第48回 父への引導
「皆の者、メルフィに続け!」
自部隊のマグロ軍に続き、ブラストがアナゴ軍を率いて後に続いてきた。さらに、その後ろにはウナギ軍を率いるガンファの姿が見える。殿は歩兵の足軽部隊だった。
軍は一気に城に詰め寄せる。行く手に街の門以上に巨大な城門がそびえ立っていた。
「そんな門、こうですわ!」
涼夏は剣を猛回転させ、門に突き立てる。回転を緩めず、拳が通るほどの穴を開けた。そして、いったん、後退するもすぐさま猛スピードで門に向かい、騎馬軍団がそのままぶつかったように、その穴に尾の一撃をぶち込む。その衝撃で閂が折れたのだろう。鈍い音が響く。涼夏は気合いと共に、尾のなぎ払いを門に叩き込んだ。わずか三回の攻撃で門は蝶つがいから砕かれ、轟音と共に内側へ倒れた。振り向くとあまりの豪胆さに、龍星はもとい、軍全体がアングリと口を開けて立ち尽くしていた。あの豪快なガンファでさえ、言葉を失っている。
「これがわたくしの底力ですわ。さあ、行きましょう!」
「さあ、あと一息ですわ!」
もう少しで戦に終止符を打てる……。涼夏は再びマグロ兵に乗り、龍星と眼で微笑み合った。
それにしてもシースターニ城の広さには舌を巻くほどだった。廊下には様々な仕掛けが施され、負傷して動けなくなる者も増えてきた。士気も下がって来ているだろう。
「皆の者、頑張れ! 後少しだぞ!」
涼夏の代わりにブラストが掛け声を上げた。やはり、この伯父は国を君主の器である。
「あそこですわ!」
以前、通った廊下を全速力で駆け、評定の間に続くドアを涼夏は蹴破った。鼻を覆いたくなるようなアンモニア臭が漂っている。ほんのついさっきまで酒に浸っていた感じだ。
「メルフィ……」
おもむろに父……、いや諸悪の根源と眼が合った。
「ゼーモン・インフェリス。引導を私に来ましたわ!」
涼夏はゆっくりとゼーモンに歩み寄り――、
「切腹申し付けます」
後ろで息を飲む音がした。実の父親に死ねと言っているのだ。驚くのも無理はない。だが、涼夏はどうしてもこの男が許せなかった。最期くらいは武士らしく、潔くして欲しいものだ。
「ゼーモン……」
「兄上……」
ブラストが一歩前に歩み出て弟を見やった。何故、こんなバカなことをしたのだという思いを込めた眼差しで―。
「俺はいつも兄貴に比べられていた。そう小さい頃から――、




