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第二十一章:混乱
炎と黒煙の中、二号車が行き場を失って立ち止まった。
「二時の方向だ!」車長の怒鳴り声がヘッドセットを震わせる。
車外カメラに、瓦礫の間を駆け抜ける影が映る。
ジャベリンを撃ったウクライナ兵――
迷いも恐れもなく、細い路地へ消えていく背中だった。
「ええい、踏み潰せ!」
車体がギシギシと鳴り、履帯がまだ炎を上げる先頭車両を押しのける。
鈍い金属音と共に、黒焦げの装甲が軋み、視界が一瞬、炎で赤く染まった。
その時だった。
――ドォンッ!
車列の後方から、空気を裂く衝撃と爆音が響く。
一拍遅れて、破片と土煙が宙を舞う。
「囲まれている!」誰かが叫ぶ。
前も後ろも、もう安全ではない。
指揮系統は一瞬で混乱に陥り、無線は怒号と悲鳴で埋まる。
二号車の砲手は迷った。前進か、後退か。
だが炎と煙の壁の向こう、別の発射音が再び響いた――
それは、この街全体が牙を剥いた合図のようだった。




