第9話 右の頬を殺されたら
俺は目が覚めた瞬間、それを確認したノアキ族に首吊り台から蹴り落とされた。
――バンジージャンプ。それは成人の儀式として名高いものではあるが、紐の長さは地面すれすれで止まるようにはなっている。ノアキ族の成人の儀式、首吊り台は、20m程の高さを誇りながら、残念な事に紐の長さは10m程足りない。
となればどうなるか?
簡単な事、それは2つの分岐を迎える。紐が切れなければぶら下がって首を吊るようにして死ぬ。紐が切れれば転落して死ぬ。これを上手く切り抜けられるのが成人の証となる。
落ち行くふわっとした浮遊感の中、必死で綱を腕に巻き付ける。
――ギチチッ!バキィ!
衝撃。腕の骨の折れる音と共に紐が切れる。直後再びの浮遊感の後に地面に激突した。
ノアキ族の成人は15才。恐らくその平均体重を越えていたから紐が切れたのだろう。腕に絡ませなければ、首に巻かれた紐が首を切断するか首の骨が折れて死んでいただろう。偶然か必然か、儀式に成功する事が出来た。
……。
生きてた。
腕が折れたのは聞いた。だが恐らく着地の衝撃で膝と肩もやられてるだろう……。
目を開けると、ノアキ族の少女が心配そうにこちらを覗き込んでる。
「イタイカ?タスケルカ?イタイノタスケルカ?」
少女の手にMPが集まるのを感じる。ああ、そうか癒しの魔法がある世界だもんな。
「頼むよ」
少女の手が折れた手の逆の手を掴んで逆十字を始める。肩にあたるもりまん。伸びる靭帯。ボギリと肩の外れる音が聞こえる。
少女は物足りなかったのか、立ち上がった後に俺の腕を固定して膝蹴りを入れる。ポッキリと上腕の骨が折れる。
目をぱちくりとさせていると、少女が笑顔で呟く。
「イタイノ、ナオッタカ?」
俺の意識は旅立った。