《渋谷区第二人類防衛軍学舎》
《渋谷区第二人類防衛軍学舎》。
学舎の正式名称があまりに長いので、生徒達の間では《第二学舎》と呼ばれているそこは、渋谷駅から徒歩で十五分程度の場所にある。
その第二学舎は、四年前に起きた《第一次病魔襲来》の際に、《病魔》によって完膚無きまでに破壊されてしまった。
今ある校舎は、新しく建てたもの。だから、名称に『第二』という文字が付いている。
第二学舎は東京ドームのおよそ四倍の敷地面積を有しており、中学校、高校、大学の校舎が同じ敷地内にある。しかも、在学生は二万人以上という学校の中では屈指の生徒数を誇る。中学校から大学までエスカレーター式で、在学生は《人類防衛軍》へ将来所属するために入学している、未来の有望な防衛軍達である。
これだけで一般的な学校とは到底呼べないが、それ以外の理由で、第二学舎が特別な学校だという所以がある。
それは第二学舎に在校している生徒らは、特殊な能力を秘めた者ばかりだという事だ。
その特殊な力を使って病魔と戦い、人々や都市を守る。そういうように彼らは教育され、訓練され、意識から変えさせられていくのだ。
勿論、生徒の中には防衛軍を最終目標としていない者も少なからずいる。
たとえば、治癒系統の能力を開花した能力者なら、医療チームへと志望するだろう。たとえば精神系統の能力を開花した能力者なら、対病魔ではなく対人間として、外交の交渉に必要とされるだろう。
そういう人のために第二学舎は、伝手がネットワークのように世界中に張り巡らされており、大学を卒業すればその伝手を借りる事が容易に出来るのだ。
就職率が多い事でも有名なのも、そこから来ている。だから、第二学舎へ通おうとする打算的な生徒――というよりは両親の要望が強いのだろう――もいるぐらいだ。
単に能力を持っているからという理由で親に無理矢理入学させられた者もいる。
しかし、第二学舎は能力者ならば誰でも入れる学校ではあるものの、無能力者は入れない。いくら能力以外が優れているからといえ、能力を持たぬ者は敷地に入る許可すら下りない。
それがこの学校の絶対的なルールだった。