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英雄王の祭典  作者: 天音ヒカル
第1部 プロローグ
3/8

第2話 希望

新年明けましておめでとうございます

今年もよろしくお願いします

 この世界にはレベルと技能(スキル)という概念が存在する

 人間にのみに該当するそれは一般的にレベルが高ければ高いほど強者であるとされている

 レベルは物を作ったり、本を読んで知識をつけたりすることで得られる経験から上がる

 その中でも、魔物の討伐や模擬戦などといった死の危険性の高いものほどレベルが上がりやすい

 レベルは強さの1つの指標であり、高ければ高いほど強いとされている

 もちろん、一概にそうとは決めつけられない

 例えば獣族と人族共にレベルが等しい場合、魔物の方が基本的には強いとされている

 これは獣族の方が肉体的に優れているためであると考えられている

 人間同士でもそれは当てはまっていて、人族は器用貧乏、エルフは魔法が得意であったりと種族ごとに特徴があるので相性も存在するだろう

 これらのことからもレベルと強さはイコールではないことがこれらのことから分かる

 ほかにも技能(スキル)の有無が勝敗を分けることもある

 技能(スキル)とはさまざまな恩恵を人や魔物にもたらすものである

 身体能力を上げたり、魔法を使ったり、剣技という技を扱うことが出来るようになったりする

 このレベルと技能(スキル)は現在も発現した経緯などが分かっておらず、学者たちの最大の研究テーマの1つとなっている


 


 


 


 


 


 

 鳥の囀ずる音で意識が覚醒していく

 硬いものの上で眠っていたのだろうか、腰がかなり痛い

 このまま横になっているとこの痛みがより増すと思い体を起こしながら目を開けた


 蔦が木に絡み、草がおおいしげっていて、まるで昼でも漆のように黒かった森だったが、この場所は少し変わっていた

 木々が間隔を開けて生えていて、空から光が地面に降り注いでいる

 じめじめした感じはなくなり、森の澄んだ空気と木々の豊かな香りが胸一杯に広がる

 木の間から指す木漏れ日が体を包みんでいて、ポカポカと体の芯から暖まっていく


「綺麗な場所だ」


 僕の「家」も確かに綺麗だったが、無機質で人工的に作られたものではなく、自然が作り出した幻想的な空間に僕は魅了されていた


 急に腹の虫が鳴り、自分がお腹が減っていることに気づいた


「(あれ?…僕はドクニシンを食べて死にかけていたんじゃ…)」


 そのことから空腹に負けて僕は猛毒キノコのドクニシンを食べてしまったのを思い出した

 究極技能(アルティメットスキル)の星の記憶で自身のステータスを見ても、毒状態にはなっていない

 そもそも食べてから二時間以内に死ぬので、今体に異変がないのがおかしい

 ふと、あのときの出来事は夢なのではないかと思ったが、心臓をえぐられるような痛みと頭が割れるような頭痛は夢では再現できないはずである

 加えて、星の記憶で得た異世界の知識がきちんと頭に残っている

 星の記憶は自身の技能(スキル)の詳細も知れるため、このスキルを持っていること事態知らなかった僕でも使い方を理解できた


「あの綺麗な人が…助けてくれたのかな…」


 のこる疑問は自身が生きている理由

 ドクニシンは3級以上の解毒ポーションか高位の回復魔法でしか解毒できないはずであった

 彼女が解毒する術を持っていたのか、誰かに助けをお願いしたのかは分からないが、きっと彼女が僕の命を救ってくれたのだろう


 ちなみに今の僕のステータスは


 職業 魔物使い

 レベル 53

 技能(スキル)

