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第三話「電話」

「今何してんのぉ?」

寝ぼけ眼で時計を見ると、1時15分。もちろん夜中。


「ジュン、また飲んでるの?」

「今から逢おうよー」


彼女がちゃんといるくせに、こういう事を平気でするあいつは、自分がもてる事をちゃんと知っている。

そして、私がジュンの事が好きだということも知っているんだ。

彼女と別れる気配もないし、割り切った付き合いをする程

落ちぶれたくはないといつも思っている。

だから、逢って話をして、キスするだけ。

一度…そうなってしまったことはあったけど。



「ごめん。無理」

「えーなんでぇ?」

「昨日寝てないんだ。ていうか、彼女どーしたのよ」

「あー?彼女?  なにそれ」

「昨日一緒にいたでしょ。見たよ」

「……ああ。うん」

「別れる気ないんでしょ?私そーゆうの嫌だから」

「……ねえ、逢おうよ」

「…なんで?」

「話したいよ。つかアキも話したいっしょ?」


どうしても彼に弱みを見せる事ができない。

弱みを見せてしまえば、泣いてしまえば、彼に溺れてしまいそうで、

それがすごく恐かった。

昨日あんなに落ち込んで、あんなに世界が色あせてしまったのに、

ジュンの【逢おうよ】の一言でなかったことになってしまいそうな自分をとどめるのに精一杯だった。




昨日の夜シンと話した事を思い出した。



『そのかわり、今の彼氏と別れてね』

『はあ?』

『だって、今そうやって泣きそうなのは、彼氏のせいだろ?ろくでもないよ。泣きたいのに泣かせない彼ってのはさ』

『…逢ったばっかのあんたに何がわかんのよ』

『わかるよ。瞳を見ればだいたいね。違った?』

『……違う、…くない、けど』

『泣きたくなったらここにおいで。寂しくなったら…』




「アキ?聞いてんの?」

いきなり耳元にひびく大きな声で現実に戻った。

「ああ、ごめん。やっぱ無理」

「昨日、なんで寝てないんだ?」

「……色々あってね」


きっとジュンは自分と彼女の姿を見たからだと思っただろう。

間違いではないけど、それだけでもない。

ただ…やっぱりこのまま続いたって私は幸せになれない。



だから、好きなのはお前だけって言って?

お願いだから、私をちゃんと見て?



「んー、わかった。んじゃね」


むなしく電話の切れる音がして、ジュンの声も消えた。

きっと、次の女にでも電話してるんだろう。


時計を見れば1時半。

携帯を時計の横に置こうとすると、かちゃりと何かに当たった。

昨日の鍵、だ。



「寂しくなったら電話してきていいよ」

そう言ったのは、あいつ。

【シン】だった。

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