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第50回 母との再会。そして和解

 辛い戦いが終わった翌日、涼夏は龍星、ガンファ、ブラストと共に城下町を一望できる所にいた。かつて、龍星がガンファに発破をかけられたあのバルコニーである。

「皆様方、ゼーモン・インフェリスは武将としての最期を遂げられました! 今日よりわたくし、メルフィ・インフェリスがこの国を総括致します。そして、こちらにおわします御三方が、わたくしを盛り立てる下さる、右腕というべき方々です! 今後の国造りは皆様方と共にしていくものとわたくしは信じております! どうか皆様方の気持ちを私に向けて下さいませ!」

「王女様―っ!」

「貴女について行きますーっ!」

「インフェリスの希望の星―っ!」

 涼夏の言葉に民衆達は歓喜の声を次々と上げた。


 その日の晩、龍星は自分に当てられた部屋で涼夏と向き合っていた。涼夏が王女としての決意を固めたように、自分もあることを決意したのだ。

「俺は明日、帰省するよ」

 その言葉を聞いた涼夏が当然のことながら驚いた。

「親元に帰られるのですか?」

「ああ」

 自分を虐待した親元に戻るのだ。他人からすれば本気なのか、と思われても無理ないだろう。

「俺は昨日のゼーモンさんの姿を見て思った。この人を許せなかったものだろうか……ってね。結果として、あの人は武人としての誇りを取り、散っていった。俺の母もゼーモンさんと同じく許しがたいことをした。けど、そこで俺が親を恨んではいけない。全てを許す気持ちがまた大切なんじゃないかって、昨日のゼーモンさんを見て思ったんだ。母も欠点だらけの人間じゃない。一つは長所があるはずだ。そこを理解してあげられるようになりたい。そのためには、俺が母の傍で見ていなければならないんだ。だから、俺は実家に帰るよ」

「そうなのですか……」

 不安げな表情の涼夏だが、龍星の決意に水をさすのは失礼と思ったのだろう。それ以上は何も言ってこなかった。

「また、学校で会おう。何だかんだいってもここでの出来事は俺にとって貴重な経験だったからさ」

「はい!」

 涼夏はいつものようにニコリと微笑んだ。その微笑みは龍星にとって最大の清涼剤だった。


「すまなかったね、龍星……。アンタが出て行ってから虐待に関する本やテレビを見て、アタシはとんでもないことをしてしまったと思ったよ。反省したところで過去の行いが消えるわけじゃないけど、今はとにかく謝らせておくれ。悪かったね……」

 帰宅早々、母が自分に頭を下げてきた。

「いいんだよ、母さん。もう済んだことだ。俺自身、何か夢中になれたことを見つけたしね。謝るも何も忘れてしまったことだよ」

 そう言う龍星を母は力強く抱きしめ、そして号泣する。そんな母を龍星もまた優しく抱きしめるのだった。

 過去を反省するのは大切だが、いつまでも過去に執着するのは愚の骨頂だ。龍星は許すことの出来たゼーモンの一件で、そう感じたのだった。


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