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初めてのデート

デミレル商会までの道は冒険者ギルドを基準に教えられたので冒険者ギルドに行く。

「えっと前の通りを西に…武器屋の角を左っと。」

あとは大通りにぶつかったら右だっけ?通りを歩く。人通りは割りとある。冒険者ギルドの近くだから強面の人が多い。

そんなことを考えながら歩いていると前の方からラビアがひとりでこっちに向かって歩いているのを見付けた。今日は橙色のワンピースだ。ラビアの赤い髪と良く合っている。かわいい。

「あ、ハリムー!」

僕を見付けて走ってくる。

「ラビアー。」

僕もラビアに向かって走る。ラビアと会うことが出来た。

「ハリム。そろそろ来てくれるんじゃないかと思って。」

「そうだけどさ、子供がひとりで出歩いちゃいけないんだよ?知らないの?」

「知ってるけど、冒険者ギルドまでの道は安全なんだもん。早くハリムに会いたかったんだもん。ハリムだってひとりじゃない。」

「僕は強いからいいの。」

「じゃあ、ハリムが守ってね。」

ラビアが右手を差し出してくる。僕はその手に左手を重ねる。

「行こ。」

「うん。」

二人で手を繋いで歩き出したんだ。


「ここのね、小物がかわいいんだよ?入ろ。」

僕たちが会った場所から少し行ったところにある商店街にやってきた。まだ午前中なので通りは人通りが多い。ラビアは1軒の小物屋の前で足を止め、そのまま僕の手を引いて店の中に入った。

「いらっしゃい。あら?デミレル商会のところのラビアちゃんじゃない?」

店番をしていたおばさんはラビアの知り合いみたいだ。

「こんにちは。ラビアだよ。」

「はい、こんにちは。そっちの子は?ラビアちゃんの恋人?」

「この子はね、ハリム。わたしの大切な人。」

「こ、こんにちは。」

大切だって。なんか嬉しいな。僕も挨拶する。

「あらあら。ゆっくり見ていってね。」

「「はいっ。」」

おばさんが奥に行ったので、二人で商品を見る。

「あ、この鳥の飾りが付いたヘアピン、かわいいね。」

ラビアがひとつの商品を食い入るように見ている。銀貨1枚か、よし。

「ラビア、それ、買ってあげるよ。」

「え?いいの?」

「うん。お金はロズベルトに貰ったから大丈夫だよ。」

「本当!嬉しいっ。」

ラビアにニコッと笑う。か、かわいい…この胸がキュンってなる痛みはなんなんだろう。

ヘアピンをカウンターに持っていき、紙の袋に入れてもらってお金を払って店を出る。

「ハリム、ありがと。お昼食べよ?」

「うん。」

もうそんな時間か…

二人でカフェに入りサンドイッチを食べる。会計はロズベルトに言われた通り僕が支払う。

「ハリム、いろいろ払ってもらってごめんね。」

「いいよ。ロズベルトに女の子に払わせちゃダメって言われてるから。」

「ロズベルトって一緒にいた男の人だよね?お父さん?」

「お父さんじゃないけど、僕が生まれたときからずっと一緒にいるからパパみたいなもんかな。」

ロズベルトがパパか…イヤじゃないな。

「ふーん。ねぇ、ハリム、さっきのヘアピン付けて。」

「うん、いいよ。」

二人で人の少ない路地裏に行き、ラビアの髪にヘアピンを付ける。

「どう?似合う?きゃっ。」

ヘアピンを付けて微笑むラビアを見ていると抑えきれなくなってラビアを抱き締めてしまった。

「ラビア、大好き。」

「わたしも。」

ラビアは始めは驚いていたが、僕の背中に手を回してくれた。なんか幸せだ。


その幸せは長くは続かなかった。

「おい、見ろ。ラビアがちっこいのと抱き合ってるぞ。」

そんな声が聞こえたので、慌てて離れる。路地の奥から3人の男の子供が近付いてきた。ラビアと同じ年くらいかな。

「なによ、邪魔しないでよ!」

ラビアは男の子供たちに言う。知り合いみたいだ。

「そんなちっこいのと遊んでないで、オレたちと遊ぼうぜ。」

「イヤよ。あなたたちと遊んでてもつまんないもん。行こ。」

ラビアが僕の手を引いて男の子供たちがいる方と反対側に歩き出す。男の子供たちが走って近付いてくる。

「おい、待てよ。」

「いたっ。」

「わっ。」

男の子供のひとりがラビアの肩を乱暴に掴んだ。ラビアは痛みで顔をしかめる。それを見た僕は咄嗟にその子供を突飛ばした。男の子は飛んでいって壁にぶつかった。やばっ。冷や汗が出る。殺してないよね?

