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哀しい僕
当たり前のように
自分を正義だと思っていた頃がある
きっと この人生で
自分は主役に違いない
正義を貫き通す 勇敢な存在
まさに奇跡の救世主だ と
だんだんと
自分を正義と思いたくなくなった頃がある
少しずつ 物語の悪役に惹かれた
少しずつ 悪に憧れを抱いた
少しずつ 自分が変わるのを感じた
でも それでいいと思った
いつのまにか
自分を悪だと思い込んだ頃がある
自分は悪人なのだと確信し
それを何故か誇らしく思っていた
毎日 毎日
自分以外を心中で見下し 蔑んだ
そして 今 自分は
この道をただ行き交う何千何百と
全く変わらないんじゃないかと 考える
もしかすると
そこの誰かも同じ事を考えていて
自分以外を見下して 僕を見下して
生きているんじゃないのか と
そう思った途端
なんだか 虚しくなった
よくわからないけど
とても 虚しかった
やりきれない感情が溢れ出した
嗚呼 僕は
こいつらと同じなのが 耐えられない
この何千何百と 変わらないのが
すごく 許せなかった
哀しい生き物だね