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貴方を抱きしめて。  作者: 丹
12/22

運命。

まだまだ続きます!心目線です!!

「心さん」そう呼ぶ声はもう聞こえない。

愛おしいように恥ずかしいように、そんなのを卓越した呼び方だった。

可愛い妹を愛でるわけでもなく、恋人みたいに優しく呼ぶのではなく、


くひとくんは、この恋を諦めて居たような声で最初に呼んだ。


段々、その声が甘くなり、ときめきを感じるようになった。


そのかき氷に蜂蜜を掛けたみたいな、ネットリトシタ重い愛が、返って私には御馳走だった。


その御馳走を、巧実ほかのいとしいひとへ蟻のように持って帰ろうとしたから、

苦人君はさよならを告げたのかもしれない。


それは、幼いころのように残酷に—…。



「苦人君が言う成長する木の実は、どこにあるの??」

「こっちだよ」


くんと、どこからか強い力で手を握られて、私はドキドキした。

心が躍るような、そんな悪戯を思いついた子供みたいに、何かいけないことをしてるみたいで、嬉しかった。それと同時に、彼からは何だか…あまりにも思い詰めているようにも見えて。


それが幼心に、女の私は、他に仲良しのお友達でも出来たのかなぁとか、

苦人君、何か悩んでるのかなぁと、当時5歳の私にはわかる余地もなく。


今思えば、苦人君も…私の事がとても大好きだったに違いないのに。


「苦人君、この崖を登るの?」

「ごめんね、心。楽しい絨毯に乗って行こうよ」


苦人君は何もない空間から絨毯を取り出すと、「その上に乗って」とふわふわ浮かぶ絨毯に飛び乗った。

ちょっとふわふわして怖かったので、私は苦人君の腕を自然につかむと、苦人君は見たこともないような優しい顔で微笑んだ。


ドキン。


ドキンドキン。


このときめきは何だろう—…。


苦人君は、大事な私のお友達なのに。


他の友人にはときめかないのに…


私は、何故この暖かな腕をずっと抱きしめたいと思うのだろう。


分からない。


「心。着いたよ」


はっと我に返り、絨毯から降りると、目の前にそびえる氷の宮殿を上から下まで見た。

寒そうに見えても、冷気は全く感じず、空は暖かな陽気で晴れていて、これが魔法の宮殿なんだと分かる。


「この宮殿には魔女が住んでてね、お願いするんだよ。

僕のこの世界はね、子供のままで居たいと言う心のお父さんが作ったんだ。

心のお母さんの為にね」


「?心にお母さんは居ないよ…??」


「思い出の中に弱さを閉じ込めたんだよ」


「??」


当時5歳の私には、急に大人びた顔をした彼が、本当に私と同い年なのか徐々に疑い始めた。


「滑るから…手を繋ごうね」

「う、うん」


まただ。彼の指に手を絡め、ぎゅっと握れば手の先が熱くなり、ときめきが止まらない。

顔がカーッと赤くなり、生まれて初めてパパ以外の手を愛おしく思う。

そんな感覚に戸惑えば、私はあっという間に宮殿の奥のガラスで出来た透明な王座を見つける。


「だぁれ?」


黒髪のストレートロングの美しい女性が、その王座に座って意気のない目で見つめた。

とても綺麗で、見惚れてしまう。背もすらりと伸びて「大人の女性」と思わせるスタイル。

その端麗な雰囲気が、厳かでピシャリと叱るパパの顔そっくりだった。


苦人ブラック・シャインでございます。

この度は時間をとって頂き、とても光栄に思います。」

「こ、光栄に思いま…」


あまりに凛とした大人の対応が、私にはまだ分からなくて。

嚙んだのが悔しくて涙が出てきそうだった。


「以前お話した、『成長の木の実』頂戴しに参りました…。

用意はしてありますか?」

「ふふ、貴方が禁忌を犯すに近いことをするなんて、とても見てて嬉しく思います。

貴方と添い遂げたい乙女は、この少女ですか?」

「そうです…この木の実の呪縛、最初に私が試させて頂きます。」


苦人君は、慣れた手つきで、一見柿のような形をした紅い木の実をかじる。


「うっ…」


苦しそうに耐えて、その木の実から青色の虹が光る。

その温かいようで残酷な光は、私から見て不思議の世界に迷い込んだアリスの絵本のきのこ。

早く大人になりたい。そんな気持ちが、私を木の実に駆り立てた。


食べようと手を伸ばすと…


「心、辞めなさい」


声が聞こえてくる。

それは紛れもなく―…彼の声。


あの時、彼の声を聴かなければ、私は180度別の人生を送っただろう—。


それでも、聞いてしまえば戻れない。



それが、運命さだめ

約一か月ぶりの更新になりました!心と苦人君、不憫な子(^^;)

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