終わりの前に
そのセカイは終わりを迎えようとしていた。
幾度も幾度も、そのセカイは終焉を前にし、その度に現れた異能を持つ者──ダートと呼ばれる魔法とは違う、神よりの叡知の力を授かった者たちがセカイを救ってきた。
セフィロートというセカイに生まれた勇者たちの異能は"ダート"と呼ばれ、滅亡と絶望の淵に落とされた人々の希望とされてきた。
影年一九九五年、セフィロートは闇、そして破壊を司る女神ディーヴァを奉る魔王ノワールによって危機に晒されていた。
これまで人間と共存関係を築いてきた異形のものたちは魔王ノワールの眷属となり、魔物と称され、人々に仇なす存在となった。
魔王ノワールはセフィロートにある十の都市のうち、セフィロート中心といっても過言ではない大都市マルクトを始めとし、ティファレト、ネツァク、ホド、イェソド、更にはセフィロート最大の軍事都市ゲブラーまでをも支配下に置いた。
彼は最大都市マルクトを拠点に他四都市にも攻め入り、最大軍事都市、ゲブラーをも手中にした魔王ノワールは闇の女神ディーヴァを降臨させ、セフィロートというセカイそのものを破壊しようと目論んでいた。彼の魔王が何故破壊にのみ拘ったかの詳細は不明である。
魔物は身体能力や魔力において、人間より遥かに勝っている。そんな魔物たちに人々は勝つ術を見出だせずにいた。
そんな折、ダートを持つ子供が二人生まれた。
一人は炎を操るダートの使い手。名をリヴァル。
そしてもう一人の名はリアン。
冷気を操り、氷を生み出すダートの持ち主。
二人の勇者となりうる子供に人々は希望を見出だした。
しかし──