 契約魔法

 星の記憶

 XXXXX


 となっている

 レベルが極端に高いのは今まで書斎で本で読んでいたり剣の修行をしていたのに加えて、つい先日魔物が蔓延る森に放り出され死にかけた経験があったからだろう

「契約魔法」というのは魔物使い専用の固有技能(ユニークスキル)である

 対象の魔物がこちらの仲間になる意思がある場合、もしくはその魔物を倒したり認められた場合に限り、この魔法を使用することで魔物を配下に置くことが出来る

 契約時には最大魔力の数パーセントを減少させるため、実際に消費する魔力はゼロとなる

 魔物は人間の体内の「魔力の器」の中に入り、一生を共に過ごす

 魔物使いは魔物を体内の魔力の器から召喚し使役することが出来るが、契約している限り(・・・・・・・・)魔力の最大値は減少したままとなる

 ここでいう魔力の器とは、人間や魔族、魔物といった全ての生物が持っているもので、ここに魔法や剣技を使うための魔力を溜めている

 この魔力は魔力回復用のポーションを飲んで回復させるか、睡眠や食事により大気の魔力を体に取り込むことで回復していく

 魔物使いは魔物を使役することを目的としているため魔術師よりも最大魔力が高く、魔力が回復する時間も多くかかる

 ステータスに表示されない技能(スキル)があったがこれはおそらく星の記憶と同等以上のレアリティなのか、ろしくは魔物を契約し使役した場合に発現するような気がした

 星の記憶は対象の名前、技能(スキル)の効果も調べられるため、それが出来ないということは、この文字化けしたスキルは究極技能(アルティメットスキル)なんだろう


 ふと、どこかで草木が揺れ動く音がした


「…っ!」


 同時に足音も聞こえてきて、何かしらの生物が歩いてきてるのだと想像できた

 レベルは確かに上がったが、僕は実戦を積んだことはない

 ましては剣がないこの状況では戦えるはずもなく、魔物であれば再度死を覚悟するしかないだろう


 だが、繁みから現れたのは人間であった

 かなり彫りの深く目付きが非常に悪いが、年齢は僕の一回り上の20代前半だろう

 身長が180センチ程度で体はかなりがたいがよく、背中にはその身長を越える大剣を背負っている

 僕の顔を見て、その恐怖を感じさせるような顔に笑みを浮かべながら彼は僕に近づいてきた


「よう、具合はどうだ?」


 その言葉から彼が敵ではないと判断した僕はようやく肩の力を抜くことができた


「少し腰に痛みはありますが、大丈夫です。あなたが僕を助けてくださったんですか?」


「ん?ああ、俺はついさっきお前が倒れているのを見つけてな、拠点に運ぼうとしたんだが、頭を打ってるかもしれないと思って動かすのはやめておいたんだ。とりあえず、急いで冷やすためのタオルなんかを持ってきたんだが、無駄だったみたいだな。」


 そういいつつ彼は僕に腹がすいているかもしれないからと持ってきた干肉とドライフルーツを与えてくれた

 正直、このような食べ物は食べたことがなかったが、久しぶりに食べるご飯は大変おいしく、少しあまじょっぱかった


「まあ、その食いっぷりを見てる限り体は大丈夫そうだな。俺はアデル、お前は?何でこんなとこにいたんだ?」


 家名を名乗ってないところから考えると貴族ではないようだ


「僕は…カイトです。」


 この場所が僕のいた国の近くであるかどうかは分からなかったが、本名を名乗れば僕の正体がばれてしまうと考えた僕はとっさに偽名を使った


「そして、僕は先日10歳になりまして職業の啓示を受けに行ったんですが、僕は魔物使いだったんです。そのことを知った国王が僕を空間移動の魔道具を使ってこの森に転移させたんです、、」


 名前を偽名で使うこと以上に自分が魔物使いであると明かすことに躊躇したが、もしも僕の職業が他人にばれてしまったらアデルに多大な迷惑をかけてしまう


「助けてくれてありがとうございます。ですが、これ以上僕に関わるのは……」


 魔物使いは人権が存在しない

 僕は男であるため、どんなに有名な家の出身であっても奴隷に落とされ、死ぬまで強制労働をさせられるだろう

 もしくは国民の前で傷つけられ、死んだ方がましだと思うような拷問を受けて処刑されるだろう

 そんな僕と関わるのは百害あって一利無し

 少しの食事と一時の安らぎを与えてくれたアデルの優しさに甘えるわけにはいかないのだ


「そうか、魔物使いだったのか…」


 だが、アデルは後ろめたそうな、悲しそうな表情をして僕にこう語りかけたのだ


「俺も…魔物使いだ……」


 今日この出会いを僕は一生忘れることはないだろう


 


 


 

