第一話『初めての○○』――アバン『初めての創作』
「…………………………………………でき、た?」
その瞬間、少年は――神山戦は自らの時間を止めた。
「あれ……なんでだろう? 嬉しいはずなのに涙が……おかしいなぁ……」
そのまま――何故か溢れてくる涙を拭いもせず――遠い過去の記憶に思いを馳せる。
金曜の夜、「そうだ、ラノベを書こう!」と決意して、自室に引き篭もったことを。
百二十ページで収めようとしたら百五十ページ越えてしまって、削りまくったことを。
溢れる想いのまま文章を書いてたせいで、読み返したら地面を転がりたくなったことを。
初稿は八時間で書いたけれど、修正に――文字通り寝食を忘れ――四十時間かけたことを。
そんな修羅場(初体験)の果てに生み出したモノだから……メチャクチャ眠くて、これが現実だという実感が薄い。『触れたら消えてしまうんじゃないか?』って怖くなるぐらいに。
だから彼は、ゆっくり、ゆっくりと深呼吸しつつ――
「……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
必要以上に気合を入れてソレを――プリントアウトされた『原稿用紙』を手に取った。
勢いで零れ落ちる涙一粒――原稿用紙に落下/接触――瞬間、眩い光に照らされる室内。
「な、なんだぁぁ――――――――――――――――――――――――――――――ッ!?」
驚き叫び、無様に尻餅をつくイクサの前で、光は段々収束し『人の姿』を形作っていく。
そして、光がおさまった後――
机の上にゼンラーな女の子がいた。
まるでイクサの理想そのまま――長い銀髪/黒い瞳/幼さの残る整った顔立ち/中学生ぐらいの背丈/綺麗な肌/ささやかな胸/美脚――そんな美少女が座っていて……丸見えだった。
「…………神音ちゃん?」
あまりの展開に呆然としながら、震える声で『その名前』を口にするイクサ。
その声に、少女はゆっくりと――周囲を確認/イクサの姿を確認/自分の姿を確認し――イクサと目を合わせる。ニッコリ笑う少女とニッコリ引きつった笑みを返す少年。直後――
『キャァァ――ッ! 犯・か・さ・れ・るのですぅぅぅぅ―――――――――――――ッ!!』
イクサの社会的生命を刈りとるだろう絶叫が響き渡りました――DEAD END☆