「いってぇ。」

飛んだ子供が起き上がる。良かった。でもまずい。ちょっと殴っただけで殺しちゃう。

「ラビア、逃げよう。」

「え?でも、ハリム強いじゃない?」

「うん。喧嘩になるとたぶん殺しちゃう。」

「え?わかった。」

僕はラビアの手を引いて走る。

「待て!」

男の子供たちが追い掛けてくる。どんどん差が縮まる。ラビア走るの遅い。

「きゃっ。」

僕はラビアをお姫様抱っこに抱えて走る。うん。これなら逃げ切れるかな。

「なんか、物語のお姫様なったみたい。」

腕の中でラビアが言う。ラビアは僕のお姫様だからね。


「あ、ここ…」

少し走るとボロボロの家がたくさんある場所に出た。まだ男の子たちは追い掛けてきている。しつこい。

「ハリム、ここは不味い。」

「え?」

走るのに必死だった。ここはスラム街だ。慌てて立ち止まる。

「はぁはぁ、やっと観念したか。」

男の子たちも立ち止まる。ここがどこか分かってないのかな?

「ちょっと待って。ちょっと休戦。」

僕は男の子たちに言う。

「いや、待たねぇ。さんざん走りやがって。」

「そうそう待てないねぇ…ひっひっひっ。」

男の子たちと話していると、ボロい服を着た男たちに囲まれていた。

「おやおや、こんなところに身なりのいい子供が5人も。そっちのお嬢さんはデミレル商会とこのかな?」

「これはいい身代金が取れるぜ。」

男たちはナイフや木の棒を手に囲いを縮めてくる。

「おい、逃げるぞ。」

男の子たちは逃げようとするが捕まってしまった。

「へへっ。逃がさねぇよ。」

男が捕まえた男の子にナイフを突き付ける。

「ひー。」

男の子のズボンがベタベタだ。

「ハリム、助けてあげて。」

ラビアが僕の服を掴みながら言う。うん、こいつらなら、力加減間違えても大丈夫だな。

「殺しちゃってもいいのかな?」

「向こうが先に武器出してきたんだから、たぶん大丈夫。」

「わかった。ラビアは目を閉じててね。」

「うん。」

ラビアが目を瞑るのを確認して、剣を鞘から抜く。

「お、1番ちっこいのがやる気だぞ。」

なんか言ってるが気にしない。まずは男の子を捕まえているやつ。一瞬で距離詰めナイフ持っている腕を切り落とす。他の二人を捕まえているやつの足も切る。

「うげぇ。」

そんな声が聞こえて3人は解放された。

「3人固まってろ。いいな。」

3人はうんうんと頷いて、身を寄せ合う。

「そのガキ、けっこうやるぞ!一斉にかかれ!」

5人の男が木の棒で殴り掛かってきたので、避けながら5人の首を飛ばす。

「女の子だ!女の子を人質に取れ!」

そんな声が聞こえたので、目を閉じたまま立っているラビアの近くに戻り、近付いてくる男の首を飛ばす。

「ひー。このガキ、強すぎる。逃げろ!」

男たちは逃げて行った。ふぅ。何人か殺しちゃったな。

「ハリム?終わったの?」

ラビアが目を閉じたまま聞いてくる。

「うん。でもまだ目を開けちゃダメだよ。」

「うん。」

死体や切った腕が転がってるからな。

「ラビア。手を引っ張るからね。」

「うん。」

ラビアの手を引き、移動する。

「あの、助かったよ。ありがとな。」

男の子たちも立ち上がって僕のところに来た。

「助けたのは、ラビア助けてあげて。って言ったから。お礼ならラビアにしてあげて。」

「おう。オレはジン。お前強ぇな。ボスって呼ばせてくれ。」

男の子の中の1番身体の大きいのが自己紹介してきた。

「僕はハリム。なんだよ、ボスって。」

「いいじゃんいいじゃん。すげぇカッコ良かったよ。」

「えー。イヤだよ。ダサい。」

「なぁに、みんなで楽しそうに。私まだ目を閉じてるんだけど?」

ラビアが目を閉じたまま、駄々を捏ねる。

「ははは。」

「はははっ。」

「何よう。もう目を開けていいの?」

「ダメ。もう少し。」

路地裏に子供たちの笑い声が木霊したんだ。

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