表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/26

第九章:「川へ導いた翼」

操縦桿は重く、ほとんど応答しない。

右側の計器はすでに沈黙し、左主翼すら損傷している。

イヴァンは無言で川を見据える。

市街地はもう後方──爆炎から遠ざかりつつある。

その瞬間──

また警告音。

「……まさか……まだ撃ってくるか……!」

iPadの画面に赤い点。

レーダーシーカーではなく、IRホーミング(赤外線)。

エンジンの熱を追ってくる。

R-73──至近距離用の殺し屋。

逃げる術はない。

チャフも尽きている。

機体はすでに火を噴いている──これ以上、撃たれれば終わりだ。

イヴァンは、川の中央に機首を向け、

最後の無線ボタンを押す。

「こちらイヴァン。ミッション完了──市街地の被害はなし。……あとは、よろしく」

彼は、レバーを引いた。

バシュッ!!

キャノピーが吹き飛び、座席ごと射出される。

重力が一瞬消えたかと思うと、頭上に傘が開き、彼の体を川の風がなぶる。

直後──

MiG-21の残骸が、ドニプロ川の中央に突っ込む。

ドゴォォォン!!

炎と水柱が空高く吹き上がる。

燃料が川面に広がり、黒煙を立てながら**(爆散)**した。

二度と誰も乗れない、使命を果たした鉄の鳥。

パラシュートに揺られながら、イヴァンはゆっくりと降下していく。

後ろには、彼が守った都市の輪郭──

そして、空にはもう敵影はなかった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