第四話「訪問」
最悪な目覚めの朝。
窓の外は久々に覗く太陽の日差しと、さわやかな風でつつまれているというのに、
私の目覚めは最悪だった。
いきなりの訪問。
時計は夜中2時をまわっていた。
冷蔵庫にストックしてあったジュンの為のビールを2本あけたところで、
突然鳴り出すチャイム。
2度3度としつこく鳴るドアチャイムに観念して出ると、
ドアの前には見慣れた顔があった。
「…どしたの?」
半ばあきれながら声をかける。
「何してたの?」
疑問に疑問で答えるときは、だいたい言いにくい時のジュンの癖。
「今、何時だと思ってんの?」
「飲んでたの?」
「……帰って」
「一緒に飲もうよ」
会話が成り立ってないという事にジュンは気が付いているんだろうか。
このままじゃ話が進まない。そもそも今までそれを許してきた自分に問題があるのか、
それともジュン本人に学ぶ意志、考える気がないのか、そういう甘えがいつまでも通用すると確信している部分が奴にはある。
「コンビニ寄ってきたんだ。アキの好きなプリン買ってきたよ」
「今日さ、先輩と現場入ったんだけど…」
(駄目だ。負けそうだ…)
こういった場合、自分の意見を押し通せるほど、私は強い意志を持ちあわせていなかった。
玄関先でぐだぐだと話をするには、時間がまずかった。
なにせ夜中2時を回っている。右隣は同棲カップルだから、まだいいとしても。左隣はえらく年上のおねえさま、だ。男の出入りを見たことはない。顔を合わせば、右隣の二人の愚痴を聞かされる。そういった都合も手伝って、情に流され、また奴を部屋に入れてしまった。
でも、どうして来たんだろう。
それなりに表面上の付き合いを気にするジュンは、左隣のおねえさまの事を気にして、家に来るときは連絡を入れ、いつも静かにやってきた。
たとえ顔を合わす事があっても、きちんと挨拶をして礼儀正しくしていたから、左隣のおねえさまの評価は良かった。
「…そんな話したいなら彼女にでもすればいいでしょ」
いらだちもピークに達してきた。本当に何しに来たんだろう。
欲しい時、あなたは一緒にいてくれないじゃない。
欲しい時、あなたは欲しい言葉を言ってくれないじゃない。
泣きそうになるのを懸命に堪えている。入れてあげようかという弱い心に必死で戦っている。
沈黙を破ったのはジュンだった。
「…別れるから」
下を向きながら、ぼそっとそう呟いた。




