表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キーウ上空ウクライナの翼  作者: バッシー0822
西岸の死闘編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/35

第二十八章:ヒットエンドラン

イヴァンは深く息を吸い、引き金を絞った。

轟音とともにRPGの弾頭が炎を引き、一直線にBMPへと突き進む。

次の瞬間、鋼鉄の車体が火を吹き、黒煙が噴き上がった。


「やった!」ミコラが歓声をあげた。

だがその声をかき消すように、T-72の砲塔がゆっくりと回転し、二人の方角に銃口が向けられる。


「走れ! 走れッ!」イヴァンが怒鳴る。

二人は塹壕へと飛び込んだ。直後、轟きが大地を震わせ、衝撃で耳がきしむ。土砂が雨のように降り注ぎ、顔に当たる。


「……ここも長くは持たん」

イヴァンは泥まみれの顔を上げ、決然と呟いた。

「脱出するぞ」


「でも、まだ弾はあります!」ミコラは声を震わせた。

だがその唇は青白く、初めての実戦の恐怖を隠しきれなかった。


イヴァンはその様子を見て、静かに首を振る。

「やるだけのことはやった。あとは、生き延びるだけだ」


その言葉に、ミコラはほんの少し肩の力を抜いた。戦果の誇らしさよりも、生きて帰れるかもしれない安堵が胸を満たしたのだった。



二人はイルピンに向けて歩き出した。舗道は砲撃で抉られ、家々は黒い煤に包まれていた。

同じように後退する仲間の列が続く。誰もがすすで顔を汚し、肩を貸し合いながら歩いている。中には、包帯から血をにじませ、声もなくよろめく兵もいた。


「……奴ら、相当強いな」イヴァンが低くつぶやく。

この戦いが始まって以来、彼は前進ではなく、ただ後退しながら戦い続けていた。

それでも心のどこかで「まだ望みはある」と自分に言い聞かせていた。


さっきまで元気に「弾はあるぞ」と笑っていたミコラも、次第に口数を失っていた。

背負った弾頭の重みよりも、目の前に積み重なる現実の方が、若い肩を沈ませていく。


周囲の兵士たちの顔にも、疲労が濃く滲んでいた。

それでも誰も立ち止まらない。立ち止まれば、追いついた敵に背中を撃たれるだけだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