第二十二章:爆炎の街角
BMPが、通りの真ん中で火柱を上げていた。
炎は装甲を舐め、弾薬が内部で爆ぜるたび、まるで巨大な獣の咆哮のような音が響く。
「メーデー、メーデー!こちら10号車!」
無線の向こうから、叫び声と金属が歪む音が混じる。
「動けない…援護をくれ…」
返答はない。
代わりに、別の周波数から短い悲鳴と爆発音が割り込んできた。
次の瞬間、誰かが怒鳴った。
「退け!退けぇっ!」
隊列は完全に崩れた。
後退命令も、統制もない。
誰もが煙と炎を避けるように、ちりぢりに退却を始めた。
瓦礫の影からは、まだ新たな発射音が響く。
その音は、敗走する兵士たちの背を、氷の手で掴むように追いかけてきた。
瓦礫と煙の向こう、退却していくロシア装甲車列。
その背に、火の矢のような尾を引きながらジャベリンが突き刺さる。
爆発。
黒煙が天へ昇り、鋼鉄の巨体が動きを止めた。
丘の上で発射筒を抱えたウクライナ兵が、固く握った拳を空へ突き上げる。
「やったぞ!」
その叫びは、近くにいた仲間たちにも、無線の向こうの部隊にも届いた。
今まで、一方的に押し潰されてきた日々。
逃げるしかなかった村。
燃える家々。
だが今、状況は変わった。
聖ジャベリンは降臨し、ウクライナ兵を導いたのだ。
その光は、戦場の絶望に小さな穴を開け、そこから確かな希望が差し込んでいた。




