暖かな魔法の使い方
とうとうネバーランドの主と会うことになった私。救世主って何?魔法の使い方って何?純な日本人の私には夢の中とは言え…
「苦人君、主って?」
ごくごく自然な疑問をぶつけてしまう。
久々に高揚する私の心。この魔法使いさんは、私に魔法を掛けてくれるばかりか、ひょっとしたら、ここに住めるようお願いでもするんだろうか?お姫様抱っこにも何とか慣れたし(柔軟性のある私の脳みそよ、感謝!!)私はふとここで久しぶりに巧実の事を思い出した。
でも、いいじゃない、あんな彼女一筋の友達甲斐ないやつ。
「主は、それは厳しい方で、ここの一番偉い人です」
「そうなんだ…?」
風の匂いがチョコレートの匂いに変わり、ふわり何だかいい気分。
「…もうここに永住しちゃいたいな~」
それを苦人君は聞き逃さなかった。
「心さん、それは本当ですか?」
「え?そんなに嬉しいの?」
子供がおもちゃを与えられたみたいに無邪気に笑うものだから、私はドキッとときめく心臓をぎゅっと締め付けられたみたいだった。蛙ほどの気の小さな私はイケメンに大変弱い。
「ふふっ、嬉しいことをお聞きしました。主に頼めば、貴女もきっと住めます」
「そんな単純に住民登録出来るの?」
「ええ、ここは、ネバーランドですからそんなものはございません」
本当に嬉しそうに笑うものだから、巧実を思い出したことへの罪悪感を見透かされているのかと思った。水を得た蛙のような私は、水槽の外にいる巧実を少し疎ましく思ったのだった。
「いらっしゃいませ、苦人様」
「ああ、主に謁見したいのだけど」
「主様は、王室にいらっしゃいます」
わぁ、こんなところにいるメイドさんさえ、小さな子供だ。
メイド服に着せられてる感が可愛いのに、精神年齢は上に見えた。
メイドさんが会釈して、宝石のついた豪華な王室のドアをキィと開いた。
「汝が、噂の救世主か」
白いバラの咲いたような滑らかな美肌(私にはそんなものはないので羨ましいと妬んでしまう)青空のような澄んだ目。綺麗な赤い口紅を塗ったかのような赤い唇。でも、顔だちは大人なのに体は小さくようやく王座の椅子に無理やり乗った感じだった。
救世主?なにそれ?新しい洗剤の名前?変わってるわねぇと思ったり、そういう設定の夢なのね~と感心する。
ふわりと床に私を丁寧に降ろすと、苦人君が初対面の時みたいなきつい顔に戻り、王座に近づいて、何かこそこそ話し合ってる。
「心さん、この国は住民登録はないんです。ただ、本当に愛する者とのキスで、この世界は貴方の思うままになる。この世界ではキスが重要なんです。キスが魔力を吸い取り、能力をも吸い込む。力も思いも。心もね。」
どういうこったいと聞き返すと、『思うままになる』以外は、教えてくれた。唇のキスでなく、この世界では魔力のある人物の頬にキスすることで魔法を使えるようになるらしい。されるのも同様。その人の能力を分け合うことが出来るそうだ。唇にすると、より強力で、それは高い能力を得ることができる。
「実際に…してみましょうか?」
苦人君は、途端に近づき…
「失礼します」
髪をかきあげ、耳の裏に手を添えて…
私の唇にその瞬間、本当に苦人君の艶やかな唇が当たった。
つまり、そのつまり、でつまり…
久々の暖かな感覚にパニックになる。
―苦人君、しかも長いです!!!
と言う変なツッコミを入れてしまう。乙女な反応ができない私が嫌(切実)
苦人君、暴走???心の反応が乙女じゃないですね(笑)楽しみにしてます(^^)の有谷さんのコメントが嬉しくて書いてしまいました♪