 アデルの告白を聞いて、頭が真っ白になった僕はきがついたら彼の拠点に訪れていた

 現代に伝わる石造りの家ではなく、木を組んで作った、質素な見た目の家であった

 彼は魔物使いであるため、普通の町では生活できないため、この森のなかで自給自足の生活を送っていたようだ

 彼の家に行くとすぐに腰を下ろし腹をわって話し合った

 僕は魔物使いになってからの今日までのことを話した

 アデルの話は大変興味深かった


 彼はもともと農家の生まれだったらしい

 僕と同じように10歳の誕生日に職業の啓示を受けたが、魔物使いと宣告されてしまった

 アデルは怖くなり逃げ出した先にあったのはこの森であった

 当時この森では、近くの人族の国の元王国騎士団の団長が隠居していて、その人に偶然拾われたらしい

 この家も元々はその王国騎士団の団長さんのものだったらしい

 その方は、魔物使いであったアデルを快く受け入れ、彼に剣術や生きる術を教えていった

 アデルが15の時にその方は老衰で亡くなってしまい、恩返しが出来なかったことを悔やんでいるらしい

 そしてそこから現在まで1人で暮らしていて、今に至るらしい


「さて、次は俺たち魔物使いが生きるためにはどうしたらいいかについて話そうか」


 アデルが言うには僕には2つの選択肢があるらしい


 1つは冒険者になること

 依頼を受けて魔物の討伐や素材の採集などをこなしてその日の生きるためのお金を稼ぐということだ

 冒険者ギルドより発行されるギルドカードは身分証明書にもなり、町に入るのに税金を取られなくてすむ

 しかし、ギルドに登録するには職業、技能(スキル)、名前を調べられてしまうので冒険者になるのは難しくなる

 そこで登場するのは「隠匿」という技能(スキル)である

 隠匿は魔道具による検査や鑑定魔法をかけられたとき、虚偽のステータスを表示することが可能になる

 もちろん、僕の星の記憶のように高位の鑑定魔法は欺くことは出来ないが、ギルド程度が所有する魔道具を騙すことは出来る

 しかし、この隠匿の技能(スキル)は現在でも取得方法は判明されておらず、偶然得るのを待つしかないのだ


 もう1つはアデルのように自給自足の生活をすることである

 人目のつかないところで農業を行い作物を育て、魚をとり、魔物や動物の肉を食べて暮らしていく

 魔物の肉や素材は冒険者ではなくても売れるため、たまに町に降りて必要なものを買うらしい

 この場合、魔物が蔓延る場所での生活を余儀なくされる代わりに、自由で安全に暮らすことができる


 だが、どちらの方法をとるにしても絶対に犯罪行為は行ってはならない

 殺人や強盗はもちろん、恐喝なども含まれる

 これを行うと、国の衛兵という警察のような部隊に拘束されてしまう

 その際、隠匿の技能(スキル)も通用しない魔道具でステータスを調べられてしまう

 魔物使いであることがばれてしまったら、僕たちは奴隷に落とされ強制労働をさせられた後、処刑されてしまう


「まあ、少なくとも隠匿を会得するまでは俺のように自給自足の生活だろうな。心配しなくても、お前が1人で暮らせるようになるまで俺が面倒見てやるよ」


 その一言は僕にとって救いの言葉であった

 幼い頃からの夢であった世界を見るということが僕にも出来る可能性がまだ残っている

 アデルは僕に生きる術を教えてくれる

 この2つが僕に生きる希望を与えてくれたのだ


「でも、いいんですか?少なからず迷惑になるのでは…」


「かまわねえよ。さっきも話したが、俺は師匠に恩を返すことが出来なかったんだ。ここでお前を助けないと師匠が化けて出てくるわ。後、今日なら俺のことは師匠と呼べ、カイト!」


 アデルは今日見たなかで最高の笑顔を浮かべながら僕にその手を差し出してくれた


「分かりました、アデル師匠!」


 僕はそのゴツゴツとしているが暖かい手を強く握り返した


 


 


 


 

 あれから早いもので2年と少したった

 アデルには本当に様々なことを教わった


 寒い日をしのぐために火を起こす方法を

 (モリ)という槍のような道具を使って魚をとる方法を

 模擬戦を通じて、剣の扱い方を上手くさせる方法を

 危険な魔物を倒すための方法を

 動物の捕まえ、それを解体する方法を


 でも、僕もアデルには星の記憶で読み取った「ハンバーグ」なるものの作り方も教えてあげたりもした


 本当にこの2年間は色々あった

 寝ぼけてアデルのことを兄さんと呼んでしまったのはひどい羞恥心を覚えた

 確かにこんな兄が欲しいとは感じていたが口に出るとは思っていなかったのである

 他にはアデルが実は僕と会ったとき18歳だったと聞いたときはかなりショックだった

 20代後半にしか見えないといったらその日の模擬戦はボコボコにされてしまった

 そんな中でも特に、アデルの夢については今でも鮮明に覚えている

 彼は出会って1年たつ少し前に、かなり酒に酔ったときがあった

 その時に彼は将来、この大陸で開かれる剣の武闘会で優勝して、その優勝者にのみ授けられる「剣聖」の称号を得ることであるらしい

 ここでいう剣聖とは1000年前の人魔大戦中に現れた勇者のパーティーメンバーの1人である剣士の職業でもある

 後にも先にも彼ほどの剣士は生まれておらず、剣聖の職業を得るものがいないため、この大陸の生まれであった彼を称えることを名目に、数年に一度開かれる武闘会の優勝者に称号として与える

 魔物使いであるアデルが出場するためには隠匿の技能(スキル)かそれよりも上位の技能(スキル)を得なくてはならないが、彼ならばいつかきっとその夢を果たすことが出来るだろう


 だが、そんな幸せな日々は唐突に終わりを告げ、『災厄』が僕らを襲ったのだ

来週は技能(スキル)についての説明をして、1章プロローグの最後とさせていただきます

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