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キーウ上空ウクライナの翼  作者: バッシー0822
Migの翼

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第十二章:「ムーリヤの灰、夜明けの風」

味方の増援が、滑走路を制圧してゆく。

敵兵は散り散りに逃げ出し、一部は白旗を掲げて膝をついた。

「もう大丈夫だ……イヴァン、終わったぞ」

仲間の肩に寄りかかりながら、イヴァンはよろめく足取りで立ち上がった。

空港の構内に戻っていく彼の視線の先、

黒煙があがる格納庫の瓦礫の中に――

あの巨鳥が横たわっていた。


世界最大の航空機──An-225 ムーリヤ

かつて宇宙船ブランを背負った夢の象徴、

巨大な翼を広げていたはずのその機体は、

もはや骨組みだけを残して焼け焦げていた。

イヴァンは、ヘルメットを外し、

無言のまま、数歩だけ近づく。

「……お前まで、燃えることはなかったんだ」

風が吹く。

機体の破片が、カラリと乾いた音を立てて落ちた。


それでも

その日の午後、敵の増援部隊は完全に撤退を始めた。

滑走路を奪われ、補給線を失い、占領計画は破綻した。

「防衛成功――キーウ奪還、現実的な情勢に」

軍無線から聞こえる朗報に、周囲の兵士たちは歓喜の声を上げる。

だが、イヴァンは微笑むことなく、

ただ遠くを見ていた。


終章

「夢は、灰になっても、次の空へ」

ムーリヤの遺骸のそばで、

小さな子どもが手を合わせていた。

彼の母親はつぶやいた。

「あの飛行機は、もう飛ばないの?」

イヴァンは少し考え、こう答える。

「……飛ぶさ。どこかの空で、いつかまた」



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