第三話『ミラクルガールズ』――アバン『鏡写しな二人』
●平成二十三年七月七日(木曜)午後一時十分――暁学園、裏庭。
『私は、男なんて……大ッキライなのよ』
そう、彼女は言った。
イクサの理想そのままの姿をした少女は、そう言ってイクサを拒絶した。
罪悪感のひとカケラもこもっていない鈴を転がすような声で、彼を斬り捨てた。
限りのない悪意を込めた眼差しで、イクサの純情を貫いて粉々にした。
「……あ、あああぁぁぁ――――――――――――――――――――――――――――ッ!!」
だからイクサは泣いた。
心の支柱をおられ、体重を支える事すらできず、膝をつき、頭を垂れて泣き叫んだ。
『……って言うか、なんで泣いてるんですか、お義兄ちゃん?』
そんなイクサの頭を踏みつけた姿勢で少女は尋ねる。
その顔に浮かんでいるのは呆れと怒り――そして、溢れんばかりの情けなさ。
「だ、だって……神音ちゃんが、俺のこと……だ、大ッキライって……」
『あれは私じゃないのですよ』
そう言って少女――神音は問題の発言をした、もう一人の少女を指さす。
『一応、私達の敵? ……なのですよ』
神音と瓜二つの顔をした――それでいて髪や瞳の色、身に纏う雰囲気はまるで別物という、双子というよりゲームの2Pキャラのような少女。
彼女は大人びた微笑みを浮かべ、神音の反応を面白そうに眺めている。
そして、不満を隠し切れない子供のような表情で、イクサを忌々しそうに睨んでいた。
『お姉ちゃんを敵呼ばわりするなんて、イケナイ「妹」ね――解ってるわ。言わされてるのよね。まあ、少し待っていなさい。私がそこのゲスを排除して、アナタを開放してあげるから』
「クッ……神音ちゃんと同じ顔で俺をゲス呼ばわりするなんて……イケナイ扉が開きそうだ」
『『死ねばいいのに』』
……この混沌とした状況は一通の手紙から始まった。