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第二十章:装甲車列の波
戦車の履帯が舗道を砕き、BMPの群れが民家の前を無言で通り過ぎる。
砲塔はゆっくりと左右を舐めるように動き、その影は長く町を覆っていく。
まるで軍事パレードだった。
装甲の列は整然と、まっすぐに。
エンジンの重低音が、地面から腹にまで響く。
先頭のT-90の砲塔上で、司令官は片肘をつき、退屈そうに前方を眺めていた。
「演習みたいですな、司令。」通信手が笑いを含んだ声で言う。
司令官も口の端を上げた。
「ああ、いい天気だ。明日にはキーウで、いい酒が飲めそうだ。」
その瞬間だった。
丘の向こうから、鋭い閃光が走る。
空気が震え、時間が一拍遅れて音が襲う――
先頭車両の砲塔が、まるで紙細工のように宙へ舞った。
炎が天を突き、爆風が並んだ車列を乱す。
煙の向こう、廃屋の影から一人の兵士が立っていた。
肩に担いだ筒の上には、聖母のような女神が描かれている――
ウクライナの兵たちが「聖ジャベリン」と呼ぶ、現代の守護天使だった。




