エピローグ
エピローグ
インフェリス平定戦から一ヵ月後。季節は初秋を迎えた。
龍星は涼夏と共に学校に戻っていた。血で血を洗う、死闘に継ぐ死闘が嘘のように、穏やかな時間が流れていた。青空にはカモメが自由に飛んでいる。
「悲しい戦いだったな……」
誰もいない波打ち際を二人は歩いていた。
「そうですわね……」
涼夏にしてみれば身内を自ら処断したのだ。辛さにおいては龍星の比ではないだろう。
「…………」
涼夏が腕を絡めてきた。私の苦しみを二分して欲しいといわんばかりに……。
「でもよ、俺はあの戦いがあったおかげで大きくなれたと思ってるんだ」
「えっ?」
「俺は……、辛いことがあるといつも目を背けてばかりだった。だから、ブラストさんと戦うときに、涼夏を一人で行かせるなんて、軍師として最低のことをしてしまったんだ。だけど、今は違う、現実の困難に立ち向かっていけるだけの根性が身に付いたと思ってる。そして、一緒に苦難を分かち合える人と出会えたし……」
龍星は涼夏を見つめた。澄ました感じの涼夏が、今はとても女の子らしく見える。
「龍星様……」
涼夏の顔が自然と近づいてくる。そして――、
時が止まった。
「これからも一緒にいような」
「はい!」
海の風が二人を優しく包み込む。そして、二人で共に築く時間はここから始まるのであった。
神秘の蒼鏡 (完)




