第4話 遠征のゴブリン
「さてと、朝日におはよう」
俺は朝の清浄な空気に触発され、社会の窓を開いて相棒に新鮮な空気を吸わせる。31年間辛い日も楽しい時も一緒に過ごした相棒だ。大切にしないとな。
ジョビジョバーッ。
「転移スイッチが排泄って事はないよな。はぁ」
腰のベルトの左右に石斧と石槌をぶら下げて探索を開始する。
朝の密林はしとしとと濡れているような湿気があり、ちょくちょく空気を切り裂く高い鳥の鳴き声が遠くに聞こえる。獣の声はまだ聞いていないし、毒蛇も毒蜘蛛も見ていない。
見付けた虫はカメムシみたいな奴と蛾、蜻蛉、蟻、米衝き虫、団子虫、……こんなもんか。
あ、ムカデ!
20cm程のムカデを見付けた。潰そう。
ムカデは刺される可能性があるし、キモいので潰しておこう。
俺は石斧と石槌を構えて、動かないムカデの胴体を轢断し、手前側の身体を石槌で潰す。潰してない方の身体も再度振りかぶった槌にて潰す。
……。
特に数値上の経験値を得た感じはない。ゲームの世界に転移したという訳ではないな。転移……転生?
そう言えば……。
「はい死んだ」
トイレの中で聞いたあの一言。俺は死んだのか?
俺は四肢に意識を巡らせる。頭の中や思考に問題がないかチェックする。
……特に俺は俺、そのままだな。
「まぁ、考えても仕方無いか」
俺は道なき道を危険を回避しつつ何処かしらの方向に進むも、昨日捜索した範囲を越えて進める道はない。
一番通りやすそうな場所は40cm程の繁みが10m程ある箇所だった。
「本日のミッションはこの草むらの突破。だな……」
幾億の蠢く虫を包括する緑の基地を無傷で攻略する手段は……。
あれしかないか。