第7話 ノアキ族に食われる。
黒い顔に赤と白のペイント。黒の螺髪に細マッチョ。頭に鷲の羽飾り。
……。
頭にとある可能性が浮かび上がる。
警戒しながら近付いてくる10人程度の男達に声を掛けた。
「ノアキ族ですか?」
帰って来た答えは……。
「オレタチ、ノアキ。オマエコロシテクウ」
最悪の答えだった。ノアキ族と言う単語。片言の日本語が通じる事。この方達は俺の書いている小説の裏設定武闘派部族。未開の地に住みながら高いフィジカル他独自の力を有して他の支配を受け付けない連中だ。
こいつら、確か他の部族の心臓を食う。
アカン、死んだ。
ノアキ族にグレイタイプ宇宙人の様に連れ去られる中で頭を回転させる。
えーっと、ノアキ族……。ノアキ族は他の部族を食う。ノアキは数百人程度の集落に住んでいて、地域密着型の原始的な生活を送りつつ、時々遠征して人狩りなんかして強者を求める事がある。
……これ死んだな。
一応世界観的には『勇者のゆりかご』の異世界だから、古代から中世に掛けての文明があるが、ノアキ族のいる場所は本編の場所とは大陸が違うわ。本編とはまるっきり違う。2,000kmは離れてる……か。
魔法はあるが、使用制限やコストを考えると素手で殴るとか石を投げる方が強い。……魔法か、特殊能力か。調べてみるか。
MP……体内に点在してる光の粒……は1・2・3・4……5粒。こりゃ、魔法適正0に近いな。MP5じゃあ火の粉位しか飛ばねぇ。
特殊能力……卵は……頭を打って発現するんだったか。
そりゃ!
隣のノアキ族の7つに割れた腹筋に頭を叩きつけると、俺の頭の中の殻が破れた音がした。
俺の頭の中に日本語である文章が浮かんでくる。
「おめでとうございます。卵は異世界からの転移者・転生者に与えられる特典です。卵は割れる事によって孵化となり力を発揮します。あなたの能力は『内臓強化』です。常態の1.5倍程内臓の働きが強化されます。おめでとうございました」
……オワタ。
食われる。
遠くに煙がたなびくのを確認し、やがてカラフルな革のテントが見えてきた。