやってくれ。」

「はい…もちろんだよ…ハリム…」

ママに抱き締められたままの僕の腕にラビアがすがってきた。僕はママから離れ、ラビアを抱き締める。

「ハリム…離れたくない…」

「僕もだよ。ラビア…」

抱き合って二人で泣いたんだ。


僕の殺人の件はロズベルトがなんとかしてくれた。スラムの住人しかいなかったのも良かったみたいだ。

それから1週間、僕はママたちの依頼に付いて行かずラビアと遊んだ。たまにジンたちも加わった。うん。楽しかった。


出発の朝、デミレル商会の前にやってきた。

「うちのハリムが世話になったね。」

ママがベラトさんに話し掛ける。

「いえいえ。ラビアも楽しそうでした。ありがとうございます。」

「ハリムっ。」

ラビアは僕の元にやってきた。

「これ。あげる。」

長方形のフワッとした物を僕にくれた。

「いいの?これは?」

「これね、マフラーっていうんだよ。首に巻いて使うんだよ。わたしがお母さんに教えて貰って編んだんだよ。今から南の方にも行くんでしょ?使って。」

「へー、ラビアが作ったの?すごい嬉しい。ありがとう。」

「ハリムっ。」

「ん?あっ。」

僕の頬に柔らかい感触。ラビアがキスしてくれたんだ。

「ハリム、大好き。また会いに来てね。」

「僕も大好きだ。10年、10年経ったら必ず会いに来るよ。」

「うん。それまで結婚せずに待っとくね。」

「うん。」

ベラトさんが「えっ?」って顔してるけど気にしない。僕とラビアは抱き合って別れを惜しんだんだ。


僕とママとロズベルトはナハトまでの道を走る。今回からは僕もバックパックを背負う。中にはラビアから貰ったマフラーも入っている。

「ハリム、ラビアちゃんいい子だったね。」

「うん。」

「10年後の約束、絶対守るんだよ。」

「うんっ。」

「ナハトまで1日で着くように走るよっ。」

「「おう!」」

僕たちはナハトまで、1日で疾走したんだ。


夜、暗くなってからナハトの町に到着した。小さな町だ。外壁もない。町に入ると驚いた。もう暗いのに活気がすごい。冒険者風の人たちがひっきりなしに走回っている。

「いいねいいね、ダンジョンの町。」

ママがワクワクしている。

冒険者ギルドにやってきた。遅い時間なのに人が多い。ジロッと僕らを見てくる。今までの目を反らすでも喧嘩を売ってくるでもなく、なんか品定めされている感じだ。

「いいねいいね。いろんなところから強者の臭いがプンプンするよ。」

ママのテンションは高い。

「今から泊まれる宿を教えてほしいんだが。」

ロズベルトが受付で宿を聞いている。ママはアーチャーか魔導師募集の貼り紙を掲示板に貼っている。

「よし、宿に移動しよう。」

僕たちは冒険者ギルドを出て宿屋に向かったんだ。

宿屋は冒険者ギルドから少し離れていた。2人部屋1室しか空いてなかったので3人一緒の部屋。僕はママと一緒のベッドで眠る。

「明日から早速ダンジョンに潜るよ。」

「うん。」

ダンジョン、楽しみだ。僕はママに抱かれながらラビアの夢を見て眠ったんだ。


次の日、3人でダンジョンにやってきた。

町の外れに大きな広場があり人でごった返している。その端の方に…あった。洞窟のような入口が。外からでは数十メートルしかないように見えるから、きっと地下に繋がっているんだ。

ダンジョンの入口に向かって進む。

「よぅ。今から潜るのかい?地図はどうだい?」

男がひとり話し掛けてきた。

「地図か。どうするメイヨウ?」

「いらんだろ。合ってるかどうか信用できんしな。」

「そういうわけだ。」

「ちっ。」

男は分かりやすく舌打ちして離れていった。

「地図いいの?」

「ああ、あんなん詐欺が多いからな。たまに本当のもあるが、運だからな。」

なるほど。

「それにロズベルトがマッピング上手いんだ。」

「メイヨウとパーティー組んでから上手くなったんだよ。」

クラウベラクトでも潜ってたんだな。1週間くらい帰ってこなかったときがあるけどあのときかな?


ダンジョンの入口の前にやって来た。入口には受付がある。

「入るのかい?その子も?」

「ああ。」

受付の男の人が声を掛けてくる。

「中は自己責任で頼むよ。3人で銀貨6枚だ。」

「ああ、分かってる。」

「中での素材はここでも買い取りしてるから出たら寄ってくれ。」

「ああ、わかった。」

ママがお金を払い、ダンジョンの入口に進む。初ダンジョン。緊張する。

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