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初めての殺人

「はぁはぁはぁ。」

「ハリム!こんな調子だと日暮れまでに町に着かないよ。ペースあげな!」

僕は今後ろ向きで走っている。ママもロズベルトも後ろ向き。前の村までは丸一日普通に走った。大変だったけどなんとかなった。今回は距離が短いっことで後ろ向きで走れって言われた。これめっちゃしんどいし、前見えないから

「あっ!」

また石に蹴躓いた。もう5回目。頭打った。いってー。

「ハリム!もっと足を上げないから転ぶんだ。ほら、早く立て!日が暮れるぞ!」

「うん。」

僕はまた立ち上がって後ろ向きに走り出す。一応街道を走ってるから、木とかにぶつかることがないだけましかな。なんでこの二人はこんなに余裕なんだろ?ロズベルトなんて頭の後ろで手を組んで口笛なんか吹いてるし。くそー。


日が暮れる前になんとか町に到着した。

「はい、あたしらのギルドカードね。この子の分の税はいくら?」

「子供は半銀貨1枚ね。」

「はいよ。」

ママが門の前に立っている人に僕の分の税金を払う。

「ママ、どうして僕、冒険者ギルドに登録しないの?」

登録すればただになる。僕の年齢でも登録出来るって聞いた。

「そりゃ、お前、今登録しても階級上がるのはあたしらのお陰になるだろう?実力差がありすぎるからな。ハリムがあたしらに追い付くか、あたしら以外とパーティー組んで依頼受けるようになったら自分で登録しな。」

「そういうことか。」

「そういうこと。頑張りな。」

「うん!」

「よし、冒険者ギルドで酒と飯だ!」

この町の冒険者ギルドに移動する。


冒険者ギルドに入ると、冒険者たちがじろじろ見てくる。ママが見回すとみんな、さっと目を反らせた。

「はぁ、クラベラクトじゃ、もう喧嘩売ってくるやつはいねぇか。」

「まぁあれだけハリバンダムで大立回りしたからな。オレも殴られたが。」

「ははっ。ロズベルトくらいだったからな。まともに殴り合えたのは。」

「お腹大きかったくせによくやるよな。」

ハリバンダムに着いたころ、そんなことがあったのか。ロズベルトとはもっと長いのかと思ってたけど、ハリバンダムで出会ったのか。

3人で待ち合い場所に座り、夕食を取る。

「どうする?1日くらい休むか?」

ロズベルトが言う。

「ハリムなら大丈夫だろ。あたしの息子だ。明日一気に国境を越えよう。」

「じゃあ、次はマダルト王国だな。」

「マダルト王国は大きいんだっけ?」

「クラベラクトと一緒くらいかな。」

「じゃあ、ひとりくらいいいアーチャーか魔導師がいるかもな。」

「ああ。」

マダルト王国…どんな国だろう。どんな仲間が加わるのだろう。楽しみだ。僕は夕食のお肉を食べながら新たな出会いに思いを馳せた。

夜は宿屋に泊まる。ロズベルトは別の部屋。

「ハリム、おいで。」

ベッドの中で酒臭いママに抱き締められる。すごく落ち着く。

「ここまでよく頑張ったね。魔物を狩るのも上手になったよ。」

「でも、まだ草食の魔物しか狩ってないよ。」

「草食だって舐めちゃいけないさ。それで命を落とす冒険者はたくさんいるんだ。国境付近はどこも森が多い。いろんなのが出るから気を抜いちゃダメだよ。」

「うん。」

僕はママの大きな胸に顔を埋める。

「よし、いい子だ。ゆっくりお休み。」

ママが頭を撫でてくれる。大好きなママと旅出来るなんて最高だ。早く足を引っ張らないようになりたいな。そんなことを考えながら、夢の世界に旅立ったんだ。


「よし、出発だ。森までは走るよ!」

「「おう!」」

3人で森まで走る。

三刻ほどで森に到着した。

「国境はこの森の中?」

「ああ、地図ではそうなってるな。」

「森の中の道はけっこう広そうだな。」

「クラベラクトとマダルトの間で商取引があるんだろ。」

「ハリム!森から何が飛び出してくるかわからんから気を抜くなよ。」

「うん!」

森の中の街道を進む。少し歩くと3台の馬車が停まっているのが見えた。外で誰かが戦ってる?

