第1話 ウォシュレット
「はい死にました」
「は?」
狭い空間に反響する低い声、それに対する俺の間抜けな声。
俺の転生ライフはここから始まった。
――トイレ。そのドアを開けると密林だった。
気づいた頃には背後にトイレのドアはない。着の身着のままボタンのとれた長袖に膝の破けたズボン。布製のベルト。75kgの身体を支える足は裸足だった。
思考を纏めるために、視線による情報収集と思考の整理を行う。ある程度落ち着いたら優先順位をつけて状況を整理していく。
周囲を見渡すと恐らく20m程の木がある程度の密集して生えており、その隙間には蔦が絡まっており、身体を捩じ込む隙間もない場所もあるが、一応道としては、膝の高さまである草や軽い崖のような段差を進むのであれば通られる位の獣道がある。
「危険度、不明。恐らく高い」
耳を澄まして見ると、鳥の鳴き声が聞こえる。
「肉食獣……またはそれに準ずる何かによる直接的な危険、また遭難による食料水分の欠乏による死亡、または毒虫毒蛇毒草などの接種による死亡の危険あり」
空を見上げると太陽は見えないが薄い明るさを含んでいる。うっすらとした温さの空気を、脳内で検索し経験から1つの推察をひり出す。
「現在日暮れ間近。夜間の密林には命の危険多々あるを認める」
さて、自分は先程まで用を足していて……。
「こうなった理由、不明」
具体的にどう動くか。……まず足だな。裸足は不味い。考えた末の一言を呟こう。
「生き残るための一歩。採集その1」