第8話 首吊り台に行こう!
「コイツ、族長ノ所ツレテクマエニ腕位トッテオクカ」
「あの、物騒な話やめて貰えます?」
俺は特に腕をもがれる事なく族長の家へと通された。
「コイツ、ツカマエテキタ。アヤシイ」
「コイツ、話通ジル。不思議」
あ、そう言えば末端連中は脳筋設定あったな。それなら切り抜けられるかも……。
そんな希望を切り裂く様に、ぬるりと族長が現れる。
「やぁ、異民族のクソよ、ようこそノアキ族のテントへ」
族長と名乗る男は隻眼隻腕隻耳の鼻欠損の眼光鋭い男だった。顔や胸から腰に至るまで酷い火傷の跡に皮膚を埋め尽くす数千の傷痕。片手には1畳位の幅を持つ両手斧が握られている。
斧を持つ手をスッと上げると、周りのノアキ族はテントの外へと姿を消した。
「早速だが夕飯になって貰いたいのだが構わないかね?口答えしたら殺す。拒否しても殺す」
「あの、すいません。ノアキ族は一族同士は決闘以外では殺し合わないし、食べないんですよね?」
「ほう、疑問で返すか。と言うかノアキの言葉も通じるとは大したものだな。いかにも、ノアキ族は決闘以外では殺し合わない」
「言葉は通じるよ、一応親だからね?」
「親、はは、なるほど。我がノアキ族にペールオレンジのはぐれが居ると言う事か」
「あー、そうです。あなたも他の方々と比べると色素が薄いですよね。ジツシ・キテス族長」
ジツシ・キテス族長は日焼けこそしているが、他のノアキ族に比べて黒人と言うより赤人と言った皮膚の色をしている。
「ふむ、我が名を知るか。はぐれと言うのも嘘ではないのか」
「そうです、俺は訳あって異世界に住んでいた。あなた方とは親子関係がある。つまり、俺もノアキ族と言える。その特殊能力【おはよう嘘つき】で私を見てください。嘘をついていない事がわかりますね?」
俺は嘘をついていない。話の内容はかなり怪しいが、ジツシ・キテス族長の孵化【おはよう嘘つき】は嘘を見破る能力。この言い回しなら多分いけるはずだ。
「不思議だが、そう言う事もあるのだろうな。貴様がノアキ族か。信じよう。但し、【おはよう嘘つき】の事は親兄弟も知らない筈だが、何処でそれを?」
あ、しまった。
「まぁいい、ゆっくりと聞き出すとしよう。時間はたっぷりあるからな」
「そ、そう?じゃあ命は助けてくれます?」
「当然だ、同胞だからな。但し、弱いノアキ族は存在しない。鍛えさせて貰うぞ」
「ぁ」
「おい、コイツは仲間だ!同胞だ!首吊り台に連れてけ!」
俺はその言葉を聞いた瞬間、ジツシ・キテスの爪先が顎の下を通過するのを確認した。但しそれを確認出来たのは首吊り台と呼ばれるやぐらの上です巻きにされている状態だった。