音
おやすみなさい。
──午前4時頃
夜と朝の狭間、家賃の安いぼろアパートで、男が寝ていた。
台所の食べたまま放置されてある汚い食器に、水道の蛇口から部屋に響き渡るように水滴が、
ポチャ…ポチャ…
と、規則正しく落ちている。
天井からは、
ドタドタ、ドタドタ、
と、子供が走っているような音がする。
それらの音に重なるように冷蔵庫が、
ヴウウウウン、
と、唸りだし、
突然電源が入ったテレビからは、
ピィ─────、
という信号音が続く。
また、部屋のあちらこちらでラップ音が
パキッ、パキッ、
と、軽快なリズムを刻んだ。
更に、寝ていた男の豪快な、
ガアアア、ゴオオ、
という、いびきが始まった。
そして、携帯電話の無機質な着信音がそれらに重なったとき、奇跡が起きる。
まるで、アンサンブルのコンサートが行われているような、素晴らしい音の響きが部屋を包んだのだ。
男は熟睡していたが、体で感じていたその奇跡には、涙を止める事が出来なかった。
そして訪れた盛大なフィナーレの後、時間を合わせ間違えられた、キャラクターの目覚まし時計が喋った。
¨ブラボー!!¨
…あれ?なんで俺、泣いているんだろ。