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貴方を抱きしめて。  作者: 丹
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私を…抱きしめてよ。

迷い込んだネバーランドで、魔法の使い方を聞いたらキスされた!長いですってば。ドキドキついでに、乱入してきた貴方は誰…??

ドキドキドキ。


あ~、心臓の音がうるさい!


これというのも苦人君から離れようとすると、腕を捕まえ、長く口づけしてるせいだ!


バカバカ、そんな魔法の使い方って何よー!!!


と思ってたら、苦人君がようやく離れてにこっと笑った。


魔法が使えるようになったとか、魔力がこぼれ出そうとか本当にそんな感じることはなくて、


「魔法を使う際は…」


と冷静な苦人君を見ているとこっちが恥ずかしくて目を合わせられない。唇のほうばかりに目が行ってしまう。


「心さん?」

「あ、いえそのあのその…」

はっと気が付いた苦人君。恥ずかしく、カーッと顔中が熱い。

こちらの様子に気が付くと、私はまた顔が赤くなってないだろうか。私は男性に意外と免疫がないもので、夢でもちゅーされると思ってなかったのよ!!今まで彼氏は居たことはあるけど、純情でごめんね!!と心の中で叫ぶ。そんなに欲求不満なのかしら!?


申し訳なさそうに寂しそうな苦人君が困ったようにほほ笑むと、


「ごめんなさい、心さん。僕は―」


さえぎるようにして、王室の入り口から厳重なドアがばぁんと叩き落された。なに!?と言う暇もなく、白い甲冑を全身に包んだ黒い大きな暴れ馬にまたがった男がこちらに走ってくる。


一瞬一瞬が何が起こってるのか分からないぐらい、1秒を数えようもないうちに顔がおおわれた状態の男?は、私をひょいっと抱えて後ろから抱きかかえるように乗せてしまう。これが魔法!?早い!!


「!?誰?貴方?なに??」

「…」

「出たな、聖なる騎士ナイト !」


騎士ホーリーナイト ?って??と思うよりも早く、


苦人君の手に白い炎のような力が糸が絡まるように集まり、騎士ホーリーナイトを襲う。しかし、白いレイピアを腰から抜くと、その炎を拡散するように、一振りで蹴散らす。


「ちっ」


黒い馬は、手綱がないまま、騎士ホーリーナイトと呼ばれた男は、乗ったまま+私を前に乗せながら、器用に苦人君と戦う。不思議と私が落ちることもなく、あっという間に苦人君の攻撃をよけながら、すいすい王室を飛び出し、他の女王の従者をなぎ倒しながら、大きなお城から私を浚うことに成功してしまう。


「ホーリーナイトさん…あの、私を離して貰えませんか…??」

「すまない」

「じゃあ…」


景色が流れるように綺麗だ。あの深い森を抜けた。


申し訳ない、苦人君が折角あそこまでしてくれたのに、私は顔も知らない人にあっという間に浚われてしまった。これでは面目が立たないわ。


「お前は、苦人が本当にいいやつに見えるのか?」

ようやく抱きしめるのを辞めたら、今度は私を黒い馬に乗せたまま、騎士は降りて、説明し始める。


「俺の名はクラウン。」

「貴方は誰なの??」

「覚えてないのか?」

「覚えてないわ」


心で警告音がまたチリンと響いた。


「…私、前に…ここに来たことがあるの…?貴方と会ったことが…??苦人君にも感じた…」

「そりゃそうだよ」


どういうこと??


「お前は早く現実に帰れ。巧実も心配してる」

「何で巧実の事まで…」


ぶるぶる、携帯が揺れる。そういえばポケットにスマートフォンを入れてることを忘れていた。スマートフォンに映る私は、魔法なんか掛かってない髪ぼさぼさの29歳の私だった。恰好もINGNIのボーダーのワンピに戻ってる。


ほっとしたような残念な気持ちになった。


「ちょっと借りる。」

ひょいっとスマホをいじると、何やら呪文を唱え始めた。

じゃきんっと言う不気味な音が響いて、浮かんだ魔方陣が掻き消える。


「メールや通話は使えないみたいだな」

ホーリーナイト《クラウン》は、残念そうにスマホを返してくれた。


「今の、何…??」

「今のが魔法だ。苦人の魔法の力は強い。現実に媒体としてスマホで帰らせようとしたが、完全に元の世界に帰れない結界を張られた。」


スマホに巧実の顔が映る。


「巧実!!」


聞こえないとわかりつつも、懐かしい顔にじーんと涙が出てきた。同じ職場の女性社員と話してるのをじいっと見るしかなかった。


「…金井、どこ行ったんだ、あのバカ…」

「それが、仕事先にも連絡が取れなくて…」

「誤解したままかよ…」

「巧実、心に美味しい料理食べさせたいって、いとこの料理の上手い女の子に弟子入りして、バイト先まで変えたのにね」

「うるさい」

「心、全く鈍感で気が付かないんだから」

「うるせーよ!!」


どういうこと…??


黒髪ストレートの女子高出の美人の彼女さんは…


彼女じゃなくて、料理習ってただけ??いとこ??


と言うことは…



「巧実が…私のことが…好き…??」


嘘でしょ?


「だって、一切…」


そんな話はしなかったし、好きだと言われたこともない。

ただ、作ってくれる美味しくなってく料理を巧実と一緒に食べるのが


好きだった。


巧実に彼女が出来て寂しかった。一緒に住むのが嬉しかった。


私は、何をやってるんだろう。


あんなに大事にしてくれた巧実すきなひとを置いて、苦人君ほかのひととキスなんかしたりして。


ぽちゃん。目から流した水音がスマホに落ちて、映像が途切れる。気持ちを自覚したとき、クラウンは私を抱き寄せて、私は何も言わずに泣いたの。


バカ。


―「金井、女があんなうっせー声出すなよな、朝から」

―「あんたじゃなくて、巧実っていい加減覚えろよな」

―「ばっ、お前、知ってたの??」


嘘つき。


帰りたいよ。今すぐに貴方に会いたい。


私を…抱きしめてよ。

心ちゃん、揺れてましたが、やっぱり巧実のことが好きみたいですよね。巧実は女心分かってませんね。元の世界へは帰れるのか??

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