第5話 草むらの戦い。
――敵は縦に伸びるタイプの草。
なれば、これが効果的だろう。
ガサガサ。
「よっこらせ」
ドサドサ。
「よっこらせ」
ドサドサ……。
「こんなもんで良いかな?」
俺は草むらの草を石斧を使って根本から押し倒した。その上に土やら石やらを乗せて行く。その上からガサガサと音を立てて草を押し倒して圧し固めていく。
「せめて靴を履いていればこんな事をせずとも大丈夫だったんだがな……。まぁ全裸にならなかっただけでもマシかな」
……。
「ふぅ」
――草の海。
“草海”とでも言うべき数十mの草むらを、縦断する様に道を作っていく。
その時々にこれは無駄な作業かと思う。しかし、蛇やら毒の虫やら毛虫がいたら怖い。それは殆んど裸足ゆえに増幅された恐怖でもあるのだが、従わざるを得ない行動だった。
喉が乾けば、木の虚の鎖骨の窪みの様な場所に溜まる水を舐めた。葉に付いた朝露みたいなものも舐めた。
そうして――。
道が6~7m程出来た所で飽きた。
――いい加減餓えてきた。
――もう死ぬかもしれない。
そう思った瞬間。7m程の道を助走してハイジャンプ。草むらの上をガサガサと歩いていった。
“草海”?――何て事ないじゃないか。
俺は足の裏を出血しない位切った程度の損害で草むらを抜けた。
しかし、トンネルを抜けた先はまたトンネル。
草むらを抜けた先にあったのは、またくさむらだった。
少し変わった所があるのならば、うっすらと水の音が聞こえる事だった。
日はまだ登りきってすらいない。これは、辿り着ける。
四方をほぼ草と灌木に囲まれた浮き島のような場所から、音のする方向に向かってガサガサと進む。
――すると、2~3分程で土のある地面へと辿り着く。