「商隊が盗賊に襲われてるな。」

ロズベルトが言う。盗賊か。

「よし、助けるよ。ハリムいけるか?」

「うん、大丈夫。」

「魔物じゃなくて人だが躊躇するなよ。胸は防具着けてることが多いから首だ。首を狙え。」

「うん、分かった。」

「よし、行くぞ。」

3人で馬車に向かって走る。

「A級冒険者のメイヨウだ!助太刀する。」

「助かる!」

ママが馬車の護衛らしき男性に声を掛けると、男性は助太刀を了承してくれた。よし、やるぞっ。僕は近くで弓を構えていた小汚ない男に斬りかかる。首だ。

「うわっ。」

男の首が飛んだ。よし、次!今度は槍を持った男だ。槍は攻撃の間合いが広いから気をつけろって聞いた。慎重に。男が槍を突いてくる。遅い。槍をかわして懐へ潜り込み腕を切りつける。

「ぐぇ。」

男が槍を落とす。もらいっ!首目掛けて剣を走らせる。

「ハリム!ストップ!そこまでだ。」

ママの声に剣を男の首の直前で止めた。

「ハリム、なかなか良かったよ。そいつは生かしておこう。」

「うん。分かった。」

「た、助かった…」

男は股間を濡らし悪臭を放ちながらその場にへたれ込んだ。周りを見れば、盗賊はママとロズベルトに制圧され終えていた。

さすが、ママとロズベルトは仕事が早いな。僕が2人倒す間に10人以上倒しちゃったよ。

剣の血糊を落とし鞘に納めようとする。あれ?上手く入らない。時間を掛けて鞘に納める。

「ハリム。大丈夫か?」

ママが心配そうに近付いて来てくれた。何を心配してるんだろう?

「ん?何が?大丈夫だよ。」

「だって、ハリム、お前震えてる。気付いてないのか?」

自分の手をじっと見る。小刻みに震えていた。だからなかなか鞘に納まらなかったのか。うっ、なんか気持ち悪い…

「おぇーーー。」

僕はその場で嘔吐した。ママが背中を擦ってくれる。

「ハリムくんは人を殺すのは初めてだもんな。」

ロズベルトも近付いてきた。

「ああ、こればっかりは慣れるしかないな。」

「ああ、初めのころはこうなるらしいな。あたしはなったことないけど。」

「まぁメイヨウはな…」

「なんだよっ。」

「オレなんか、まだたまに吐くぜ。気にするな。」

ロズベルトでもこうなるんだ。

「うん。ありがとう。」

3人で話していると、小太りの中年の男が僕たちに近付いてくるのが見えた。

「どうもこのたびはありがとうございます。私は商人のベラトと申します。護衛の者に聞きましたが、なんでも高名な冒険者だとか。」

「ああ、あたしはA級冒険者のメイヨウだ。人はあたしを『金獅子』なんて呼ぶぞ。こっちは冒険者仲間のロズベルト。こっちは自慢の息子、ハリムだ。」

商人の挨拶にママが答える。ママの二つ名はいつ聞いてもカッコいいな。僕も二つ名で呼ばれるようになりたい。

「ほぅ、『金獅子』ですか。聞いたことあります。息子さんも小さいのにお強いですな。馬車の中から見ておりました。」

「はははっ、そうだろそうだろ。」

「あの、メイヨウさん。お願いなのですが、私たちの目的地、レジンドまで護衛して頂けないでしょうか?私の護衛は5人怪我をしてしまいまして。」

「レジンドってマダルト王国内?大きな町?」

「レジンドはマダルトの国境付近では1番大きな町です。」

「おお、いいね。目的地は同じだ。構わないよ。報酬と飯はよろしくな。」

「ええ、それはもう。馬車の屋根か御者席に乗られますか?」

「いや、あたしらは走って追い掛けるよ。馬車の速度なんて遅すぎるくらいだ。」

「いいのですか?息子さんも?」

「ああ、もちろん。」

こうして僕たちはベラトさんの商隊の護衛につくことになったんだ。

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